第5話 0.01mmのいっちょうら
みなさんはベットの使い道、目的を知っていますか?
一日の疲れを癒し、眠る場所?
ちがう
暇な時間、スマホと添い寝をする場所?
ちがう
全くちがう
そう
男女の情熱がまぐわう時に発生する衝撃波を抑制する近代科学の象徴さ。
僕は妻に限界が来た日に言ったんだ。
「このままだと僕らの関係は半年持たないよ」
それからほんの少しだけ妻の口調が和らいだ様な気がした。
だから僕は、まだ戻れると思った。
そして2年ぶりの夜を迎える事になった。
キスをする時、苦虫を潰した様な表情の妻。
服を脱がす時、ため息をする妻。
上半身を攻める時、少しばかり反応する妻。
しかし
そんな負の感情を抱く妻の秘部は、砂漠だった。
どんなに尽くしても息子が入る余地すら与えぬ、堅牢な城塞。
妻はチンポゥをお口で奉仕すると少しばかりウェットになる習性がある。
だから聞いたんだ。
「あの、舐めてくれない?」
「は? なんで毎回しゃぶんなきゃいけないの?」
僕の男としての尊厳は破壊された。
えっちしよ
疲れてる
えっちしよ
今度
えっちしよ
無理
えっちしよ
生理
積み重なる否定の言葉の山
そんな言葉が聞きたかったんじゃないんだ
本当に僕が聞きたかったのは
否
欲しかったのは
「あっ、でも私……生理なんですけど大丈夫ですか?」
愛を否定され続け、砂漠の様に枯れ果てた心に水が降り注ぐ。
翠ちゃんは応えてくれたのだ。
「えっと3日目で多めなんですけど」
「全然大丈夫! 逆に大丈夫???」
してもいい、じゃなくて
したい、と言われた気がした。
「ふふっ」
そう微笑む翠ちゃんの隣で、息子と共にガチガチに緊張している僕は、溢れ出す性欲により、知能指数が猛スピードで下落し、ペンギンやナマコをはるかに下回るシコザルへと落ちぶれたのだ。
シャワーに入っている翠ちゃんの隙をみて、死ぬほど水をがぶ飲みする。
飲み過ぎと極度の緊張により、満たされた心とは違い、喉が以上な渇きを訴えていた。
「次いいですよ」
バスローブ姿
薄いそれの下は生まれたままの姿
今すぐ押し倒したくなる
知能が低下した脳みそは頼りにならない
理性を、心の底から理性を誘き出しシャワー室へと逃げ込む。
とりあえず首周り、脇、そして息子の周囲を、一番匂ってほしく無い場所を重点的に削ぎ落とす勢いで洗う。
「離婚してから初めてだから緊張します」
「僕もほぼ7年ぶりだよ」
さあ
本番はここから、言葉はいらない。
優しく抱きしめる。
抱き返してくれる。
唇を重ねる。
絡み合う湿った肉片
互いが互いの為にその湿った肉片を駆使する。
「おっきい」
リップサービスかもしれないその一言。
その小さな声が漏れ出た小さな口が僕の息子を抱きしめる。
尊厳を破壊された時に否定された事を、翠ちゃんは躊躇う事なく、当たり前の様に受け入れたのだ。
息子が、チンポゥが一張羅を纏う。
そうして翠ちゃんは0.01mmの理性を脱ぎ捨てた皮を隔て
僕の事を抱きしめてくれた。
抑制されていた性欲が解き放たれ、脳みそを異常な幸福感が襲う。
僕はその時、本当に幸せだった。
しかし
だがしかし
このままで終わらないのがガチ太郎である僕だ。
ちょっとばかり僕が遅漏なこと
ちょっとばかり彼女の締め付けが優しいこと
その2点の障害が運動不足の僕の体に鞭を打つ。
限界だった。
加速された血液が全力でアルコールをぶん回したのだろう。
「大丈夫? 私が上になるよ」
そんな慈悲が滲み溢れ出る言葉。
「……飲みすぎちゃったみたいですね」
そう
僕の息子は喜びの花火を打ち上げることなく、血だらけで力尽きてしまったのだった。
本来なら真っ白になるべきは風船の中身だけでよかったはずだったが
真っ白になったのは僕の空っぽな頭の中だった。




