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記憶  作者: 絲瀬


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7/9

七話

パートは工場で、一人作業が主だから、とても気が楽だ。


だが、更衣室での会話は別だ。


「おはようございます」

「おはよう不二さん」


更衣室に入ると、パートの中で一番顔が利くお局がいた。

私はこの人が苦手だ。

歯に衣着せぬ物言いをする人で、入り込んでほしくないところまで入ってくる。


何も話題を振られませんように。

早く他の人が来て、お局の話し相手になってくれますように。



しかし、そんな願いも虚しく、お局とは二人きりのままだ。

さっさと着替えを済ませ、更衣室を出よう。

そう思っていたのに。



「不二さん、あなたもう一日くらい出勤増やせない?」


お局の問いかけに固まる私。



「あ……。その、すみません。家庭の事情で厳しくて……」


「え〜そうなの? でも旦那さんの扶養からは外れないでしょう?」


「それはそうなんですけど……予定とかもありまして……」


「予定? 何の? 皆、子供がいる人だって協力的よ」



この圧に負けてしまえば、私はパートの出勤を増やすことになってしまう。


何を言われても、『無理』を貫き通すしかない。



「すみません……でも本当に……」


「何がそんなに忙しいのかしら。ねぇ?」


「……すみません……」



私が、『すみません』で乗り切ろうとしているのが伝わったのか、お局は苛立ちをしっかりと表に出しながら、更衣室から出て行った。




何と言われても、私は出勤を増やす気はない。

だけど、あの物言いは本当に嫌だ。



憂鬱な気分のまま、私はパートの時間をやり過ごした。

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