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記憶  作者: 絲瀬


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五話

夜、虹太が寝た後に顕は帰宅した。


「今日も遅かったんだね」

「あぁ」


顕の夕食を準備しながら、私は切り出した。


「あのね、顕」


顕は黙ってこちらを見た。


「あの……顕は第二子とか……考えてたりする?」


勇気を出して尋ねてみるが、顕は黙っている。

食器の音だけが虚しく鳴り響いていた。



「ねぇ、顕? 聞こえてる?」


再度尋ねると、顕はさっさと食事を済ませ立ち上がった。

そして、こちらをチラリと見て一言だけ放った。


「無理だろ」


顕は私から逃げるように、風呂場に行ってしまった。


やっぱり、家には無理なのかもしれない。


いつから顕とすれ違うようになってしまったのだろう。

気が付くと、関係性が壊れてしまっていた。


私の心の拠り所は、虹太だけになっていた。


二人目がいれば、変わるかもしれない。


少しだけ、期待していた。

だがその期待も、大きく崩れてしまったのだった。


虹太が眠る子供部屋に入り、泣いた。


寂しさと虚しさを、どう処理したらいいのかわからなくなっていた――

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