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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な聖夜の遊園地
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第八章 不思議な聖夜の遊園地⑤

第八章 第五話です。


次にテツロウを託されたのは、

エアリとタリアでした。


次なる舞台はジェットコースター。


聖なる夜を滑走する、

新たなアトラクションが始まります。

■第八章 第五話


 やがて――


 エミとリウスは足を止めた。


 「到着です」


 エミが優しく声をかける。


 テツロウはコーヒーカップの中から

 顔を上げた。


 目の前には、

 巨大なレールが広がっている。


 遊園地の夜空へ向かって伸びる、

 巨大なジェットコースター。


 高く。


 さらに高く。


 レールは闇夜の中へ吸い込まれるように

 続いていた。


 「うわ……」


 思わず声が漏れる。


 その時。


 「おっ♪」


 聞き慣れた声が響いた。


 レールの傍らには、

 エアリとタリアの姿があった。


 「来ましたね♪」


 エアリが楽しそうに手を振る。


 「お待ちしていました」


 タリアも静かに微笑んだ。


 エミはそっと掌を差し出す。


 「兄さん、

  お連れしました」


 「ありがとうございました」


 タリアが軽く頭を下げる。


 すると。


 エアリはジェットコースターを指差した。


 「テツロウさん♪」


 「今回はこれですよ♪」


 その言葉に、

 テツロウはレールを見上げる。


 高い。


 とにかく高い。


 見上げる先には、

 頂上付近のレールが小さく見えていた。


 そして。


 その高さは――


 エアリとタリアの視線に

 届きそうなほどだった。


 エミは掌の上のコーヒーカップを、

 そっとエアリへ差し出した。


 「お願いします」


 「はい♪」


 エアリは嬉しそうに受け取る。


 コーヒーカップは、

 巨大なエアリの掌へ。


 「わっ……」


 視界がふわりと揺れる。


 次の瞬間。


 エアリの笑顔が、

 目の前いっぱいに広がっていた。


 「テツロウさん♪」


 楽しそうな声。


 そして。


 エアリはコーヒーカップを見つめながら、

 ゆっくりと顔を近づける。


 「うーん……」


 「エアリ?」


 「なんだか――」


 エアリはくすりと笑った。


 「テツロウさん、

  美味しそうですね♪」


 「は?」


 思わず固まる。


 「な、何を言ってるんだ」


 「ふふっ♪」


 エアリは楽しそうに笑う。


 もちろん本気ではない。


 ただ。


 慌てるテツロウの反応が、

 見たかっただけなのだ。


 「やっぱりそういう顔になりますよね♪」


 「そりゃそうだろ……」


 テツロウが苦笑すると、

 エアリは満足そうに頷いた。


 その様子を見ていたタリアも、

 小さく息を吐く。


 「エアリさん」


 「またからかっていますね」


 「ばれましたか♪」


 エアリは悪びれる様子もなく笑った。

 ひとしきり笑った後。


 エアリは掌の上のコーヒーカップを、

 ジェットコースターの乗り場へ運んだ。


 「はい♪」


 「到着です♪」


 そして。


 壊れ物を扱うような優しさで、

 コーヒーカップをホームへ降ろす。


 テツロウは、

 コーヒーカップからゆっくりと降り立った。


 目の前には、

 巨大なジェットコースター。


 夜空へ向かって伸びるレール。


 高く。


 さらに高く。


 その姿は、

 これまで乗ってきたアトラクションとは

 明らかに違っていた。


 思わず見上げる。


 レールはゆっくりと上昇しながら、

 遊園地の灯りを見下ろす高さまで

 続いている。


 そして。


 頂上付近へ視線を向けた。


 すると。


 そこはちょうど、

 エアリとタリアの視線に届きそうな高さだった。

挿絵(By みてみん)

 (あそこまで登るのか……)


 思わず息を呑む。


 観覧車も高かった。


 バイキングも迫力があった。


 コーヒーカップも不思議な体験だった。


 だが。


 目の前のジェットコースターは、

 それらとはまったく違う。


 高さ。


 速度。


 そして急降下。


 想像しただけで、

 少しだけ背筋がぞくりとした。


 (今さら逃げるわけにもいかないよな)


 小さく苦笑する。


 その時だった。


 「テツロウさん♪」


 エアリが楽しそうに声をかける。


 「ちゃんと見えてますかー?」


 「見えてるよ」


 返事をすると、

 エアリは満足そうに頷いた。


 「それなら安心です♪」


 その隣で、

 タリアも静かに口を開く。


 「テツロウ氏」


 「まもなく乗車です」


 「覚悟はよろしいですか?」


 穏やかな口調。


 しかし内容はまったく穏やかではない。


 テツロウは再びレールを見上げる。


 巨大なジェットコースターは、

 静かにその時を待っていた。


 やがて。


 テツロウはジェットコースターへ乗り込んだ。


 安全バーが下ろされる。


 カチリ。


 小さな音が響く。


 「それでは」


 タリアが静かに頷く。


 「出発です」


 次の瞬間。


 ガタン。


 ジェットコースターがゆっくりと動き始めた。


 レールは上へ。


 さらに上へ。


 頂上へ向かって伸びている。


 ガタン。


 ガタン。


 ガタン。


 規則正しい音を響かせながら、

 車両は少しずつ高度を上げていく。


 最初に見えていたのは、

 エアリとタリアの足元だった。


 巨大なブーツ。


 レールの両脇に立つ二人の姿は、

 まるで巨大な門番のようにも見える。


 「テツロウさーん♪」


 エアリが手を振る。


 その声も、

 まだ遥か上から聞こえてくる。


 さらに上昇。


 ガタン。


 ガタン。


 やがて視線は膝の高さへ。


 巨大なサンタ衣装の裾が、

 冬の風に揺れていた。


 その向こうには、

 冬のイルミネーションが広がっている。


 レールは止まらない。


 さらに上へ。


 腰の高さ。


 胸元。


 肩。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 エアリとタリアの顔が近付いてくる。


 その頃には、

 遊園地の景色も随分遠くなっていた。


 「テツロウ氏」


 タリアの声。


 今度ははっきり聞こえる。


 「現在順調に上昇中です」


 「それは見ればわかるよ……」


 思わず苦笑する。


 すると。


 エアリが楽しそうに笑った。


 「余裕ありますね♪」


 「頂上に着くまでですよ♪」


 ガタン。


 ガタン。


 上昇は続く。


 気付けば。


 左右には巨大なエアリとタリア。


 二人はレールを挟むように立ち、

 テツロウの乗る車両を見守っていた。


 冬の風が吹く。


 そのたびに、

 サンタ衣装の赤い布地がふわりと揺れた。


 揺れる布は、

 まるで巨大な旗のようでもあり、

 冬の夜空を流れる雲のようでもある。


 上昇を続ける車両の視界には、

 赤い布の軌跡と、

 イルミネーションの光が交互に映り込む。


 風。


 光。


 そして揺れる衣装。


 それらが重なり合い、

 景色はどこか幻想的なものへと変わっていた。


 まるで。


 冬の夜空そのものが、

 ゆっくりと形を変えているようだった。


 そして――


 ついに。


 テツロウの視線は、

 二人の目線の高さへ到達する。

挿絵(By みてみん)

 エアリが微笑む。


 タリアが静かに頷く。


 その先には。


 夜空。


 遊園地。


 そして。


 まだ見ぬ急降下が待っていた。


 その時だった。


 ガタン。


 車両が頂上を越える。


 一瞬の浮遊感。


 次の瞬間――


 「うわああああっ!?」


 急降下。


 夜景が一気に迫る。


 風が唸りを上げる。


 イルミネーションの光が、

 一本の帯のように流れていった。


 速い。


 とにかく速い。


 そして。


 そのまま最初のループへ突入する。


 視界が回る。


 空。


 地面。


 夜空。


 遊園地。


 景色が目まぐるしく入れ替わる。


 そんな中。


 巨大な影が視界を横切った。


 「えっ?」


 エアリだ。

挿絵(By みてみん)

 レールの上から、

 楽しそうにこちらを覗き込んでいる。


 だが。


 次の瞬間には視界が反転。


 今度はタリア。

挿絵(By みてみん)

 穏やかな表情のまま、

 車両の動きを見守っていた。


 まるで。


 二人の間を縫うように、

 ジェットコースターが駆け抜けていく。


 轟音と共に、

 車両はエアリとタリアのすぐ傍らを通過した。


 猛烈な風が吹き抜ける。


 その風を受けて、

 サンタ衣装の赤い布地が大きく揺れた。


 赤。


 光。


 そして夜空。


 それらが混ざり合い、

 流れる景色の一部となって視界を横切っていく。


 あまりにも速い。


 何が見えたのか、

 何が見えていないのかさえ分からない。


 ただ。


 巨大な二人の存在だけは、

 強く印象に残っていた。


 ループを抜ける。


 さらに旋回。


 再びエアリ。


 続いてタリア。


 高速で流れる景色の中、

 二人の巨大な姿だけが不思議と印象に残る。


 「テツロウさーん♪」


 どこからかエアリの声。


 しかし。


 返事をする余裕はない。


 次の瞬間には、

 再び車両が上昇を始めていた。


 ガタン。


 ガタン。


 ガタン。


 急降下の勢いを使いながら、

 今度は別の頂上へ向かって登っていく。


 見上げる先には、

 再び巨大なエアリとタリア。


 二人はレールを包み込むように見守りながら、

 こちらを待っていた。


 「テツロウさん♪」


 エアリが優しく手を振る。


 「楽しんでいますか?」


 その声は、

 先ほどまでの悪戯っぽいものではない。


 どこか安心させるような、

 穏やかな響きだった。


 隣では。


 タリアも静かに頷く。


 「テツロウ氏」


 「順調です」


 「まもなく第二頂上へ到達します」


 ガタン。


 ガタン。


 ガタン。


 車両はゆっくりと高度を上げていく。


 冬の風が吹いた。


 エアリとタリアの長い髪が揺れる。


 赤いサンタ衣装も風を受け、

 ふわりと大きく靡いた。


 その姿は、

 まるで夜空に立つ案内人のようだった。


 遊園地の灯りは遥か下。


 ここまで来ると、

 観覧車さえ小さく見える。


 気付けば。


 再び二人の視線の高さまで

 登ってきていた。


 「テツロウさん♪」


 エアリが微笑む。


 「ちゃんと見えてますか?」


 「見えてるよ」


 テツロウも思わず笑った。


 こうして見ると、

 巨大な二人もどこか頼もしく見える。


 そして――


 車両は頂上へ到達した。


 一瞬の静寂。


 その直後。


 ガタン。


 再び急降下が始まる。


 「うわあああっ!?」


 景色が一気に流れ始めた。


 夜空。


 イルミネーション。


 巨大なエアリ。


 巨大なタリア。


 全てが混ざり合いながら、

 猛烈な速度で後方へ消えていく。


 さらに加速。


 風が唸る。


 その時だった。


 ふと。


 前方に違和感を覚える。


 「……ん?」


 レールの先。


 その先のレールが――


 ない。


 「え?」


 思わず目を見開く。


 前方には、

 巨大な闇が口を開けていた。


 ぽっかりと開いた、

 巨大な入口。


 どこか見覚えがある。


 先月、大森林の奥で見た、

 あの巨大な入口によく似ていた。


 「なるほど……」


 エアリが小さく呟く。


 巨大な入口を見つめながら、

 どこか納得したように微笑む。


 「以前の大森林の時の迷宮と

  同じようなものかもしれませんね」


 そして。


 「これがスターライト出現の

  条件なのかしら?」


 しかし。


 テツロウにとっては

 それどころではない。


 車両は止まらない。


 巨大な入口が迫る。


 レールの終端が迫る。


 「お、おい!?」


 思わず声を上げる。


 だが。


 タリアは落ち着いたままだった。


 「問題ありません」


 「安全装置を起動します」


 そう言って、

 タリアは手元の端末へ触れる。


 次の瞬間。


 ジェットコースターは

 レールの先端を飛び出した。


 「うわあああっ!?」


 夜空へ投げ出される。


 眼下には、

 巨大な入口。


 そして遊園地の灯り。


 一瞬だけ、

 身体が宙へ浮いた。


 しかし。


 次の瞬間。


 ガシャン。


 テツロウの乗る座席が、

 車両本体から分離する。


 「えっ?」


 さらに。


 カシャン。


 カシャン。


 小さな機械音と共に、

 座席の左右から翼が展開された。


 「グライダー……?」


 見覚えがあった。


 風を受ける感覚。


 静かに滑空する浮遊感。


 急激だった落下は消え、

 グライダーは冬の風を受けながら

 静かに滑空を始めた。


 「成功です」


 タリアが満足そうに頷く。


 「安全装置正常作動」


 「飛行経路も問題ありません」


 どうやら。


 突然の事態ではあったが、

 安全対策は万全だったらしい。


 テツロウは思わず息を吐く。


 「すごいな……」


 思わず漏れた本音。


 すると。


 タリアは少しだけ誇らしそうに頷いた。


 その時だった。


 前方に、

 巨大な影が現れる。


 エアリだった。


 「テツロウさーん♪」


 エアリは嬉しそうに両手を広げる。


 まるで。


 帰ってくるのを待っていたかのように。

挿絵(By みてみん)

 グライダーはゆっくりと高度を下げる。


 冬の風。


 イルミネーション。


 そして。


 巨大なエアリの笑顔。


 やがて。


 グライダーはエアリの掌へ近付いた。


 エアリは両手を添える。


 壊れ物を扱うように。


 大切なものを受け取るように。


 ふわり。


 ほとんど衝撃もなく、

 グライダーは受け止められた。


 さらに。


 エアリは包み込むように両手を寄せる。


 テツロウを守るように。


 風から隠すように。


 優しく。


 本当に優しく。


 「大丈夫ですか?」


 エアリがそっと覗き込む。


 「テツロウさん♪」


 近くで聞こえる声。


 テツロウは思わず笑った。


 「ああ」


 「大丈夫だ」


 それを聞いて。


 エアリも安心したように微笑んだ。


 その隣では、

 タリアも静かに頷いている。


 どうやら。


 ジェットコースターは終わっても、

 今日の冒険はまだ続くらしい。


 巨大な入口の向こう側へ。


 二人に見守られながら、

 テツロウは次なるアトラクションへ向かうのだった。


■第八章 第六話へ続く

第八章 第五話をお読みいただき、

ありがとうございました。


今回は、

エアリとタリアによる

ジェットコースターのお話でした。


遊園地の夜景を見下ろす高さと、

これまでとは違う速度感を

楽しんでいただけましたら幸いです。


そして物語は、

新たな舞台へと進んでいきます。


※挿絵はAIを用いて作成しています。

 AIの仕様や制約により、

 イメージ通りに再現できていない部分もありますが、

 あくまで参考イメージとして

 補完しながらお楽しみいただければ幸いです。


※作品の感想なども

 お聞かせいただけましたら幸いです。

 今後の創作の励みになります。


次回 第八章 第六話は

9月22日(火)公開予定です。


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