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第8話 画面越しのたしかな愛

みなさんは知り合いとのLINEをする時、いつ返しますか?


通知が来た時?


自分発信?


僕は未読機能のせいで、気が向いたら返そう、あーっとで!


と1週間後に返すキンタマ野郎です。


飛行機に鳴り響く、僕の子供たちが奏でるコーラス。


長女は耳抜きができず泣き喚き


次女はつられ泣き


キャビンアテンダントさんが1人付きっきりで対応してくれたおかげで、なんとか、なんとか家まで帰ることができた。


あとキャビンアテンダントさんのお尻が、それはもう良かったから、なんとか精神を保つ事ができた。


「ただいまー」


おかえりのない寂しい家だ。


洗い物や洗濯物が溜まる我が家に帰ってきたのだ。


震えるスマホ


帰路の労いをしてくれたのは


画面の先の翠ちゃんだった。


何に怒っているのか、不機嫌な形相の妻と目が合う。


やっぱりだ


妻を見ても自責の念から溢れ出る後ろめたさも、後悔も何も感ない。


感じる事が出来ないのだ。


最初は3時間毎にスマホが震えた。


「納豆の唐揚げ美味しいんですよ!!!」


料理の写真が送られてきたり、他愛もない話。


気づけば1時間毎にスマホが震えた。


「ガチ太郎くんの写真も見たい!!!」


自撮りの写真を送ってきてくれた。


気づけば15分毎にスマホが震えた。


「一緒に指輪作りいきたいね」


僕のSNSの投稿を見て、指輪作り体験に行きたがった。


気づけば僕らは、寝る間も惜しみ、夜中に即レスしあった。


「好きだよ!!!」


SNSの投稿には全ていいね、その投稿て似た様な投稿をしてきたり


まるで


付き合いたてのカップルの様だった。


たくさん電話した。


コンビニに行くと嘘をつき。


会社の帰りのチャリンコの上。


飲み会の帰りに回り道をして。


妻が仕事の時。


お互いの時間が合う時は、声を聞くためだけに電話した。


「好きだよ」


ありがとう。


「かっこいいよ」


そんな事ないよ


「ずっと一緒だよ」


僕も一緒にいたい


こんなにも胸がときめいたのは、いつぶりだろうか。


ときめく心臓が限界を迎えたのか、僕の身体は発熱した。


うん


熱が出た


「熱が出た」


妻からの返事はない。


「ポカリとかゼリー買ってくる」


「ぱぱコンビ屋さんいくの? あたしもいく」


熱が出た身体に鞭を打ち、コンビニへ買い出しへ行く事を、独り言の様に妻へ伝えたところ、長女がお供についてきた。


「夜の探検楽しいね!」


お菓子を買ってもらう為に付いてきただろうが、その小さな手が僕に元気をくれた。


スマホが震える


「大丈夫!?」


うん大丈夫だよ


スマホがずっと震える


「看病してあげられなくてごめんね」


「手を握ってあげたい」


「手を握りたいのは翠の下心だけど!」


肉体的にも、精神的にも限界を迎えそうになる中


文章だけの優しさが


一番僕に元気をくれた


家族よりも、だ


こうして仮初の幸せが、僕を1ヶ月かけて、泥沼へと急速に沈めていった。


「今日も飲み会なんだけど、帰り道電話していい???」


「もちろん! 子供寝かして待ってる!!!」


これから始まるは


そう


自分を主人公だと思った哀れな男の独りよがり


日常に侵食してくる甘い毒に脳を溶かされ、世界の中心が自分だと思い込んだ勘違い男


僕が主演男優も恥ずかしくなる様なセリフを吐き出す


そんな涼しい夜話だ


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