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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な虚空の中の宴
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第七章 不思議な虚空の中の宴⑤

十二月も中旬。


今年も残りわずかとなりました。


今回は、タリアの誕生日と忘年会準備のお話。

年末らしい穏やかな一日をお楽しみください。


【登場人物】

・青星テツロウ

・赤井エアリ

・青星リオ

・紫雲タリア

・銀水ピスカ

・青星ミニ

■第七章、第五話


 十二月中旬――


 冬の空気は、

 すっかり年末の色へと変わり始めていた。


 青星家・地下二階。


 静かな地下空間には、

 機械の低い駆動音だけが響いている。


 モニターには、“宇宙のもと”の各種データが並び、

 淡い光が部屋を静かに照らしていた。


 その一角。


 テツロウは椅子へ腰掛けたまま、

 手元のタブレットを眺めていた。


 「……ん?」


 ふと表示された日付に目を止める。


 十二月十二日。


 数秒ほど考え込んで――


 「あ」


 小さく声を漏らした。


 「……そういえば、タリアちゃんの誕生日か」


 先月の終わりに体調を崩して、

 復調した後も、

 最近は大学の特別講義の依頼が

 あったりなどで慌ただしかった。

 

 そのせいか、

 すっかり忘れかけていたらしい。


 テツロウは苦笑しながら、椅子へ軽く背を預ける。


 「何か用意した方がいいよな……」


 そう呟きながら視線を上げる。


 地下二階の天井。


 静かな機械音。


 どこか落ち着く冬の空気。


 そして、もうすぐやって来る忘年会。


 今年も、残りわずかだった。


 「……でも、何がいいんだろ」


 テツロウは腕を組み、少し悩み始める。


 工具類や機械パーツなら、

 タリア自身の方が詳しい。


 下手な物を選んでも、

 逆に困らせてしまいそうだ。


 「こういう時、リオなら詳しいかな……」


 その時だった。


 ウィーン――


 地下二階へ続くエレベータの扉が、静かに開く。


 やがて姿を現したのは、リオだった。


 長い青髪を揺らしながら、

 リオは穏やかな笑みを浮かべている。


 「お兄様。

  こちらにいらしたのですね」


 「リオ?

  どうしたんだ?」


 リオは小さく微笑みながら、

 手に持っていた封筒をそっと差し出した。


 「あの手紙です。

  お返ししますね」


 テツロウは少し驚きながら受け取る。


 「ああ。

  別に急がなくてもよかったのに」


 「もう一度、読みたくなってしまって」


 リオは静かに視線を細めた。


 どこか、少し照れたように。


 「……お父様は、

  お母様にかなり大胆なことを

  されていたのですね……」


 「ぶっ!?」


 思わずテツロウがむせる。


 リオはくすりと笑った。


 「ふふ。

  でも……少しだけ羨ましかったです」


 「いやいや、あれはその……」


 テツロウが言葉に詰まる。


 そんな様子を見ながら、

 リオはそっと一歩近づいた。


 地下二階の柔らかな照明が、

 青い髪を静かに照らしている。


 そして優しく微笑みながら、

 静かに囁いた。


 「……お兄様も。

  リオにもっと大胆なことをしてもいいんですよ?」


 「……っ!?」


 テツロウの思考が止まる。


 だが次の瞬間。


 リオは少し楽しそうに肩を揺らした。


 「冗談です♪」


 「絶対今の冗談じゃなかっただろ……」


 「どうでしょう?」


 くすり、と。


 冬の静かな地下二階に、

 柔らかな笑い声が響いた。


 しばらくして。


 テツロウは軽く咳払いをすると、

 少し視線を逸らしながら口を開く。


 「……まあ、その話は置いといて」


 「はい♪」


 絶対わかっていて流したな――

 と思いながら、テツロウは苦笑した。


 そして改めて、手元のタブレットへ視線を落とす。


 「実はさ。

  タリアちゃんの誕生日、もうすぐだろ?」


 「あ……」


 リオも小さく瞬きをする。


 「そうでしたね。

  十二日でしたか」


 「忘年会の時に、何か渡せたらと思ってさ。

  でも俺、こういうの全然わからなくて……」


 テツロウは頭を掻きながら続けた。


 「工具とか機械系だと、

  逆にタリアちゃんの方が詳しいし」


 「ふふ。

  確かに、タリアさんは実用重視ですからね」


 リオは少し考えるように視線を上げる。


 そして、柔らかく微笑んだ。


 「でしたら――」


 ゆっくりとテツロウへ視線を戻す。


 「町へ買いに行きましょうか、お兄様」


 「え?」


 「せっかくですし。

  リオも一緒に選びます♪」


 その笑顔は、どこか楽しそうだった。


 年末が近づく冬の日。


 忘年会前日の午後は、

 まだ静かに流れていた。



――数時間後。


 天の川中心街。


 冬の装飾で彩られた百貨店の中は、

 平日にもかかわらず多くの人で賑わっていた。


 店内にはクリスマスソングが静かに流れ、

 暖かな照明が冬服売り場を柔らかく照らしている。


 その一角。


 テツロウは、少し居心地悪そうに立っていた。


 「……なんか、場違いじゃないか俺」


 「そんなことありませんよ、お兄様♪」


 隣では、リオが楽しそうに服を選んでいる。


 黒系のニット。


 紫色のスカート。


 冬用の黒タイツ。


 そしてショートブーツ。


 さらに、タリアらしいゴーグルも添えられていた。


 作業着姿ばかり見慣れているせいか、

 並べられたコーディネートはどこか新鮮に見える。


 「……タリアちゃん、こういうの着るかな」


 「ふふ。

  きっと照れながら着てくださいますよ」


 リオはそう言いながら、

 最後に全体を見渡した。


 そして満足そうに頷く。


 「少し大人っぽくて、でも冬らしくて。

  タリアさんにとても似合いそうです」


 「リオが選んだからだろ」


 「いいえ♪」


 リオは優しく微笑みながら、

 そっとテツロウの方を見る。


 「お兄様のコーディネートなら、

  タリアさんもきっと喜びますわ」


 その言葉に、

 テツロウは少しだけ照れたように視線を逸らした。


 百貨店の外では、

 冬の夕暮れが静かに近づき始めていた。


 天の川市・中心駅。


 夕暮れへ近づき始めたホームには、

 冬の冷たい空気が静かに流れていた。


 遠くで電車の走行音が響く。


 買い物を終えたテツロウとリオは、

 並んで電車を待っていた。


 紙袋の中には、

 タリアへの誕生日プレゼント。


 冬らしい服一式が丁寧に収められている。


 「……しかし、本当にこれでよかったのかな」


 「大丈夫ですわ。

  きっと似合いますもの♪」


 リオはそう微笑みながら、

 どこか楽しそうに紙袋を見つめていた。


 その時だった。


 「――あら?」


 聞き覚えのある声。


 二人が振り返ると、

 そこには銀水ピスカが立っていた。


 ロングコート姿のピスカは、

 少し驚いたように目を丸くする。


 「ふふ。

  お二人でお買い物ですか?」


 「ピスカさん」


 「……あらあら。

  もしかしてデートかしら?」


 「っ!?」


 テツロウが思わず固まる。


 だがその隣で――


 リオは自然な動きで、

 そっとテツロウの腕へ抱きついた。


 「そうですわ♪」


 「お、おいリオ!?」


 「ふふ♪」


 楽しそうに微笑むリオ。


 テツロウは照れながらも、

 少し視線を逸らした。


 「……まあ。

  そんな感じ、かな……」


 「まあまあ♪」


 ピスカはどこか嬉しそうに微笑む。


 冬のホームに、

 柔らかな空気が広がっていた。


 そしてピスカは、

 ふと思い出したように口を開く。


 「そういえば、明日の忘年会。

  楽しみですね」


 「ああ。

  もう準備始まってるのか?」


 「ええ♪

  リウスちゃんとエミちゃん、

  もう料理の下準備を始めていましたわ」


 「もう!?」


 テツロウが少し驚く。


 ピスカはくすりと笑った。


 「とても楽しそうでしたよ。

  お鍋の材料を並べながら、

  何を作ろうか相談していましたわ」


 「……なんか、もう完全に年末だな」


 ホームへ冬の風が吹き抜ける。


 遠くから、

 電車の接近音が近づき始めていた。


 遠くから近づいてきた電車が、

 ゆっくりとホームへ滑り込んでくる。


 冬の夕暮れ。


 暖かな車内の光が、

 静かな駅ホームを照らしていた。


 「それじゃ、また明日ですわ♪」


 「はい。

  忘年会、楽しみにしていますね」


 ピスカは柔らかく微笑みながら、

 別車両の方へ歩いていく。


 その背中を見送りながら、

 リオは小さく笑った。


 「本当に、賑やかな年末になりそうですね」


 「ああ……そうだな」


 テツロウも苦笑しながら頷く。


 そして二人は、

 プレゼントの入った紙袋を抱えたまま、

 ゆっくりと電車へ乗り込んだ。


 窓の外には、

 冬の街明かり。


 年末へ向かう天の川市の景色が、

 静かに流れていく。



 ――翌日。


 

 青星家・地下二階。


 テツロウは、“宇宙のもと”の

 転送装置前に立っていた。


 タリアへの誕生日プレゼントは、

 先にリオへ預けてある。


 「後で持ってきますわ」


 そう言っていたので、問題はないだろう。


 今日は、忘年会当日。


 転送後は、駅でエアリが迎えに

 来てくれることになっている。


 そこから電車で、

 忘年会会場の最寄り駅へ向かう予定だった。


 転送装置が静かに起動する。


 淡い光が地下空間へ広がり――


 

 次の瞬間。


 テツロウは、青星家の自室に立っていた。


 見慣れた机。


 窓の外では、

 冬の夕暮れが静かに広がっている。


 オレンジ色の光が、

 部屋の中を柔らかく染めていた。


 どうやら転送は問題なく終わったらしい。


 「……さてと」


 テツロウは軽く伸びをすると、

 部屋を後にする。


 そのまま星見ヶ丘駅へ向かった。 

 冬の冷たい空気。


 星見ヶ丘駅

 静かな駅ホーム。


 そして、そのホームには――


 「テツロウさん♪」


 赤井エアリが立っていた。


 だが、今日のエアリはいつもの白衣姿ではない。


 柔らかな冬用コートに、

 落ち着いた色合いのロングスカート。


 大人っぽい冬のコーディネートだった。


 黄色いメガネ越しの微笑みも、

 どこかいつもより柔らかく見える。


 「今日はエアリが案内役なんです♪」


 「なんか、いつもと雰囲気違うな……」


 「ふふ。

  忘年会ですから♪」


 エアリは少し嬉しそうに笑った。


 そして、到着した電車へ視線を向ける。


 「この電車で、会場の最寄り駅まで向かいます」


 テツロウは周囲を見回した。


 「みんなは?」


 「皆さんは、もう会場でお待ちですよ」


 「早いな……」


 「リウスちゃんとエミちゃん、

  かなり張り切っていましたから♪」


 電車の扉が開く。


 二人はそのまま車内へ乗り込んだ。


 暖かな暖房。


 ゆっくり動き出す車両。


 冬の街並みが、窓の外を静かに流れていく。


 しばらくして――


 電車は長いトンネルへ入った。


 ガタン――


 ポイント切り替えの音が響く。


 そして。


 ふと気づく。


 さっきまで隣へ座っていたはずのエアリの姿が、

 消えていた。


 「……え?」


 テツロウが周囲を見回す。


 だが車内には、誰もいない。


 静かな走行音だけが続いている。


 やがて電車はトンネルを抜け――


 目の前へ、広大な景色が広がった。


 どこまでも続く平原。


 青空。


 そして、その中央へ伸びる高架線路。


 電車はゆっくりと、

 小さな高架駅へ滑り込んでいく。


 「ここ……」


 テツロウはホームへ降り立つ。


 冷たい風が吹き抜けた。


 以前にも、どこかで来たことがあるような景色。


 そんなことを考えた、その時だった。


 「テツロウさん。

  皆さん、お待ちしていますので――」


 頭上から、優しい声が降ってくる。


 「会場へ行きましょう♪」


 テツロウが顔を上げる。


 そこにいたのは――


 巨大なエアリだった。


 冬空の下。


 巨大化したエアリが、

 優しく微笑みながらホームを見下ろしている。


 「兄ちゃん、みんな待ってるよー!」


 さらに反対側から、元気な声。


 巨大なミニが、楽しそうにこちらを覗き込んでいた。

挿絵(By みてみん)

 そして――


 つん、つん。


 ミニの指先が、

 ホーム上のテツロウを軽くつつく。


 「うおっ!?」


 「えへへ♪」


 だがエアリは、少し困ったように笑った。


 「ミニちゃん。

  テツロウさんには優しく、ですよ?」


 「はーい♪

  でも、兄ちゃんの反応かわいくて、つい♪」


 テツロウは何とも言えない表情になる。


 そんな彼を、エアリはそっと掌へ乗せた。


 そして、大事そうに胸元近くへ寄せる。


 「大丈夫ですか、テツロウさん?」


 「……まあ、なんとか」


 エアリはくすりと笑った。


 「それでは、忘年会会場へ向かいましょう♪」


 「兄ちゃん、いっぱい楽しもうねー!」


 冬空の下。


 巨大なエアリとミニ、

 そして小さなテツロウは、

 忘年会会場へ向かって歩き始める。

挿絵(By みてみん)


■第七章 第六話へ続く

第七章 第五話をお読みいただき、ありがとうございました。


今回はタリアの誕生日プレゼント選びから始まり、

少し早い年末の空気を感じるお話となりました。


そして、いよいよ忘年会当日へ。


久しぶりに訪れた高架駅や、

巨大なエアリとミニの出迎えなど、

これから賑やかな時間が始まりそうです。


次回はいよいよ忘年会会場へ。

どのような一日になるのか、

お楽しみいただければ幸いです。


ご感想やご意見など、お待ちしております。


※挿絵はAIを用いて作成しています。

AIの仕様や制約により、

作者のイメージ通りに再現できていない部分もありますが、

あくまで参考イメージとして

補完しながらお楽しみいただければ幸いです。


次回は8月28日(金)公開予定です。


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