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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な年の瀬、その先に
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第九章 不思議な年の瀬、その先に③

第九章第三話です。


大掃除を終えた後は、

ミナミから託された「赤い鉢巻き」を使って、

ちょっと不思議な余興の始まりです。


果たして、どんな技が飛び出すのでしょうか。


どうぞお楽しみください。

■第九章 第三話


 掃除を終えたログハウスの大広間。


 巨大なエミやミニ、リオ、

 そしてタリアたちの視線のもと、

 テツロウは畳の上で静かに佇んでいた。


 やがて、

 リオは眼下にいるテツロウへ

 優しく微笑みかける。


 「お兄様。ログハウスの大広間、

  綺麗になりましたわ」


 「ここからは、お兄様の出番です♪」


 タリアも頷く。


 「テツロウ氏にも、

  存分にテストできる環境が整いました」


 そう言うと、

 タリアは携帯端末を取り出して操作した。


 すると、掃除のために開けていた窓が

 自動で閉まり始める。


 同時に、通風口から温かな風が

 静かに流れ始めた。


 「ログハウスは冷暖房完備です」


 「冬でも快適に過ごせますよ」


 木の香りに包まれた室内は、

 少しずつ心地よい暖かさに満たされていく。


 「お兄様、私も準備しますわね♪」


 リオはテツロウのすぐそばで、

 上着を脱ぎ始めた。

挿絵(By みてみん)


 その瞬間。


 ふわりと風が巻き起こる。


 「うわっ……」


 思わずテツロウの身体がよろける。


 エミはすぐにテツロウを優しく掌へ乗せた。


 「リオ姉さん♪」


 「兄さんが飛ばされちゃいますよ♪」

 

 エミの掌の上にいるテツロウへ、

 リオは申し訳なさそうに微笑んだ。


 「お兄様、申し訳ございません」


 そして、

 どこか期待に満ちた表情を浮かべる。


 「あとで、赤い鉢巻きを使ったお仕置き、

  お願いしますわ♪」


 テツロウは戸惑いながらも、


 「あ、ああ……」


 と曖昧に頷く。


 その様子を見て、

 ミニは目を輝かせた。


 「兄ちゃん、どんなお仕置きするの?」


 「兄ちゃんのお仕置き、楽しみ~♪」


 エミは思わず苦笑する。


 「もう、ミニちゃんも♪」


 そう言うと、掌の上のテツロウを

 そっと身体へ寄せ、優しく包み込んだ。


 そして、テツロウへ優しく微笑む。


 「兄さん♪」


 「連帯責任なので、

  エミにもお仕置きお願いしますね♪」


 その間にも、

 実験の準備は着々と進められていた。


 リオは上着に続いて網タイツも脱ぎ、

 タリアも手袋や靴下を外し、

 それぞれ暖房の効いた室内に合わせた

 身軽な姿となる。


 リオはエミへ微笑みかけた。


 「エミ、お兄様をこちらへ」


 「エミもエプロンを外しましょうね♪」


 エミはテツロウをリオへ優しく渡すと、

 エプロンを外した。


 リオは優しく微笑んだ。


 「さあ、お兄様」


 「私たちの準備は整いましたわ」


 「赤い鉢巻きをお願いいたします♪」


 テツロウはリオの掌の上で、桐箱を静かに開く。


 中から赤い鉢巻きを取り出すと、

 ゆっくりと頭へ巻いた。


 その姿を見たリオは、

 テツロウをそっと目の高さまで持ち上げる。


 目の前で赤い鉢巻きを締めた姿を、

 じっくりと見つめる。


 そして、思わず微笑んだ。


 「お兄様……」


 「とても凛々しいですわ♪」


 テツロウは、眼前に迫る巨大なリオの顔を

 見上げながら、ふと思い出した。


 「そういえば……説明書があるんだったな」


 リオの掌の上で桐箱を開き、中を確認する。


 小さく折り畳まれた紙を取り出し、目を通した。


 そこには――


 『詳しい説明は、

  タリアにメールしました。 ミナミ』


 とだけ書かれていた。


 「……え?」


 テツロウは思わず瞬きをする。


 そして、頭上のタリアを見上げた。


 「タリアちゃん」


 「説明書には、詳しい説明はタリアちゃんに

  メールしたって書いてあるけど……」


 タリアは端末でメールを確認すると


 「基本的には、星竜拳、竜座旋風脚、

  ロケットブーム、彗星合掌波は、

  技名を叫ぶことで発動するようです。」


 「先ほど申し上げた四つの技を連続で使用する

  『スペシャルコンボ』は、現時点では

  使用できない設定になっています。」


 「あと、『バーサーカーモード』という

  機能もあるようですが……」


 「こちらは説明が一切ありません。」


 「現時点では使用できないようですね。」

 

 テツロウは首をかしげた。


 「バーサーカーモード……?」


 「名前からして、不安しかないんだが……」


 その言葉を聞いたリオは、

 嬉しそうに微笑む。


 「お兄様のバーサーカー……」


 「ぜひ体感してみたいですわ♪」


 タリアは端末へ再び視線を落とした。


 「あ……まだ続きがありますぞ」


 そう言うと、メールの続きを読み上げる。


 「『追伸』」


 「『基本技のテストを行う際は、

  添付した担当決定プログラムを

  ご使用ください。』」


 「『今回は、

  この四つの技を体験してください。』」


 「『参加者の名前を入力し、

  決定ボタンを押すと、

  公平に担当が決定されます。』」


 「『ミナミ』」


 ミニは目を輝かせた。


 「えっ!」


 「ルーレットみたいなの?」


 タリアは端末を操作する。


 「担当決定プログラムを起動しますぞ」


 画面には、

 『基本技担当決定プログラム』

 と表示された。


 その下には、

 『参加者名を入力してください』

 という案内と、

 名前を入力する欄が表示されている。


 タリアは、

 リオ。

 エミ。

 ミニ。

 そして自分の名前を入力した。


 入力を終えると、

 画面中央に表示された


 『決定』


 ボタンを押す。


 すると、

 四つの技名と四人の名前が

 高速で入れ替わり始めた。


 「おぉ~♪」


 ミニは思わず声を上げる。


 数秒後――


 画面の表示が止まる。


 タリアは結果を確認すると、小さく頷いた。


 「担当が決まりましたぞ」


 「星竜拳はリオ殿。」


 「竜座旋風脚はミニ殿。」


 「ロケットブームは私。」


 「そして、彗星合掌波はエミ殿です。」


 四人は結果を見つめる。


 誰一人異論はないようだった。


 「では、この順番で基本テストを

  進めていきますぞ」


 リオは掌にテツロウを乗せたまま、

 ゆっくりと両膝をついた。


 「では早速、お兄様。

  こちらを向いてくださいませ♪」


 テツロウが向き直ると、

 リオの掌はちょうど

 おへその高さまで運ばれていた。


 眼前には、巨大なリオのおへそがある。


 そのすぐ向こうでは、

 リオが優しく微笑んでいた。


 あまりにも近い。


 視線を上げても、

 その大きさに思わず圧倒される。


 「お兄様」


 「遠慮なさらないでください」


 「しっかり前を見て、お願いしますわ♪」


 リオは優しく微笑んだ。


 テツロウはリオの掌の上で大きく息を吸う。


 「せ、星竜拳!」


 その瞬間。


 テツロウの身体は、

 拳を突き上げたまま勢いよく飛び立った。


 一直線に跳び上がる。


 その拳は、

 リオの巨大な身体をかすめるように通り過ぎた。


 「きゃっ♪」


 リオは思わず小さく声を漏らす。


 「お兄様♪」


 「飛び跳ねるお姿、とても可愛らしいですわ♪」


 そして、嬉しそうに微笑んだ。


 「今度は、ちゃんと当ててくださいね♪」


 テツロウは小さく息を整えた。


 「では、もう一度」


 リオの掌の上。


 目の前には、リオの巨大な身体が迫っている。


 「星竜拳!」


 再び拳を突き上げる。


 その瞬間。


 テツロウの身体は勢いよく飛び上がった。

挿絵(By みてみん)


 一直線に上昇すると、

 頭上で柔らかな感触に触れる。


 「うわっ!」


 軽く弾かれたテツロウは、

 そのままリオの掌へと戻ってきた。


 リオは嬉しそうに微笑む。


 「お兄様♪」


 「それです。」


 「ちゃんと当たりましたわ♪」


 そして、少し名残惜しそうに続ける。


 「本当は、もう少し体験してみたいのですが……」


 「時間もありますし、

  次はミニちゃんの番ですわ。」


 視線を向けると、

 ミニは今にも飛び跳ねそうなほど

 嬉しそうに待っていた。


 「リオお姉ちゃん♪」


 「テーブル出していい?」


 リオは優しく頷く。


 「そうですわね♪」


 「お兄様も、テーブルがあった方が

  安定しますわ」


 そう言うと、リオは掌の上のテツロウを、

 ミニへ優しく手渡した。


 「テーブルを持ってきますね。」


 「それまで、お兄様と遊んでいてくださいな♪」


 ミニは嬉しそうにテツロウを受け取る。


 「ありがとう、リオお姉ちゃん♪」


 「兄ちゃん♪」


 「楽しみだね~♪」


 そう言って、

 テツロウへ嬉しそうに頬を寄せ、微笑んだ。


 「うわっ、また……」


 テツロウは思わず驚く。


 柔らかな頬がそっと触れる。


 嬉しそうにはしゃぐミニの表情を見ていると、


 (……まあ、これはこれでいいか)


 テツロウは苦笑しながら、自分を納得させた。


 ほどなくして、

 リオが丸いちゃぶ台を抱えて戻ってくる。


 「お待たせしました♪」


 リオは二人の前へ、

 丸いちゃぶ台をそっと置いた。


 少しして、

 ミニはテツロウをちゃぶ台へ優しく下ろす。


 続いて両膝をつき、両手を畳へ添えた。


 身を低くすると、嬉しそうにテツロウへ微笑む。


 「兄ちゃん♪」


 「ぎょうざ? 旋風脚だっけ?」


 「いつでもいいよ♪」


 テツロウはちゃぶ台の上で構えながら苦笑した。


 「ぎょうざじゃない。」


 「りゅうざ、竜座旋風脚だ。」


 そのやり取りを見ていたエミが、くすりと笑う。


 「兄さん♪」


 「今度、餃子パーティーもしましょうか♪」


 テツロウは、

 エミのまんざらでもない笑顔を見ながら頷く。


 「では!」


 「竜座旋風脚!!」


 その瞬間。


 テツロウの身体は高速で回転しながら、

 向かいで待ち構えるミニへ向かって飛んでいく。


 ミニは目を輝かせた。


 「わぁ♪」


 「兄ちゃん、くるくる回って面白~い♪」

挿絵(By みてみん)


 だが。


 まだ出力が足りなかったのか。


 それとも、ミニとの距離が少し遠かったのか。


 テツロウは途中で勢いを失い、

 そのままゆっくりと落下していく。


 ちゃぶ台とミニの間へ落ちそうになった、

 その時――


 「危ない♪」


 ミニはそっと掌を差し出し、

 テツロウを優しくすくい上げた。


 「兄ちゃん♪」


 「もっと大きな声で叫んでみたら、

  もっと飛べるんじゃないかな?」


 テツロウはミニの掌へ着地すると、

 小さく息をついた。


 「もっと大きな声で……か」


 半信半疑ではある。


 だが、今は試してみるしかない。


 「ありがとう、ミニ」


 テツロウは再びちゃぶ台の上へ

 降ろしてもらうと、

 大きく息を吸い込んだ。


 ミニも再び両膝をつき、両手を畳へ添える。


 身を低くし、

 肩を少し前へ出して嬉しそうに待っていた。


 「兄ちゃん♪」


 「今度こそだよ!」


 テツロウは赤い鉢巻きを締め直す。


 そして――


 大きく叫んだ。


 「竜座旋風脚!!」


 その瞬間。


 テツロウの身体は勢いよく高速回転を始める。


 先ほどとは比べものにならない勢いだった。


 一直線にミニへ向かって飛んでいく。


 「わぁ♪」


 ミニは目を輝かせた。


 次の瞬間。


 トンッ。


 トンッ。


 回転するテツロウの蹴りが、

 ミニの肩へ二度軽く当たる。


 勢いを使い切ったテツロウは、

 そのまま回転を止めながら落下していく。


 「おっと♪」


 ミニはすぐに掌を差し出し、優しく受け止めた。


 掌の上には、少し目を回したテツロウ。


 ミニはそんなテツロウを見つめながら、

 思わず頬を緩める。


 「兄ちゃん♪」


 「ちゃんと当たったね♪」


 肩へ伝わった小さな衝撃。


 それは痛みなどではなく、


 テツロウが一生懸命に技を

 繰り出してくれた証のように思えた。


 その小さな感触が、


 ミニにはたまらなく愛おしく

 感じられるのだった。


 ミニは掌の上のテツロウを、

 嬉しそうに見つめながら微笑んだ。


 「兄ちゃん♪」


 「今の、すっごく楽しかった♪」


 テツロウも照れくさそうに笑う。


 「俺も、少しずつコツが分かってきた

  気がするよ」


 その様子を見ていたタリアは、

 端末へ視線を落とした。


 「ここまでで、基本データは正常ですぞ」


 「残る技は二つです」


 エミも優しく頷く。


 「兄さん♪」


 「次も頑張ってくださいね」


 タリアはテツロウへ視線を向ける。


 「次は私が担当する『ロケットブーム』です」


 「そして最後は、エミ殿の『彗星合掌波』」


 「引き続き、基本テストを進めていきますぞ」


 テツロウは小さくうなずいた。


 「よし」


 「最後までやってみよう」


 そう答えたテツロウを見て、


 ミニは嬉しそうに微笑んだ。


 「兄ちゃん、次はタリアちゃんの番だね♪」


 「どんな技なのかな~?」


 タリアは端末へ視線を落とす。


 「ロケットブームは、

  前方へ向かって一直線に飛ぶ技のようですな」


 「なるほど……」


 テツロウは、

 先ほどまでに試した二つの技を思い返す。


 星竜拳は、勢いよく跳び上がる技。


 竜座旋風脚は、回転しながら飛ぶ技。


 そして、次のロケットブームは――


 「一直線に飛ぶ……か」


 テツロウは、タリアの方へ視線を向けた。


 タリアはすでに、

 次のテストに向けて準備を始めている。


 「テツロウ氏。」


 「次は、正確な方向と角度が

  重要になりそうですぞ」


 「分かった」


 テツロウは赤い鉢巻きを締め直した。


 そして、残る二つの技へ向けて、

 改めて気持ちを引き締める。


 こうして――


 基本技のテストは、


 次の段階へ進むのであった。


■第九章 第四話へ続く


第九章第三話、お読みいただきありがとうございます。


赤い鉢巻きによって繰り出される、

ちょっと不思議な技の数々。


残る技はあと二つ。

次はタリアとエミの番です。


次回は10月9日(金)公開予定です。

次回もよろしくお願いいたします。

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