第八章 不思議な聖夜の遊園地③
第八章 第三話です。
観覧車を終えたテツロウは、
次の案内役であるミニとリブラのもとへ。
クリスマスイルミネーションに包まれた遊園地で、
今度はバイキングへ向かいます。
不思議な聖夜の探索を、
お楽しみいただければ幸いです。
■第八章 第三話
クリスマスイルミネーションに包まれた、
観覧車。
アトラクション自体は、
いつもの遊園地と変わらない。
だが――
その横に立つリオやピスカは、
観覧車よりもさらに大きかった。
やはり、
どこか現実感が薄かった。
「テツロウちゃん♪
次のアトラクション、
行きましょうね~」
ピスカが、
優しそうに微笑む。
そして、
その大きな体をゆっくりとかがませると、
テツロウをそっと掌へ乗せた。
巨大な手のひら。
柔らかな温もり。
ピスカは、
そのままテツロウを胸元近くへ寄せる。
「テツロウちゃん♪
もっと触ったり、
見たりしていただいていいんですよ~?」
「いや、
そういう言い方はどうなんだ……」
テツロウは苦笑する。
するとリオも、
くすりと微笑んだ。
「お兄様は、
もっと大胆になってもいいんですよ?」
「リオまでなに言ってるんだ……」
しかし二人とも、
完全に楽しんでいる様子だった。
観覧車の余韻が残る中、
ピスカはテツロウを優しく抱えたまま歩き出す。
巨大なサンタ衣装が揺れるたび、
イルミネーションの光が反射して輝く。
視界いっぱいへ広がる、
クリスマスイブの遊園地。
その時だった。
「兄ちゃん!」
「テツロウ様~♪」
明るく元気な声が響く。
次の瞬間――
ピスカに抱えられているテツロウのもとへ、
巨大なミニとリブラが駆け寄ってきた。
ミニは、
嬉しそうに身を乗り出す。
「兄ちゃん!
観覧車どうだった!?」
「どうって言われてもな……」
テツロウは、
思わず苦笑する。
するとリブラが、
楽しそうにテツロウを覗き込んだ。
「テツロウ様、
お顔真っ赤ですよ~?」
「そ、そんなことないって」
「ふふ♪
でも、
すっごくドキドキしてた顔してました~♪」
リブラは、
どこか面白そうだった。
するとピスカが、
くすりと微笑む。
「テツロウちゃん、
次はリブラちゃん達の番みたいね~♪」
そう言うと、
ピスカは掌の上のテツロウを、
そっとリブラの方へ差し出した。
リブラも、
両手を添えるようにして受け取る。
「ありがとうございます~♪」
巨大な掌から巨大な掌へ。
テツロウは、
慎重に受け渡されていく。
そしてリブラは、
受け取ったテツロウを嬉しそうに見つめると、
そっと自分の近くへ寄せた。
柔らかな桃色の髪。
優しい香り。
そして、
すぐ近くに広がるリブラの笑顔。
「テツロウ様~♪
それでは、
次のアトラクションへご案内しますね~♪」
「次は何なんだ?」
テツロウが尋ねると、
ミニが待ってましたとばかりに手を挙げる。
「すっごく楽しいやつだよ!」
「だから、
その言い方が不安なんだって……」
テツロウは苦笑する。
しかし、
ミニもリブラも楽しそうだった。
その背後では、
遊園地のシンボルらしいクリスマスツリーが、
色とりどりの光を放っていた。
流れるクリスマスソング。
そして、
次々と変わっていくアトラクション。
ミニは、
待ちきれない様子で手を振る。
「兄ちゃん!
こっちこっち!」
そう言うと、
ミニはテツロウ達を先導するように歩き出した。
リブラも、
嬉しそうについていく。
「テツロウ様~♪
次はきっと気に入りますよ~♪」
「そうなのか?」
「はい~♪
すっごく楽しいです~♪」
しかし、
その言葉に安心感はなかった。
むしろ、
少し嫌な予感が増した。
やがて一行は、
広場の奥へ到着する。
そこには――
大きな船。
そして、
それを支える支柱。
クリスマス装飾で彩られた、
大型バイキングが設置されていた。
「これか……」
テツロウは見上げる。
バイキングは、
左右へ大きく揺れていた。
船が最高地点へ到達する。
しかし――
それでも、
巨大なミニやリブラの高さから見れば、
まだ膝下ほどの位置に過ぎない。
「本当に大きいな……」
テツロウは、
改めて二人を見上げた。
「テツロウ様、
こちらが乗り場になります~♪」
リブラはゆっくりとしゃがみ込み、
バイキングの乗り場へ
テツロウを優しく降ろした。
「ありがとう、リブラさん」
「どういたしまして~♪」
リブラは嬉しそうに微笑む。
テツロウは、
バイキングの乗り場へ向かおうとして――
ふと足を止めた。
乗り場の入口から見上げると、
そこには優しく微笑むリブラの姿。
クリスマスの灯りに照らされたサンタ衣装。
そして、
風に揺れる衣装の裾から、
すらりと伸びた脚が時折見え隠れしていた。
イルミネーションの光を受けて、
その姿はどこか幻想的にも見える。
「……」
テツロウは思わず見上げたままになる。
近くで見ると、
やはり大きい。
観覧車よりも。
バイキングよりも。
リブラの存在そのものが、
この遊園地の景色の一部になっているようだった。
すると――
「兄ちゃん!」
ミニの声が飛んでくる。
「リブラちゃんの脚を眺めてないで、
早く乗ってよ~!」
「なっ!?」
テツロウは慌てて視線を逸らした。
「ち、違うって!」
「ほんとかな~?」
ミニは楽しそうに笑う。
リブラも、
くすりと微笑んだ。
「ふふ~♪
テツロウ様なら、
いっぱい見ていただいても大丈夫ですよ~♪」
「だから、
そういう言い方をするなって……」
テツロウは思わず額を押さえる。
だが、
心臓が少しだけ速くなっているのは自覚していた。
巨大なミニ達と過ごすクリスマス。
イルミネーションに彩られた遊園地。
そして、
優しく微笑むリブラ。
どうにも、
落ち着かない。
「ほらほら!
兄ちゃん!」
ミニが、
バイキングを指差す。
「早く乗ろうよ!」
「わかった、わかった」
テツロウは苦笑しながら、
バイキングの乗り場へ向かった。
その頭上では、
ミニとリブラが楽しそうに見守っていた。
テツロウは、
バイキングへ乗り込む。
安全バーが下ろされる。
すると、
ミニとリブラは振り子の両端へ移動した。
ミニは、
楽しそうにしゃがみ込む。
「お兄ちゃーん!
ちゃんと見えてるー?」
反対側では、
リブラも膝をつきながら手を振っていた。
「テツロウ様~♪
頑張ってくださいね~♪」
「応援されるアトラクションなのか、
これ……」
テツロウは苦笑する。
その直後。
ゴウン――
バイキングの揺れは、
徐々に大きくなっていく。
左へ。
右へ。
再び左へ。
振り子の動きに合わせ、
テツロウの視界も大きく流れていった。
最高地点へ近づく。
その先には、
しゃがみ込んだミニの姿。
「お兄ちゃーん!」
元気いっぱいに手を振っている。
バイキングが上昇するにつれて、
テツロウの視線は自然と下から上へ移っていく。
サンタブーツ。
赤い衣装。
白いファー。
そして、
笑顔でこちらを見下ろすミニの顔。
「見えてるー!?」
「見えてる見えてる!」
返事をした直後、
今度は反対側へ振り下ろされた。
身体がふわりと浮く。
そして視界には、
今度はリブラが現れる。
リブラは膝をつきながら、
優しそうに微笑んでいた。
「テツロウ様~♪
大丈夫ですか~?」
バイキングが近づくたび、
その姿はどんどん大きくなる。
巨大なサンタ衣装。
柔らかなシルエット。
風に揺れる桃色の髪。
そして、
イルミネーションの光を受けた優しい笑顔。
「本当に近いな……」
テツロウは思わず呟く。
再び反対側へ。
ミニ。
そしてリブラ。
振り子が繰り返されるたび、
視界いっぱいに二人の姿が流れていく。
風も少しずつ強くなっていた。
衣装の裾や髪が揺れ、
クリスマスの飾りがきらきらと光る。
そのたびに、
テツロウはどこを見ればいいのか分からなくなる。
バイキングの揺れで心臓が速いのか。
それとも――
巨大な二人に見守られているせいなのか。
自分でもよく分からなかった。
「兄ちゃん!
もっと上まで来るかなー!」
「テツロウ様~♪
頑張ってくださいね~♪」
楽しそうな二人の声が、
クリスマスの夜空へ響いていた。
その時だった。
ミニが、
すっと立ち上がる。
しゃがんでいた時とは違い、
その顔はさらに高い位置へ移動した。
バイキングが振り切る先には、
ミニの膝が見えている。
見上げれば、
サンタ衣装の裾が風に揺れていた。
「うわっ……」
テツロウは思わず息を呑む。
バイキングが大きく揺れるたび、
巨大なミニとの距離感が変わる。
近づいたと思えば、
次の瞬間には離れていく。
その繰り返しだった。
するとミニは、
楽しそうに笑った。
「兄ちゃん!
もっと楽しもうね!」
次の瞬間――
ミニはバイキングの船体へそっと手を添える。
揺れていた振り子が、
ゆっくりと速度を落としていく。
「えっ?」
テツロウが驚く。
そして――
バイキングが止まった先には、
巨大なミニの笑顔があった。
「どう?
楽しいでしょ!」
満面の笑み。
クリスマスイルミネーションを背にした、
巨大なその姿に、
テツロウは思わず苦笑する。
「普通の遊園地じゃ、
こんな体験できないよな……」
「でしょー!」
ミニは嬉しそうだった。
「兄ちゃん!
次はリブラちゃんの番だよー!」
ミニは楽しそうに笑いながら、
そっとバイキングを押し戻した。
再び振り子が動き出す。
左へ。
右へ。
そして――
今度はリブラのいる側へ大きく振れていく。
リブラは、
優しく微笑みながらその様子を見守っていた。
やがて――
ふわり。
リブラもゆっくりと立ち上がる。
「テツロウ様~♪」
その声と共に、
視界の先で巨大なリブラの姿がさらに大きくなる。
立ち上がったことで、
その顔はずっと高い位置へ移動していた。
バイキングが最高地点へ達しても、
ようやく視線が膝の辺りへ届く程度だ。
「やっぱり大きいな……」
テツロウは思わず呟く。
風が吹く。
桃色の髪が揺れる。
サンタ衣装のマントや裾も、
ゆっくりと風になびいていた。
クリスマスイルミネーションの光を受けて、
その姿はどこか幻想的に見える。
バイキングは再び振れる。
その度に、
リブラの姿が近づいたり離れたりする。
まるで巨大な景色の中を、
自分だけが行き来しているようだった。
「テツロウ様、
楽しんでますか~♪」
優しい声。
柔らかな笑顔。
その全てが、
なぜだか落ち着かない。
観覧車の時とは違う。
ミニの元気な勢いとも違う。
リブラの近くにいると、
妙に意識してしまう。
「まあ……
楽しんでるよ」
そう答えると、
リブラはさらに嬉しそうに微笑んだ。
「それなら良かったです~♪」
その笑顔を見た瞬間。
テツロウの心臓は、
また少しだけ速くなるのだった。
やがて、
バイキングの揺れがゆっくりと小さくなっていく。
ミニが、
船体へそっと手を添えたのだ。
「兄ちゃん!
楽しかった?」
「まあ、
楽しかったけど……」
テツロウが答えると、
ミニは満足そうに笑う。
「よかった!」
そして――
ミニは支柱へ手を伸ばした。
「じゃあ、
次行こう!」
「次?」
テツロウが首を傾げる。
するとミニは、
当たり前のように言った。
「リブラちゃん!
兄ちゃんが乗ってる船、
外して持っていこう!」
「はい~♪」
リブラは、
にこにこと頷いた。
次の瞬間――
ガコン。
支柱から外されたバイキングの船体が、
ゆっくりと持ち上げられる。
「うわっ!?」
テツロウは思わず手すりを掴んだ。
しかし、
ミニとリブラは気にした様子もない。
「次も楽しみだね!」
「楽しみですね~♪」
二人は嬉しそうに笑う。
ミニは船体の片側を支えながら、
そのまま歩き出した。
リブラも反対側を支え、
まるで大切な荷物でも運ぶかのように
慎重についていく。
テツロウの乗る船は、
ゆっくりと地面から離れていった。
視界が少し高くなる。
クリスマスイルミネーション。
色とりどりの灯り。
そして、
楽しそうに微笑むミニとリブラ。
「普通なら、
降りて移動すると思うんだけどな……」
テツロウは苦笑する。
「えー?
そのままの方が楽しいじゃん!」
ミニは元気よく答えた。
「テツロウ様も、
楽しそうでしたよ~♪」
リブラも優しく微笑む。
「そう見えたか?」
「はい~♪」
即答だった。
テツロウは思わず苦笑する。
その頭上では、
クリスマスイルミネーションが輝いていた。
そして――
テツロウを乗せた船は、
次のアトラクションへ向けて
ゆっくりと運ばれていくのだった。
■第八章 第四話へ続く
第八章 第三話をお読みいただき、
ありがとうございました。
今回は、
ミニとリブラによるバイキングのお話でした。
観覧車とはまた違う、
少し賑やかで不思議なスケール感を
楽しんでいただけましたら幸いです。
次回は、
さらに次のアトラクションへ向かいます。
※挿絵はAIを用いて作成しています。
AIの仕様や制約により、
イメージ通りに再現できていない部分もありますが、
あくまで参考イメージとして
補完しながらお楽しみいただければ幸いです。
※作品の感想なども
お聞かせいただけましたら幸いです。
今後の創作の励みになります。
次回 第八章 第四話は
9月15日(火)公開予定です。




