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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な虚空の中の宴
56/70

第七章 不思議な虚空の中の宴⑥

いよいよ忘年会が始まります。


料理に、乾杯に、賑やかな仲間達。


そして今回は、タリアへの少し遅れた誕生日祝いも。


年末らしい温かな時間をお楽しみください。


【登場人物】

・青星テツロウ

・赤井エアリ

・青星リオ

・紫雲タリア

・青星エミ

・青星ミニ

・銀水リウス

・桃野リブラ

・銀水ピスカ

■第七章 第六話


 巨大なエアリの両腕に抱えられながら、

 テツロウは忘年会会場へ向かっていた。


 冬の平原を抜けた先。


 そこに見えてきたのは、

 見慣れたログハウスだった。


 暖色の灯りが窓から漏れ、

 冬の夕暮れの中で暖かく輝いている。


 「もう始まってるみたいですね♪」


 エアリが優しく微笑む。


 「だな……なんか、いい匂いもするし」


 「リウスちゃんとエミちゃん、

  かなり張り切っていましたから♪」


 やがてエアリは、

 ログハウス前へゆっくり屈み込んだ。


 ガチャリ、と扉が開く。


 「兄さん、お疲れ様です!」


 「テツ兄、お疲れ様~♪」


 迎えに出てきたのは、

 エプロン姿の巨大なエミとリウスだった。


 エミはいつものように柔らかく微笑み、

 リウスはどこか楽しそうに手を振っている。


 二人の視線は、

 エアリの胸元近くにいるテツロウへ向けられていた。


 「お、お疲れ……」


 少し照れながら返事をするテツロウ。


 エアリはくすりと笑いながら、

 そのままログハウスの中へ入っていく。


 中へ入った瞬間、

 暖かな空気がテツロウを包み込んだ。


 広々とした大広間。


 中央の大テーブルには、

 すでに料理や飲み物が並び始めている。


 鍋。


 揚げ物。


 サラダ。


 ジュース類。


 「お兄様、お疲れ様です」


 「テツロウ氏、お疲れです」


 テーブルの向こう側では、

 リオとタリアも微笑みながら迎えてくれる。


 タリアはまだ普段着姿だったが、

 少し落ち着かない様子にも見えた。


 柔らかな灯りの中。


 青星家の忘年会が、

 静かに始まろうとしていた。


 エアリは、テーブルの一角に用意されていた

 テツロウ用の席へ、そっと彼を降ろした。


 するとリオが、

 小さなグラスを両手で持ってやって来る。


 「お兄様、こちらをどうぞ♪」


 テツロウ用に用意された、

 小さなビールグラスだった。


 「お、ありがと」


 受け取った瞬間。


 エミがぱん、と手を合わせる。


 「兄さん。

  では、挨拶してくださいね♪」


 「あー……はいはい」


 テツロウは苦笑しながら立ち上がる。


 周囲には、

 巨大な皆の顔。


 柔らかな灯り。


 冬の料理の匂い。


 どこか、少し不思議で。


 でも心地よい空間だった。


 テツロウは小さく息を吸い込む。


 「みんな。

  今年も一年、お疲れさま」


 そしてグラスを掲げた。


 「――乾杯!」


 『かんぱーい!!』

挿絵(By みてみん)

 次の瞬間。


 テツロウにとっては巨大なグラス達が、

 一斉に掲げられる。


 ガチャン、と楽しげな音が響いた。


 すると。


 「兄ちゃん、これ覚えてるー?」


 ミニが嬉しそうに差し出してきたのは、

 透き通ったピンク色のソーダ。


 その上には、

 丸いバニラアイスが浮かんでいる。


 「……嫌な予感しかしないんだけど」


 テツロウが引き気味に呟く。


 だがミニは、

 楽しそうな笑顔のまま、

 そのアイスをぐいぐい近づけてきた。


 「ちょ、待っ――」

挿絵(By みてみん)

 すると。


 エミが素早くテツロウを抱きかかえる。


 「ミニちゃん。

  また兄さんをアイスまみれにする気ですか?」


 「えへへー♪」


 テツロウは、

 エプロン姿のエミの腕の中で、

 なんとも言えない表情になっていた。


 その頃。


 「こんばんはー!

  遅くなりました~♪」


 玄関側から、

 明るい声が響いてくる。


 「リブラさん!」


 ログハウスへ入ってきたのは、

 桃野リブラだった。


 リオやタリアと同じ大学へ通いながら、

 アイドル活動もしている少女だ。


 冬用コート姿のリブラは、

 どこか外の冷たい空気をまとったまま、

 にこにこと手を振っている。


 「ごめんなさい~。

  少しお仕事押しちゃって」


 「全然大丈夫ですよ♪」


 エアリが笑顔で迎える。


 リブラはふと、

 エミのエプロンへ大事そうに抱えられている

 テツロウへ視線を向けた。


 そして、くすりと笑う。


 「テツロウ様は、

  いつも皆さんに包まれていますね♪」


 「……まあ、否定はできない」


 テツロウが苦笑する。


 するとミニが、

 楽しそうに割り込んできた。


 「兄ちゃん、みんなのお気に入りだからねー♪」


 すると。


 「テツ兄。

  こちらも食べて」


 リウスが、小さな皿を持ってやって来た。


 エプロン姿のリウスは、

 少し得意げな表情をしている。


 皿の上に乗っていたのは――


 オムライス。


 それも、文化祭で出されていたものと

 よく似たデザインだった。


 「おお……これ」


 テツロウが少し目を丸くする。


 黄色い卵の上には、

 ケチャップで文字が書かれていた。


 『テツ兄、今年もお疲れさま~』


 「文化祭の時の、再現?」


 「ん。

  せっかくだから」


 リウスは少し照れたように視線を逸らす。


 「……料理担当だし」


 「いや、かなり嬉しいんだけど」


 テツロウが笑うと、

 リウスも少し安心したように小さく笑った。


 するとミニが、

 横からひょこっと顔を出す。


 「リウスちゃん、

  また“もえもえキュン”したのー?」


 「してない」


 「絶対したよねー?」


 「してない」


 即答だった。


 「もえもえキュン……?」


 リブラが、不思議そうに首を傾げる。


 「何ですかそれ?

  かわいい響きですね♪」


 するとエミが、

 くすくす笑いながら説明した。


 「料理を美味しくする、

  おまじないみたいなものですよ♪」


 「えー♪

  楽しそうです~!」


 リブラは目を輝かせる。


 「せっかくだから、

  一緒にやってみません?」


 「えぇ……」


 リウスが露骨に嫌そうな顔をする。


 だがエミは、

 完全に乗り気だった。


 「忘年会ですし♪

  みんなでやりましょうか♪」


 「やろやろー!」


 ミニまで元気よく便乗する。


 リウスは助けを求めるように、

 そっとテツロウを見る。


 だが。


 「……まあ、ちょっと見てみたいかも」


 「テツ兄まで……」


 完全に逃げ道を失ったらしい。


 リウスは小さくため息をついた。


 その様子に、

 リブラが楽しそうに笑う。


 「じゃあ、みんなでやりましょう~♪」


 そして。


 エミ、リウス、リブラの三人が、

 テーブル越しに並ぶ。


 巨大な三人が身を寄せ合う光景は、

 なかなか迫力があった。


 「それでは~♪」


 エミが楽しそうに口を開く。


 「お料理が美味しくなるように――」


 リブラもすぐに合わせる。


 「せーのっ♪」


 リウスは、

 ものすごく恥ずかしそうな顔をしながら――


 「……も、もえもえ……」


 そして三人一緒に、


 『もえもえ、キュン♪』


 ぱちん、と。


 エミとリブラが楽しそうに指でハートを作る。


 リウスも、

 少し遅れて小さく同じ動きをした。


 数秒の静寂。


 そして。


 「…………」


 リウスは無言で顔を伏せた。


 耳まで赤い。


 「リウスちゃんかわいー♪」


 「すっごくアイドルっぽかったです~♪」


 「……忘れて」


 テツロウは、

 そんな三人を見上げながら苦笑する。


 「いや……

  なんだかんだ、平和だな……」


 テツロウは苦笑しながら、

 賑やかな皆を見上げる。


 暖かな灯り。


 楽しそうな笑い声。


 鍋の湯気。


 冬のログハウスには、

 穏やかな時間が流れていた。


 そして――


 忘年会の夜は、

 ゆっくりと進んでいく。


 しばらくして。


 料理も一通り並び終え、

 皆が少し落ち着き始めた頃だった。


 リオが、ふと思い出したように口を開く。


 「そういえば――」


 その声に、

 タリアが首を傾げる。


 「ん?」


 リオは楽しそうに微笑みながら、

 テツロウへ視線を向けた。


 「お兄様。

  そろそろ、よろしいのではありませんか?」


 「……あー」


 テツロウは苦笑する。


 するとミニが、

 すぐに目を輝かせた。


 「えっ、なになにー!?」


 「もしかして、サプライズですか~?」


 リブラまで身を乗り出してくる。


 そんな中。


 タリアだけは、

 少し不思議そうな顔をしていた。


 「……?」


 テツロウは、

 その様子を見ながら小さく笑う。


 そして。


 リオへ軽く頷いた。


 「リオ、頼む」


 「はい♪」


 リオは嬉しそうに立ち上がると、

 部屋の隅へ置かれていた紙袋をそっと持ち上げた。


 その瞬間。


 タリアが目を丸くする。


 「え……

  それ、まさか――」


 「タリアちゃん」


 テツロウは、

 少し照れながら口を開いた。


 「誕生日、おめでとう」


 ログハウスの中へ、

 一瞬静かな空気が広がる。


 次の瞬間――


 『おおーっ!!』


 ミニとリブラの声が、

 同時に響いた。


 「サプライズだったんですねー!」


 「タリアちゃん、おめでとー!」


 ぱちぱちと拍手が広がる。


 だが当のタリアは、

 まだ少し呆然としていた。


 「え……

  いや、ちょっ……」


 珍しく言葉が追いついていない。


 そんなタリアの前へ、

 リオがそっと紙袋を差し出す。


 「お兄様と一緒に選びました♪」


 「……テツロウ氏と?」


 「まあ、ほとんどリオ任せだったけどな」


 「お兄様♪」


 リオが少しだけ嬉しそうに笑う。


 タリアは恐る恐る紙袋を受け取ると、

 中を覗き込んだ。


 そして――


 「…………」


 数秒、固まる。


 黒系のニット。


 紫色のスカート。


 黒タイツ。


 ショートブーツ。


 さらに、

 自分用に合わせられたゴーグルまで入っていた。


 「えっ……

  いや、これ……」


 タリアが明らかに動揺する。


 「めちゃくちゃオシャレじゃないですかこれ……!」


 「似合いそうだったので♪」


 リオが優しく微笑む。


 するとミニが、

 すぐに身を乗り出した。


 「タリアちゃん!

  着てみてよ着てみてよー!」


 「見たいです~♪」


 リブラも完全に乗り気だった。


 「いやいやいや!

  今ここで!?」


 珍しく慌てるタリア。


 だが。


 「タリアさん。

  絶対似合うと思いますよ♪」


 エアリまで笑顔で追撃する。


 さらにエミも、

 くすくす笑いながら頷いた。


 「兄さんも見たいですよね?」


 「え、俺に振るの!?」


 全員の視線が集まる。


 テツロウは少し困りながらも、

 苦笑した。


 「……まあ。

  似合うとは思う」


 その言葉に、

 タリアの顔が一気に赤くなる。


 「~~っ……!」


 「タリアさん、顔真っ赤ですわ♪」


 「リ、リオ!?」


 周囲から笑い声が広がる。


 するとリオは、

 手の中のテツロウを、

 優しく掌へ乗せ直した。


 まるで大事な宝物を扱うような手つき。


 そして――


 そのままタリアのすぐ近くへ、

 そっと運んでいく。


 「お兄様。

  ちゃんと見て差し上げてくださいね♪」


 「いや、だから近いって――」


 だが。


 タリアは、

 少し照れた様子のまま、

 新しいニットへ袖を通していく。


 「……テツロウ氏。

  せっかくですし、ちゃんと見てください」


 「うっ……」


 視線を逸らそうとするテツロウ。


 しかしリオは、

 そんなテツロウを逃がさない。


 「お兄様♪」


 くるり、と。


 リオは掌の上のテツロウの身体を、

 優しく反転させる。


 再び視線の先には――

挿絵(By みてみん)

 眼前へ広がる巨大なタリア。


 冬用の柔らかなニット。


 揺れる銀紫色の髪。


 少し赤くなった頬。


 そして、

 照れながらもこちらを見ている視線。


 タリアは、

 どこかくすぐったそうに笑った。


 「……どうです?

  ちゃんと似合ってますか?」


 「いや……

  だから近いって……」


 「ふふ♪

  お兄様、ちゃんと見て差し上げないと♪」


 リオは楽しそうに微笑みながら、

 さらに少しだけタリアの近くへ寄せた。


 「リオ!?」


 周囲では、

 エミやリブラ達の楽しそうな笑い声が響いていた。


 暖かな灯りの中。


 冬の宴は、

 まだゆっくりと続いていく。


 鍋を囲みながら、

 皆で料理を取り分けたり。


 リブラがアイドル活動の話をしたり。


 ミニがリウスへちょっかいを出したり。


 エアリが笑顔で場をまとめたり。


 暖かなログハウスには、

 穏やかな笑い声が絶えず響いている。


 そして。


 冬の夜は、

 少しずつ深まっていった。


 その時だった。


 コンコン――


 ログハウスの扉が軽くノックされる。


 「こんばんは~♪

  遅くなりましたわ~」


 聞き覚えのある、

 柔らかな声。


 扉が開き――


 そこへ現れたのは、

 ロングコート姿の銀水ピスカだった。


 外の冷たい空気をまといながら、

 ピスカは優しく微笑んでいる。


 「ピスカさん!」


 「こんばんはですわ♪」


 エミやリオ達が、

 嬉しそうに迎える。


 ピスカはそんな皆を見渡しながら、

 くすりと笑った。


 「ふふ♪

  とても楽しそうですわね」


 そして。


 その視線は、

 リオの手の中にいるテツロウへ向けられる。


 「テツロウちゃんも、

  楽しんでいますか?」


 「まあ、かなり賑やかだけどな……」


その言葉に、

 ピスカは優しく微笑んだ。


 冬の忘年会は、

 まだまだ続いていく――


 鍋の湯気。


 暖かな灯り。


 楽しそうな笑い声。


 ログハウスの中には、

 穏やかな冬の時間が流れていた。


 楽しい時間というものは、

 過ぎるのが早い。


 気づけば、時計の針はかなり進んでいた。


 「……ん。

  もうこんな時間か」


 リウスが時計を見ながら、小さく呟く。


 その言葉に、

 ピスカも優しく頷いた。


 「ふふ♪

  高校生の方たちは、

  そろそろここまでですかね♪」


 「えーっ」


 ミニが少し不満そうに声を漏らす。


 「もっと兄ちゃんと一緒にいたかったなー……」


 そんなミニへ、

 エミがくすくす笑った。


 「ミニちゃん。

  明日も会えますよ♪」


 そして――


 エミは、

 少しだけ寂しそうにテツロウへ視線を向けた。


 エプロン姿のまま、

 どこか名残惜しそうに微笑む。


 「……本当は、

  もう少し兄さんと一緒にいたいですけど」


 そう言いながら、

 エミは小さく笑う。


 そして。


 エアリとリオへ視線を向けた。


 「エアリさん。

  リオ姉さん」


 エミは大事そうに、

 小さなテツロウを見つめる。


 「兄さん、お願いしますね♪」


 「はい♪」


 「お任せくださいませ♪」


 エアリとリオが、

 優しく微笑みながら頷いた。


 するとミニも、

 名残惜しそうに手を振る。


 「兄ちゃん、またねー!」


 「テツ兄。

  飲みすぎないように」


 リウスも、

 少しだけ苦笑しながらそう言った。


 こうして――


 高校生の三人は、

 少し後ろ髪を引かれながら、

 一足先に忘年会を切り上げていく。


 ログハウスの扉が静かに閉まり。


 部屋の中には、

 少しだけ落ち着いた空気が残された。


 しばらくの間。


 エミ達が使っていた食器を片づけたり、

 鍋を少し整理したりと、

 皆でゆったり後片づけを進めていく。


 「タリアさん、それお願いします♪」


 「了解です」


 「リブラさん、そっちは大丈夫ですか?」


 「はーい♪」


 賑やかだった大広間も、

 少しずつ静かな夜の空気へ変わっていった。


■第七章 第七話へ続く

第七章 第六話をお読みいただき、

ありがとうございました。


今回は忘年会 前半でした。


賑やかな料理の時間から始まり、

タリアへの誕生日プレゼント、

そしてピスカさんの合流まで。


年末らしい、温かく楽しい一夜になったのではないかなと思います。


忘年会はまだまだ続きます。


引き続き、冬の宴をお楽しみいただければ幸いです。


ご感想やご意見など、お待ちしております。


※挿絵はAIを用いて作成しています。

 AIの仕様や制約により、

 作者のイメージ通りに再現できていない部分もありますが、

 あくまで参考イメージとして補完しながら

 お楽しみいただければ幸いです。


次回は9月1日(火)公開予定です。

ご感想やご意見など、お待ちしております。

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