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第4話 密会

LINE


あなたは知っていますか?


スマートフォン黎明期のLINEが出会い系だった事を


僕は当初、LINEで妹を作ったり、エッチな電話をしたりと、LINEの友達追加数限界まで、顔も見たことない同志たちと繋がっていました。


あなたは知っていますか?


今や生存確認から家族同士の連絡、仕事の業務報告、学生たちの愛の巣、様々な顔を持つLINEを


そう


僕はLINEを翠ちゃんとの密会の場としてしまったのでした。


「きっと私に子供がいて、遠方の結婚式だから気を遣って誘われなかったんですよー」


翠ちゃんはバツイチ子持ちになっていた。


「めっちゃ行きたかったです! なんなら一応当日休みにしておきますね!!!」


とんでもなくフットワークが軽く、明るい子だった。


学生の頃、陸上競技場で何度か話したことがあった。


正直全然記憶にないけど、イモタの話を聞く限り、尻がヘリウムくらい軽そうだなって思ってた。


結局イモタが結婚式に出席することになり、翠ちゃんが東京に来ることは無かった。


「今度地元に帰るんだけど会う?」


「ぜひぜひ!!! 魚料理と肉料理どっちが好きですか?」


「なんでも食べれるよ。おすすめの店とかある?」


「私も地元に帰ってきてから、あんま飲みに行ってなくて詳しくないんですよ」


「じゃあここにしよ」


「いい雰囲気ですね!!! 楽しみにしてます。たくさん話したいんで17時からにしましょう!」


「オッケー予約しとく、んじゃ近くなったらまた連絡するよ」


こんな感じで僕は、少しの下心をこさえ、適当な日に予定を立てた。


妻が一緒に帰省しない事をいいことに。


忘れもしない5月1日の事だ。


久々の女性と2人っきりでの飲み会。


正直好意のない女性と飲むのに緊張はしない。

なんてってたって、自慢できるくらい綺麗な幼馴染がいて、毎月兄弟の様に銀座でデートしているのだから。


毎回なんでこいつが? と男どもから嫉妬の視線、女性からは好奇の目を向けられる優越感に浸り、隣を胸を張って歩いてるのだ。


昨日なんて幼馴染から、目の前で自分の体を拭き、使い終わった汗拭きシート使う? という、ウルトラご褒美提案にしっぽを振って了承したものだ。


そんな幼馴染がいるおかげか、僕の周りの女性は顔立ちが整っており、並の女性と2人で飲むなんて余裕だと思ってた。


17時開店と同時に入った居酒屋は、団体客用の大きな個室であり、まだ他の客もいなく、BGMも流されていない。


密室でほぼ音のない環境に心を掻き乱されるなんて、誰が想像できるか。


「久々だね」


「はい! 今日は誘ってくれてありがとうございます」


高校時代のJKという生き物だった彼女しか知らない僕は、大人になった翠ちゃんに大きなギャップを感じた。


「そうなんですよ。DVが凄くて離婚届だして子供と逃げ帰ってきたんです」


「イモタさんには悪い事したなって思います。当初変な男に家に入り浸られてて、こんな状況で会えないってなって音信不通にしちゃったんですよ」


なんだかとんでもなく重いってか、ブルトーザーがアクセル全開で突っ込んでくる様な、ヘビーな話が飛んでくる。


あれ?


イモタは、インスタに「付き合った」って投稿されて浮気を認知したんじゃなかったか?


しかし


そこで言わないのが大人の男ってもんだ。


女性を気持ちよく話させるのが、真の男 紳士って男の道徳の教科書に書いてあるんだからなぁ!!!


だがなんだろう。


あまり話に花が咲かない違和感が喉に引っかかったまま、飲み放題が終了した。


「あ、雨降ってんな。ちょっと待ってて」


店を出た僕らを襲う小雨。


女の子を濡らすなんて愚の骨頂。


アルコールで激しく波打つ心臓に鞭を打ち、小走りでビニール傘を買い、僕は翠ちゃんの元へ戻った。


相合傘で入った店のトイレ


「たっけぇぇぇ!!! なんだよこの店はぁぁぁぁああああ!???」


そう叫びたくなる気持ちをアルコールごと胃袋に流し込む。


適当に入ったバーは雰囲気がいいものの、お酒一杯の料金が約2000円。

一次会でさえ2人で12000円と高めだったのに、田舎のくせに高すぎんだろ!!!


やっぱり盛り上がる事のない会話に、今日は無いなと思わされ店を後にした。


「この後どうしますかー???」


少しだけ頬の赤くなった翠ちゃんが、次の日仕事だというのにも関わらず聞いてくる。


なぁーんでこんなに盛り上がらないのに、次に行きたがんのかねぇーぇえ。


頭の中は理解のできない彼女の言動に悩まされていた。


ああ


別にもう二度と会わないんだし、断られる覚悟で聞くか。


「ちょっと休憩いかない?」


「いいですよ」


即答


強くなった雨の音さえ、かき消す心臓の音をバカにするかの如く。


軒下で傘をさす僕へ、翠ちゃんは優しく腕を組んできたのだった。


この時に気づくべきだったんだ。


妻子持ちの男に体を許す異常性を。


そして


同じくらい自分が狂い始めてる事を。


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