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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な年の瀬、その先に
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第九章 不思議な年の瀬、その先に④

第九章第四話です。


赤い鉢巻きの余興も、いよいよ後半へ。


残る技は、

「ロケットブーム」と「彗星合掌波」。


最後まで、無事に試すことができるのでしょうか。


どうぞお楽しみください。

■第九章 第四話


 テツロウは、

 大広間に置かれた丸いちゃぶ台の上へ下ろされていた。


 小さなテツロウにとって、

 そのちゃぶ台は広場のように広く感じられる。


 そして――


 周囲には、

 巨大なリオ、エミ、ミニ、そしてタリアの姿。


 四人はちゃぶ台を囲み、

 テツロウを優しく見下ろしていた。


 「兄ちゃん、お疲れ~♪」


 「次は、タリアちゃんの番だね~♪」


 先ほど肩へ伝わった小さな衝撃が、

 今も心地よく残っている。


 ミニはその余韻を楽しむように、

 嬉しそうに微笑んだ。


 少し間を置いて――


 「テツロウ氏。」


 「『ロケットブーム』、お願いいたしますぞ!」


 タリアも、

 テツロウの技が当たりやすいように、

 身を低くして待ち構えた。


 テツロウは、

 その先にいる巨大なタリアを見上げる。


 そして、大きく叫んだ。


 「ロケットブーム!」


 その瞬間。


 テツロウの身体は勢いよく跳び上がる。


 頭を前へ向けたまま、

 一直線に加速した。


 だが。


 わずかに軌道が逸れたのか、

 巨大なタリアの身体の脇をかすめ、

 そのまま飛び抜けてしまう。


 やがて勢いを失ったテツロウは、

 ゆっくりと落下を始めた。


 「お兄様!」


 リオは素早く巨大な掌を差し出し、

 落下するテツロウを優しく包み込むように受け止めた。


 タリアは、

 リオの掌の上にいるテツロウを見つめた。


 「テツロウ氏。」


 「大丈夫ですか?」


 テツロウは苦笑しながら頷く。


 「ああ。」


 「なんとか大丈夫だ。」


 そして、リオへ視線を向ける。


 「リオ、ありがとう。」


 リオは優しく微笑んだ。


 「いいえ、お兄様♪」


 「お役に立てて、嬉しいですわ。」


 タリアは小さく頷いた。


 「なるほど……」


 「この技は、飛ぶ方向と角度が重要なようです。」


 そして、テツロウへ視線を向ける。


 「テツロウ氏。」


 「今度は、リオ殿の掌から、

  私へ向かって『ロケットブーム』を

  お願いいたします。」


 リオは優しく頷いた。


 「承知しましたわ。」


 そう言うと、掌の上のテツロウを

 胸の前までゆっくりと運ぶ。


 「お兄様、もう一度お願いいたします♪」


 タリアは再び身を低くした。


 今度は真正面からテツロウを

 迎えられる位置で、静かに構える。


 テツロウは巨大なリオの体を背に、

 掌の上で構えた。


 「ロケットブーム!!」


 次の瞬間。


 テツロウの身体は勢いよく飛び上がる。


 頭を前にしたまま、

 巨大なタリアへ向かって一直線に加速した。

挿絵(By みてみん)


 コツン。


 テツロウの頭が、

 タリアの柔らかな起伏の上に軽く触れる。


 その反動で、

 テツロウはぽんっと跳ね返った。


 確かな衝撃が、タリアへ伝わる。


 タリアは小さく目を見開く。


 「これは……。」


 「素晴らしい衝撃ですぞ。」


 跳ね返ったテツロウは落下を始める。


 タリアは両手を差し出し、

 テツロウを優しく

 包み込むように受け止めた。


 そして、そのまま胸元で大切そうに抱えた。


 タリアは掌の中のテツロウを見つめながら、

 先ほど伝わった衝撃の感覚を

 静かに思い返していた。


 やがてタリアはテツロウを

 丸いちゃぶ台へ優しく下ろした。


 「では、次はエミ殿ですぞ。」


 タリアは端末を操作し、

 次の技の説明を確認する。


 「『彗星合掌波』は……」


 「両手を合わせた状態から、

  相手へ直接波動を伝える技のようですな。」


 テツロウは、

 表示された技の説明を見つめる。


 「直接、波動を伝える……?」


 エミは嬉しそうに微笑んだ。


 「兄さん♪」


 「最後も、よろしくお願いしますね♪」


 そう言って、

 テツロウの正面へ静かに腰を下ろした。


 「ああ。」


 テツロウは安心したように頷く。


 エミなら大丈夫だ。


 そう思いながら、

 優しく見上げて答えた。


 早速、テツロウは大きく息を吸った。


 「彗星合掌波!」


 その場で両手を合わせ、

 巨大なエミへ向かって合掌を放つ。


 ――しかし。


 何も起こらない。


 テツロウは首をかしげた。


 「……あれ?」


 エミも少し寂しそうな表情で、

 ちゃぶ台の上のテツロウを見つめていた。


 これまでの三つの技は、

 テツロウ自身が飛び出していた。


 だが今回は違う。


 タリアは端末へ視線を落とし、

 もう一度メールの説明を読み返す。


 「……なるほど。」


 「『彗星合掌波』は、その場で両手を合わせ、

  相手へ直接波動を伝える技……とありますぞ。」


 「それなら……」


 エミは身を乗り出すと、

 テツロウを優しく包み込むように掌へ乗せた。


 テツロウの眼前には、

 エミの体操着が迫る。


 「兄さん、ここでお願いします。」


 背後からは、

 巨大なエミの掌がしっかりと支えている。


 この体勢では、

 テツロウは身動き一つ取ることができなかった……。


 テツロウは叫んだ。


 「エミー! 近すぎる!」


 だが、その声は届かない。


 リオはすぐに状況を察し、


 「エミちゃん。それでは、

  お兄様が動けませんわ」


 と優しく声をかけた。


 エミは、

 はっとしたように頬を赤らめる。


 「兄さん、ごめんなさい……」


 そう言うと、

 掌に乗せていたテツロウとの距離を

 少しだけ離した。


 テツロウは、

 ここならと改めて構えた。


 「彗星合掌波!」


 テツロウは両手を合わせ、

 そのまま前へ突き出す。


 小さな掌がエミの体操着越しに軽く触れた瞬間、

 その部分がわずかに押し込まれた。


 次の瞬間、

 テツロウの鼓動のような力が

 掌を通してエミへと伝わる。


 「あっ……兄さん」


 エミは驚いたように目を見開く。


 想像していた以上に、

 テツロウの小さな掌から伝わる衝撃は、

 はっきりとしていた。


 「兄さん……もう一度、

  試していただいてもいいですか?」


 技の感覚を確かめたかったエミは、

 そうお願いした。


 テツロウは笑って頷く。


 「もちろん。そんなに役に立つなら、

  何度でも試そう。」


 そう言うと、

 エミは少しだけ躊躇したあと、

 テツロウを乗せたまま、

 自分の内側で鼓動が最も激しく響く場所へと、

 そっと掌を誘導した。


 先ほどよりも、

 テツロウの小さな体は、

 エミの体の中心に近い位置にある。


 至近距離で見るエミの瞳は、

 期待と少しの緊張で揺れていた。


 テツロウは、

 彼女の生命の音が直接伝わってくるその場所に

 両手を合わせ、

 今度は先ほどよりも力を込めて構えた。

挿絵(By みてみん)


 「行くぞ、エミ。」


 「……はい」


 テツロウが覚悟を決め、

 気合と共に両手を突き出す。


 「彗星合掌波!」


 パンッ、と乾いた音がして、

 エミの柔らかな体操着越しの体へ

 テツロウの掌が力強く押し当てられる。


 「あ……っ!」


 エミは思わず小さく声をあげる。


 テツロウの掌からは、

 彼自身の鼓動までが直接伝わってくるようで、

 エミはそれが自分自身のものなのか、

 テツロウのものなのか、

 分からなくなるほどの錯覚に陥る。


 エミは掌の中のテツロウを落とさないよう、

 必死に指を丸めて支えていた。


 「兄さん……すごい……」


 「温かいものが心に響いてます。」


 胸の鼓動を静かに感じながら、

 エミはいつものように優しく微笑んだ。


 そして、

 両手で大切に包み込むように抱え直した。


 その時――


 「こんにちは。」


 落ち着いた声とともに、

 エアリが姿を現した。


 「みなさん、ログハウスの掃除をしてくださって、

  ありがとうございました。」


 エアリは、

 エミに大切そうに抱えられている

 テツロウへ視線を向ける。


 「テツロウさん。今日も皆さんと、

  いろいろ楽しまれていたのですね。」


 ミニは元気よく答えた。


 「そうだよ~!

  今日も兄ちゃん、お姉ちゃんたちと

  いろいろ面白いことしてたよ~♪」


 エアリは、

 再びテツロウを見つめた。


 「あら、テツロウさん。

  素敵な赤い鉢巻きをして

  いらっしゃるのですね。」


 「タリアさんからメールで

  お知らせいただいていた、

  例の鉢巻きですね。」


 タリアは小さく頷いた。


 「はい。」


 「エアリ殿にも、

  一報メールを送っておきましたぞ。」


 「エアリ殿も試されてみますか?」


 「テツロウ氏の四つの技の中から、

  お好きなものを一つ。」


 エミは嬉しそうに微笑んだ。


 「エアリさん。」


 「私は『彗星合掌波』がおすすめです♪」


 「兄さんの想いが、

  そのまま心に届くような技でした。」


 エアリは優しく微笑んだ。


 「そうなのですね。」


 「それでは、私も『彗星合掌波』を

  お願いしてもよろしいでしょうか。」


 テツロウは、

 エアリに期待の眼差しを向けられると、

 笑みを浮かべた。


 「エアリちゃんのためなら、もちろん。」


 そう言って、快く引き受けた。


 エアリは白衣を静かに脱ぐと、

 エミに抱えられている

 テツロウへ優しく微笑みかけた。


 「テツロウさん、お願いします。」


 エミも微笑みながら、


 「兄さん。私が補助させて

  いただきますね。うふふ♪」


 と、テツロウへ告げた。


 エミはテツロウを掌へ乗せると、


 「兄さん。今度も兄さんが放つ

  素敵な鼓動をより響かせそうな、

  エアリさんの心臓に近い場所へ

  お連れしますね。」


 エアリは視線を下ろし、

 テツロウを優しく見つめた。


 「テツロウさん、その鉢巻きの力、

  私にも感じさせてくださいね。」


 エアリは微笑みながら、

 改めてそう伝えた。


 テツロウは、

 目の前に広がるエアリを見上げる。


 少し照れたように視線を逸らしながらも、

 しっかりとその姿を受け止めていた。


 テツロウは小さな両手を合わせ、

 エアリへ向かって構えた。


 「彗星合掌波!」


 掛け声とともに、

 合わせた掌を勢いよく前へ突き出す。

挿絵(By みてみん)


 その掌がエアリに触れた瞬間――


 ぱん、と空気が小さく鳴った。


 まるで合図のように、

 テツロウの鼓動がそのまま波となって広がっていく。


 エアリは静かに目を閉じ、

 その感覚を受け止めた。


 「……なるほど」


 それは衝撃ではなく、

 心の奥へと静かに届く

 “鼓動そのもの”だった。


 「エミちゃん、テツロウさんを

  お借りしてもよろしいですか?」


 エアリがそう尋ねると、

 エミは小さく頷く。


 「もちろんです」


 「ありがとう、エミちゃん。

  そしてテツロウさん……」


 エアリはテツロウをそっと受け取り、

 両手で大切に支えた。


 「テツロウさん……

  今のは、確かに伝わりました。

  あなたの想いと、熱い鼓動が」


 エミも微笑みながら頷く。


 「エアリさんも感じましたか?

  兄さんの、まっすぐな気持ち……」


 二人はテツロウを見つめ、

 それぞれに静かに

 その余韻を受け止めていた。


 テツロウは、

 巨大な二人の間で少し困惑しながらも、

 自分の掌を見つめる。


 そこには確かに、

 誰かの心に届いたという

 不思議な感覚が残っていた。


 そこへミニが元気よく手を挙げた。


 「兄ちゃん、その技、

  今度ミニにもやってね!

  一番面白そう♪」


 タリアも静かに頷く。


 「テツロウ氏。私にも、

  また機会があればぜひお願いしたいですぞ」


 さらにリオも、

 少し微笑みながら続けた。


 「お兄様。リオにも、

  またあの力を見せていただきたいですわ」


 それぞれの言葉に囲まれながら、

 テツロウは小さく苦笑する。


 「……ああ。いつか機会があれば、な」


 テツロウの赤い鉢巻きの実験が

 一通り終わると――


 エアリが小さく頷いた。


 「タリアちゃん。

  頼まれていたスターライトの

  αタイプとΣタイプの混合粒子、

  完成しました。持ってきましたよ」


 少し誇らしげに続ける。


 「お父様にも手伝っていただいて、

  ようやく形になりました」


 テツロウは目を丸くする。


 「それって……

  スターライトの混合粒子か?」


 タリアは端末を見つめながら、

 静かに頷いた。


 「その通りですぞ。

  これで次期ヴァルゴmk2の

  バッテリー安定化も可能になります」


 さらに顔を上げると、

 少し嬉しそうに続けた。


 「それだけではありません。

  新たなログハウスの拡張ユニット――

  温水プールの構築も可能になりますぞ」


 ミニは目をぱっと輝かせた。


 「温水プール入れるの!? やったー!」


 勢いそのままに身を乗り出す。


 「いつできるの? いつ使えるの?」


 タリアは答えた。


 「明後日には実験できますぞ!」


 続けて、エアリへ視線を向ける。


 「エアリ殿にも

  ご協力いただいておりますゆえ」


 エアリも静かに頷いた。


 「拡張ユニットの温水プールも、

  明後日には使用可能ですね」


 タリアは満足げに頷き、

 今度はテツロウへ向き直る。


 「今度はテツロウ氏。

  明後日は温水プールにて、

  ヴァルゴmk2の実験ですぞ」


 エミは思い出したように、

 「あっ」と小さく声を上げた。


 「明後日は……」


 少し間を置いて、

 ミニへ視線を向ける。


 「ミニちゃん、

  リウスとの約束、忘れてない?」


 ミニはきょとんとした顔で

 首をかしげる。


 「リウスちゃんと……?」


 エミはやさしく微笑んだ。


 「リウスと、おせち料理を

  作る約束をしていまして……」


 「ああ、そうだった!」


 ミニは手をぽんと叩いた。


 そしてエミは、

 テツロウへ向き直る。


 「兄さん、ごめんなさいね。

  その代わり、美味しいおせち料理を

  ご用意しますので……」


 リオはやわらかく微笑んだ。


 「エミちゃんとミニちゃんは、

  リウスちゃんとおせち作りの

  予定があるのですね」


 リオはタリアへ視線を向けた。


 「それでは……

  今回の温水プール実験ですが」


 「リブラさんにも、

  ご参加いただくのはいかがでしょう?」


 タリアは小さく頷いた。


 「リブラ殿のご予定に支障がなければ、

  ぜひお願いしたいですぞ」


 テツロウは、

 エアリに大切そうに抱えられながら、

 ふと呟いた。


 「なんか、いつの間にか

  温水プールの予定になってるぞ!」


 エアリは優しく微笑む。


 「でもテツロウさん、

  リオさんもタリアさんも楽しそうですし……」


 少しだけ言葉を添える。


 「今回はエミちゃんとミニちゃんは

  ご一緒できないようですけれど」


 そして、穏やかに続けた。


 「テツロウさん。明後日も、

  きっと楽しい実験になりそうですね」


 テツロウは少し苦笑しながらも、

 視線を上げる。


 なんだかんだ言いつつも、

 テツロウの胸には、

 ひとつの思いが浮かんでいた。


 宇宙のもとで、

 こうしてみんなの笑顔につながるのなら――

 それでいいのかもしれない、と。


 こうして、

 ヴァルゴmk2の新たな実験へ向けた準備が

 着々と進められていくのだった。


■第九章 第五話へ続く


第九章第四話、お読みいただきありがとうございます。


赤い鉢巻きの技も、これで一通り終了。


不思議な年の瀬も一段と押し迫り、

次に待っているのは、

新たなログハウスの拡張ユニット――

温水プールでのヴァルゴmk2の実験です。


次回は10月13日(火)公開予定です。

次回もよろしくお願いいたします。

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