第八章 不思議な聖夜の遊園地⑥
第八章 第六話です。
それぞれのアトラクションを巡ってきた仲間たちが、
再び集まります。
今回の舞台は、
遊園地の地下に広がる不思議な空間。
聖なる夜の冒険は、
新たな景色へと続いていきます。
■第八章 第六話
テツロウは
エアリの巨大な掌の上から、
眼下に広がる
巨大迷宮の入口を眺めていた。
そこには、
巨大な下り階段が設けられていた。
数段ほどしかない。
だが。
一段一段があまりにも大きい。
その先には――
巨大な鉄扉のようなものが取り付けられていた。
鉄扉なのか。
それとも別の何かなのか。
この距離からでは判別できない。
ただ。
遊園地のアトラクションとは思えないほど、
重厚な存在感を放っていた。
エアリはその鉄扉を見つめながら言う。
「この先は、
皆で進みましょうか」
「私たちでも入れるような
広さですし」
タリアも小さく頷く。
「では、
皆さんを呼んできますね」
しばらくして。
巨大迷宮の入口前には、
遊園地へ来ていた全員が集まっていた。
エアリの掌の上から、
テツロウはその様子を見渡す。
リオ。
エミ。
ミニ。
ピスカ。
リウス。
リブラ。
タリア。
そしてエアリ。
今日一日、
それぞれのアトラクションを
楽しんできた仲間たちが、
再びここへ集結していた。
「この先に、きっとスターライトがあるわ」
エアリは掌の上のテツロウへ向かって、
静かに呟いた。
「テツロウさん♪」
その声には、
どこか確信めいた響きがあった。
リオは巨大な鉄扉を見上げる。
「では、開けますね」
すると。
タリアも一歩前へ出た。
「リオ。
私も手伝います」
「お願いします」
二人は鉄扉へ手を添える。
そして――
ゆっくりと力を込めた。
ギギギギギ……
低く重い音が響く。
長い間閉ざされていたかのような、
鈍い金属音。
巨大な鉄扉が、
少しずつ開いていく。
やがて。
十分な隙間ができると、
その向こうの光景が姿を現した。
「……これは」
テツロウは思わず声を漏らす。
そこには、
広大な空間が広がっていた。
入口の先には段差があり、
さらにその奥には――
巨大なソリのような乗り物が停まっていた。
テツロウから見ても巨大。
そして。
リオたちが乗っても余裕がありそうなほど、
大きな乗り物だった。
ソリの前方には、
四頭の巨大なトナカイの模型。
金色の角を持ち、
クリスマス飾りのような装飾が施されている。
どうやら。
そのトナカイたちが
ソリを牽引する構造らしい。
テツロウは巨大なソリを見上げた。
「……これに乗れって意味なんだろうな」
エアリも小さく頷く。
「そうみたいですね」
そしてソリを見回しながら続けた。
「でも、この構造では
私たちは四人しか乗れなさそうですね」
その時だった。
「じゃあ!」
ミニが元気よく手を挙げる。
次の瞬間。
エアリの掌の上にいたテツロウを、
ひょいと抱え上げた。
「あっ」
「兄ちゃん!
ミニと一緒に乗ろう!」
そう言うとミニは、
ソリの後部座席へ向かって駆け出す。
「ミ、ミニ!?」
エミが慌てて声を上げる。
だが当の本人は気にした様子もない。
そのまま後部座席の奥へ滑り込み、
満面の笑みを浮かべた。
「えへへ♪
一番乗りー!」
後部座席へ腰を下ろしたミニは、
抱えていたテツロウをそっと持ち上げた。
そして――
自分の頬へ軽く寄せる。
「兄ちゃん♪」
「楽しい?」
巨大な頬から伝わる柔らかな感触。
突然の出来事に、
テツロウは思わず苦笑した。
「まだ乗る前なんだけどな」
「えへへ♪」
ミニは嬉しそうに笑う。
その様子を見ていたエミは、
少し慌てた様子でソリへ乗り込んだ。
「ミニ!」
そして。
ミニの頬へ寄せられているテツロウを見つめる。
「兄さん……」
「大丈夫です……?」
どこか心配そうな声。
テツロウは思わず笑ってしまう。
「ああ」
「大丈夫だよ」
その返事を聞いて、
エミも少しだけ安心したように微笑んだ。
エアリはソリを見上げながら微笑む。
「あと二人ですね」
そして、
リウスへ視線を向けた。
「リウスちゃんも、
一緒に行ってあげてください」
「高校生同士、
気も合いそうですしね♪」
突然話を振られたリウスは、
少し驚いたように瞬きをした。
「私ですか?」
「ええ」
エアリは頷く。
すると。
ミニが元気よく手を振った。
「リウスちゃーん!」
「早く早くー!」
エミも苦笑しながら頷く。
「一緒に行こう?」
リウスは二人の様子を見て、
小さく笑った。
「わかりました」
「では、ご一緒します」
すると。
ピスカが一歩前へ出た。
「では――」
「私が引率させていただきますね♪」
うふふ、と優しく微笑む。
その言葉に、
エアリも安心したように頷いた。
「ピスカさんなら安心ですね♪」
リオも微笑む。
「ええ」
「お願いできますか?」
「お任せください」
ピスカはそう言うと、
ゆっくりとソリへ向かう。
すると後部座席から、
ミニが元気よく手を振った。
「ピスカお姉ちゃーん!」
「こっちこっちー!」
「はいはい♪」
ピスカは小さく笑いながら、
ソリの前方席へ腰掛けた。
「それでは出発しましょうか♪」
その時だった。
「待ってー♪」
ミニが嬉しそうに声を上げる。
そして。
腕の中のテツロウを見つめた。
「兄ちゃん♪」
「兄ちゃんの、
面白い反応もっと見たいからー♪」
「ん?」
テツロウが首を傾げる。
次の瞬間。
ミニはテツロウをそっとエミへ差し出した。
「はい!」
「エミお姉ちゃん♪」
「兄ちゃんお願い!」
「え?」
エミは少し驚きながらも、
大事そうにテツロウを受け取った。
「もう……
ミニったら」
そう言いながらも、
その表情はどこか嬉しそうだ。
テツロウは苦笑する。
「俺は観察対象か?」
「うん♪」
ミニは満面の笑みで頷いた。
「兄ちゃんの表情、
絶対面白いもん♪」
「面白くないぞ」
「えへへ♪」
そのやり取りを見て、
リウスも小さく笑った。
そして――
ガタン。
ソリが小さく揺れる。
四頭の巨大なトナカイ模型が、
ゆっくりと歩き始めたのだ。
ゴトン。
ゴトン。
重厚な足音が響く。
ソリは巨大な鉄扉の奥へと進み始めた。
「出発ですね♪」
エミはそう言いながら、
腕の中のテツロウを少しだけ抱え直した。
やがて。
ソリは最初の回廊へ入る。
その瞬間――
テツロウは思わず息を呑んだ。
「……っ」
無数の光。
赤。
青。
緑。
金。
色とりどりのイルミネーションが、
回廊の両側を埋め尽くしている。
さらに頭上には、
巨大な光のアーチ。
ソリが進むたびに、
次々と色を変えながら輝いていた。
まるで。
星空の中を進んでいるようだった。
エミがテツロウを抱えながら、
前方を指差した。
「兄さん、
見てください」
テツロウの前方には――
巨大なクリスマスツリー。
無数の光に彩られた姿が、
ゆっくりと近づいてくる。
そして。
背後からは、
エミの優しいぬくもりが伝わってくる。
幻想的な景色。
安心感のある温もり。
その両方に包まれながら、
テツロウは思わず目を見開いた。
「すごいな……」
自然と声が漏れる。
巨大なイルミネーションは、
さらに輝きを増していくのだった。
しばらくして。
ソリは次の回廊へと進んでいく。
エミは腕の中のテツロウへ視線を落とした。
「兄さん」
「次はリウスですよ」
「え?」
テツロウが顔を上げる。
すると。
隣の席に座っていたリウスが、
小さく微笑んだ。
「少し失礼しますね」
そう言うと、
リウスは両手を差し出した。
エミも頷く。
「お願いします」
そして。
大事なものを受け渡すように、
テツロウをそっとリウスへ託した。
ふわり。
視界が移動する。
「どうですか?」
リウスが優しく問いかける。
「楽しんでいただけていますか?」
「ああ」
テツロウは頷いた。
「想像していた以上だよ」
その返事を聞いて、
リウスも嬉しそうに微笑む。
すると。
どこか楽しそうな声が聞こえてきた。
「兄ちゃん、
次はどんな顔するかなー♪」
ミニだ。
どうやらまだ、
テツロウの反応を観察する気満々らしい。
「ミニ……」
エミは苦笑する。
ソリはゆっくりと進み続ける。
やがて。
前方には、
無数の星々が輝く新たな回廊が見え始めていた。
その頃。
リウスはテツロウを優しく持ち上げる。
そして。
自分の被っているサンタ帽を取ると、
リウスはテツロウを
自分の頭の上へそっと添えた。
「テツ兄」
リウスが静かに声を掛ける。
「そこからなら、
星も近く見えるのではありませんか?」
テツロウは思わず周囲を見渡した。
確かに。
先ほどまでよりも視点が高い。
頭上には無数の星々。
左右にも、
光り輝く星の装飾が並んでいる。
まるで。
星空の中を進んでいるようだった。
「すごいな……」
思わず声が漏れる。
テツロウはリウスの頭の上で支えられながら、
輝く星々を堪能していた。
やがて。
ソリは星の回廊を抜け、
次の回廊へ差しかかろうとしていた。
リウスは頭の上のテツロウを優しく下ろす。
「ピスカ姉さん。
テツ兄をお願いします」
そして。
前方席のピスカへ、
大切なものを受け渡すようにテツロウを託した。
「はい♪」
ピスカは優しく微笑む。
「テツロウちゃん」
「クリスマスを楽しみましょうね♪」
ソリはさらに進んでいく。
すると。
少しずつ空気が変わり始めた。
ひらり。
白いものが舞う。
雪だ。
無数の雪が、
回廊の中を静かに舞い始めていた。
ピスカはテツロウを優しく抱え直す。
そして。
自身の深い温もりに包まれた特等席へ、
そっと添えた。
「テツロウちゃん♪」
「ここなら暖かいでしょ?」
テツロウは少し照れながらも、
伝わってくる優しいぬくもりを感じていた。
その様子を見ていたミニは、
前方のピスカ越しにテツロウを眺めながら、
楽しそうに笑った。
「やっぱり♪」
「兄ちゃんの表情、
面白いもん♪」
ピスカは自身の特等席にいるテツロウを
そっと覗き込んだ。
「テツロウちゃん♪」
「目を背けないで、
もっと楽しみましょうよ」
そう言うと、
ピスカは優しく微笑む。
「ミニちゃんも、
そう言っていますよ♪」
そして。
少し悪戯っぽい表情を浮かべながら、
後方のミニへ振り返った。
「ね、ミニちゃん♪」
すると。
ミニは嬉しそうに頷く。
「うん♪」
「ピスカお姉ちゃん♪」
「兄ちゃんなら、
ちゃんと楽しんでるよ!」
「ミニならわかるもん♪」
テツロウは思わず苦笑した。
どうやら。
自分が思っている以上に、
表情へ出ていたらしい。
イルミネーション。
星々の回廊。
舞い落ちる雪。
そして。
自分を大切そうに見守る仲間たち。
確かに。
楽しくないはずがなかった。
少し照れくさくなりながらも、
テツロウは静かに頷く。
「……そうかもな」
その言葉を聞いて。
ミニは嬉しそうに笑い。
ピスカも優しく微笑んだ。
やがて。
雪の回廊の先に、
明るい光が見え始める。
どうやら出口らしい。
舞い落ちていた雪も、
少しずつ少なくなっていく。
「そろそろ終わりみたいですね♪」
ピスカはそう言うと、
自身の特等席にいるテツロウへ視線を向けた。
「楽しかったですか?」
「ああ」
「すごくな」
テツロウは素直に頷く。
その返事を聞いて、
ピスカも嬉しそうに微笑んだ。
「それはよかったです♪」
そして。
ピスカはテツロウを優しく抱え上げる。
「エミちゃん」
「お願いします♪」
「はい」
エミもそっと両手を差し出した。
大切なものを受け取るように。
丁寧に。
本当に丁寧に。
テツロウを受け取る。
「兄さん」
エミは優しく微笑んだ。
「おかえりなさい」
その言葉に、
テツロウは思わず苦笑した。
まるで。
長い旅から帰ってきたような気分だった。
やがて。
ソリはゆっくりと速度を落としていく。
ゴトン。
ゴトン。
四頭のトナカイ模型も足を止めた。
そして――
巨大迷宮の入口前へと戻ってくる。
「戻ってきましたね♪」
ピスカが微笑む。
そこには。
待機していたエアリたちの姿があった。
エアリ。
リオ。
タリア。
そしてリブラ。
四人は戻ってきたソリを見上げている。
「おかえりなさい♪」
エアリが手を振った。
「ただいまです♪」
ピスカも笑顔で応える。
すると。
ゴゴゴゴゴ……
どこからともなく低い振動音が響いた。
「ん?」
テツロウは思わず周囲を見渡す。
その時だった。
巨大迷宮入口の脇にあった壁面が、
ゆっくりと左右へ開いていく。
そして――
その奥から。
巨大な下り階段が姿を現した。
「階段……?」
リブラが目を丸くする。
タリアも端末へ視線を落とした。
「新たなルートを確認」
「どうやら、
こちらへ進むようですね」
全員の視線が階段へ集まる。
階段は地下へ続いていた。
先は見えない。
だが。
淡い光だけは見えている。
「行ってみましょうか♪」
エアリが微笑む。
一行は巨大な階段を下り始めた。
やがて。
地下空間へ到着する。
そこは想像以上に広かった。
天井は遥か上。
まるで巨大な地下駅のような空間だった。
そして――
テツロウは思わず目を見開く。
「今度は……ロープウェイか」
地下空間の天井付近。
太いロープに吊り下げられた
巨大なロープウェイが静かに停まっていた。
窓は大きく。
内部には二人掛けの座席が二組。
どうやら四人乗りらしい。
「わあ……」
リブラが目を輝かせる。
「今度は空の旅ですね♪」
エアリも楽しそうに笑う。
リオはロープウェイを見上げながら頷いた。
「どうやら、
まだ終わりではないようですね」
その言葉に。
全員が再びロープウェイへ視線を向ける。
巨大迷宮。
スターライト。
そして。
まだ見ぬ景色。
クリスマスイブの冒険は、
まだ続くらしい。
■第八章 第七話へ続く
第八章 第六話をお読みいただき、
ありがとうございました。
今回は、
巨大で不思議な回廊を巡るお話となりました。
イルミネーションや星々、
そして雪に彩られた景色を、
楽しんでいただけましたら幸いです。
クリスマスイブの冒険は、
まだまだ続いていきます。
※挿絵はAIを用いて作成しています。
AIの仕様や制約により、
イメージ通りに再現できていない部分もありますが、
あくまで参考イメージとして
補完しながらお楽しみいただければ幸いです。
※作品の感想なども
お聞かせいただけましたら幸いです。
今後の創作の励みになります。
次回 第八章 第七話は
9月25日(金)公開予定です。




