初めて見る涙
春になり、街の空気も少しずつ暖かくなっていた。
なおきとまおの関係は、少しずつ変わっていた。
一緒に食事する事が増えていた。
そして、いつの間にか二人はお互いの事を話すようになっていた。
「なおきくんってさ、本当に友達多いよね。」
まおはコーヒーを飲みながら言った。
「そうですか?」
「うん、店に来るときも、よく電話してるし。」
「昔から人と話すの好きなんですよ」
なおきは笑う。
「まおさんもそうじゃないんですか?」
「え?」
「お客さんと話すの好きそうですし。」
まおは少し考えて話した。
「……好きだけど。」
「だけど?」
「たまに疲れる」
以外な言葉だった。
いつも明るく楽しそうに笑ってるまお。
なおきは少し驚いた。
「まおさんも疲れるんですね」
「そりゃ疲れるよ」
「ずっと笑顔でいるのって、意外と大変だからね」
その言葉がなおきの心に残った。
数日後。
なおきが花屋へ行くと、いつもの声が聞こえなかった。
「こんにちは」
店内に入ると、まおはいなかった。
店長が顔をあげる。
「あ、なおきくん」
「今日まおさんは?」
店長の表情が少し曇った。
「今日は休み」
「珍しいですね」
「うん…ちょっと疲れてるみたいでね」
なおきは心配になった。
「大丈夫なんですか?」
「たぶんね、でもまおちゃん昔から無理するタイプだから」
その言葉を聞いて、なおきは。
自分には何もできないかもしれない、でも心配で仕方なかったと思い、まおの自宅のまで行った。
もちろん、突然行くのは迷惑かもしれないと思い、インターホンは押せなかった。
連絡先を交換していたから
「大丈夫ですか?」と送ろうとしたが、やめた。
重いかな、迷惑かなって何度も考えていた。
そのとき扉が開きまおが出てきた。
「なおきくん…」
そこには、少し疲れた表情をしたまおがいた。
「まおさん」
「なんでここに?」
「えっと、心配だったので」
まおは目を丸くした。
そして、
「……本当に優しいね」
「ちょっと近くの公園行きませんか?」
なおきが言う
「うん、いいよ、ちょっと待ってね」
二人は公園のベンチに座った。
「実はね、今日仕事で失敗しちゃって」
まおが話し始めた。
「失敗?」
「大事なお客さんの注文間違えちゃったんだ」
「いつもなら笑って切り替えられるのに、今日はなんか嫌になっちゃって」
なおきは黙って聞いていた。
励ます言葉を探した、でも簡単な言葉で済ませたくなかった。
「まおさん、俺、まおさんの笑顔が好きです。」
「ん?」
まおが顔を上げる。
「でも、無理して笑ってるなら笑わなくてもいいと思います」
「……」
なおきは続ける。
「俺の前では普通でいてください」
まおの目が少し揺れる。
「なおきくん……」
「はい」
「なんでそんなこと言えるの?」
「まおさんの事が好きだからです」
一瞬、二人の時間が止まったようだった。
なおき自身も驚いた。
今、言うつもりじゃなかった、でも言葉にしていた。
まおは何も言わない。
ただ驚いた表情でなおきを見ていた。
「……ごめん、急に変なこと言って」
なおきが慌てて言う。
「違うの、嬉しかったの」
その声は少し震えていた。
「そんな風に言われたの、久しぶり」
なおきは静かに隣りに座る。
それ以上何も言わなかった。
ただ一緒にいる、それだけで良かった。
帰り際にまおが言った。
「なおきくん、明日お店に来て」
「はい、もちろんです。」
「約束ね」
まおは笑った。




