再び出会ったね。
数日後。
なおきは母親に頼まれ、休日の昼間から買い物に付き合わされていた。
「荷物持ちくらいしてよ〜」
「はいはい」
大型スーパーの袋を両手に抱えながら、なおきはため息をつく。
すると母親がふと思い出したように言った。
「あ、そうだ。今日ね、友達の娘さんが家に来るのよ」
「へぇー」
興味なさそうに返事をする。
「かわいい子らしいわよ。」
「はいはい」
なおきは適当に流した。
その数十分後。
家のインターホンが鳴る。
「はーい!」
母親が玄関へ向かう。
なおきはソファでスマホをいじっていたが――
「あら〜!まおちゃん、久しぶり!」
その名前を聞いた瞬間、なおきの動きが止まった。
(……え?)
まさか、と思いながら顔を上げる。
玄関から聞こえる、明るい声。
「おばさん久しぶりです〜!」
聞き覚えがありすぎた。
なおきは勢いよく立ち上がる。
そしてリビングへ入ってきた女性を見た瞬間――
「……あ」
「……えっ」
お互い、同時に固まった。
そこにいたのは、電車で出会ったあの女性。
花の香りが似合う、酔っ払い――いや、まおだった。
今日はちゃんとした格好をしていて、白いブラウスに淡いベージュのスカート。電車で見たときより、ずっと大人っぽい。
けれど、驚いた顔はあのときのままだった。
「なおきくん!?」
「まおさん!?」
母親がきょとんとする。
「あれ?知り合い?」
二人は顔を見合わせた。
気まずい沈黙。
そして次の瞬間。
「……電車で会いました」
「……酔っ払ってました」
なおきの言葉に、まおが「ちょっとぉ!?」と顔を真っ赤にする。
「言わないでよそれ〜!」
「いや、事実じゃないですか」
「うわ最悪!」
母親は大笑いしていた。
「なにそれ、面白すぎるんだけど!」
まおは恥ずかしそうに両手で顔を隠す。
「もうやだぁ……」
そんな姿を見て、なおきは自然と笑っていた。
やっぱりかわいい。
そう思ってしまう。
「でも偶然ですね」
なおきが言うと、まおも照れたように笑った。
「ほんとにね。びっくりした」
「……また会えましたね」
その言葉に、まおが少しだけ目を丸くする。
電車で別れるとき。
“また会えたらいいね”
そう言ったのは、まおだった。
「あ……そっか」
まおはふわっと笑う。
「また会えたね、なおきくん」
その笑顔を見た瞬間。
なおきは改めて確信した。
――やっぱり、この人が好きだ。
まだ出会ったばかりなのに。
もっと知りたい。
もっと一緒にいたい。
そんな気持ちが、胸の中で静かに大きくなっていく。
そのとき母親が、にやにやしながら言った。
「なおき、まおちゃん駅まで送っていってあげなさいよ」
「えっ、お母さん!?」
「ちょうどいいじゃない」
なおきは少し笑って、まおを見る。
「……行きます?」
まおは一瞬だけ迷ったあと、くすっと笑った。
「うん。お願いします、なおきくん」
夕暮れが近づく街を、二人は並んで歩き始めた。
今度は、偶然じゃなく。




