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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な夢と、その残像
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第六章 不思議な夢と、その残像⑦

 第六章・第七話です。

 テツロウたちは、メテルが残した手紙を読むことになります。


【登場人物】


・青星テツロウ

・青星エミ

・赤井エアリ

・青星リオ

・青星ミニ

・紫雲タリア

・銀水リウス

・銀水ピスカ

■第六章 第七話


手紙を開いた、その場で――


誰もが息を呑んだ。


テツロウの手元に、

すべての視線が集まっている。


ゆっくりと、

紙が開かれていく。


そこに綴られていたのは――


このスターライト――


ID000009は、


ギンガさんと結婚する前、

最後に回収したスターライトです。


あの時のギンガさんの行動は、

いつもと、どこか違っていました。


けれど――


やはり、ギンガさんらしいところもあって。


その姿を、

今でもよく覚えています。


そして――


このスターライトを回収した直後。


ギンガさんに向けて、

謎の閃光が走りました。


その瞬間――


私の中に、

いくつもの光景が流れ込んできたのです。


誰かを見守る視線。


小さな誰かを、

大切そうに見つめる気配。


エミ。


リオ。


ミニ。


そして――


エアリちゃんや、タリアちゃん。


あの時は、

誰が誰なのか分かりませんでした。


ただ、

確かにそこに“いる”と感じただけで。


けれど――


ギンガさんと結婚し、

テツロウが生まれて。


リオやエミ、ミニたちが、


成長していく姿を見ていくうちに――


ふと、思ったのです。


もしかしたら、

あの時見えた残像は――


未来のあなたたちの姿だったのではないか、と。


そう考えると、

あの閃光の意味も、


少しだけ、分かる気がしました。


おそらく――


この手紙を読んでいる頃には、

私やギンガさんは、

もう、あなたたちの傍にはいないかもしれません。


最後に――


スターライトと、

宇宙のもとの特性について、


伝えておきます。


いま、

私たちが使っている


αタイプのスターライトには――


空間を歪める性質があります。


距離や大きさ、

位置の概念さえも、

ゆるやかに変えてしまうような力。


それは、

とても便利である一方で――


扱いを誤れば、

危険なものにもなり得ます。


そして、

宇宙のもと内部は――


常に、

拡張を続けています。


わずかずつではありますが、

確実に。


空間は広がり、

新たな領域が生まれていく。


それでも――


この宇宙のもとには、


無限の可能性と、

希望があふれています。


テツロウ。


リオ。


エミ。


ミニ。


みんな――


お互いを大切にするのよ。


メテル


手紙の最後の一文が、

静かに空気の中へ溶けていく。


しばらく――


誰も言葉を発せなかった。


その時。


「……お母ちゃん……」


ミニの小さな声が、震える。


そのまま、

テツロウへと飛びついた。


「……っ」


ぎゅっと、抱きしめる。


堪えきれないように、

肩が小さく震えていた。


テツロウは、


驚いたまま、

その頭にそっと手を置く。


何も言えないまま――


ただ、受け止める。


エミは、

ゆっくりと目を伏せた。


「……母さん……」


リオも静かに息をつく。


「……ええ……」


その場の空気が、

静かに満ちていく。


エアリが、一歩前へ出る。


「……メテルさん……」


「私も……テツロウさんを支えます」


タリアが続く。


「テツロウ氏。私もいますぞ」


「きっと母も――そう望んでいるはずです」


リウスも、


まっすぐに言う。


「……テツ兄」


「僕も、力になる」


ピスカがやさしく微笑む。


「……テツロウちゃん」


「あなたは一人じゃないわ」


テツロウは、ゆっくりと顔を上げた。


「……みんな」


「ありがとう」


小さく笑う。


「正直、まだ全部は分かってない」


「でも――」


「逃げるつもりはない」


「ちゃんと向き合うよ」


その言葉に、

誰もが頷いた。


静かな時間が、


ゆっくりと流れていく――



――翌日。


スターライトカンパニー。


テツロウは、

モニターに向かっていた。


画面に並ぶ、


スターライトの解析データ。


指先が、


淡々とキーを叩いている。


周囲の音も、


時間の感覚も――


薄れていくようだった。


その傍らには、

疑似体のエアリ。


静かに、

その様子を見守っている。


――一方。


青星家 地下三階。


切り取り部屋 制御室。


エアリは、

モニターを見つめていた。


そこに映るのは、

テツロウの姿。


「……テツロウさん」


小さく息をつく。


「昨日の今日で……」


「本当に、無理をするんだから」


その時――


扉が開く。


「エアリさん」


エミだった。


「兄さんの様子は……?」


エアリは頷く。


「見ての通りよ」


エミもモニターへ視線を向ける。


「……兄さん……」


やさしく、見守る。


その時――


画面の中で、

テツロウがよろけた。


「……っ!」


「兄さん!」


エミは即座に駆け出す。


「エミちゃん、待って――」


エアリの声も届かない。


「……仕方ないわね」


エアリは操作に手を伸ばす。


「疑似体、停止」


次の瞬間――


テツロウの隣にいたエアリが、

すっと消えた。


同時に――


周囲の風景が、

静かに薄れていく。


「……え……?」


テツロウが顔を上げる。


「エアリちゃん……?」


その時――


窓の外に、

大きな影が差し込んだ。


「兄さん!」


「兄さん、兄さん!」


巨大なエミが、


身をかがめてこちらを覗き込んでいる。


「大丈夫!?」


「兄さんが心配で……」


テツロウは、


少し驚きながらも笑う。


「……ごめん、エミ」


「ちょっと無理してたかも」


エミは、


小さく頷く。


「なら――」


「こっちでやりましょう」


やさしく手を差し入れる。


「失礼しますね」


テツロウを、

そっと掌へ乗せる。

挿絵(By みてみん)


そのまま、

胸元へと引き寄せた。


テツロウの視界が、

一気に近づく。


やわらかな布越しに感じる、

わずかなぬくもり。


「……っ」


思わず、息が詰まる。


距離が、近い。


近すぎる。


視界の大半を、

やわらかな曲線が占めている。


「……兄さん?」


すぐそばで、

エミの声が落ちてくる。


「顔、赤いですよ?」


くすっと、

小さく笑う気配。


「だ、大丈夫だって……」


テツロウは、

視線のやり場に困りながら答える。


少しだけ顔を逸らす。


けれど――


どこを見ても、距離が近い。


(……落ち着かないだろ……)


そう思いながらも、


体は自然と力を抜いていく。


エミの手のひらが、

ほんの少しだけ動いた。


それに合わせて、

体もわずかに揺れる。


「危ないですから」


「ちゃんと支えてます」


やさしい声。


どこか、

安心させるものだった。


(……ああ……)


ふと、

さっきの夢がよぎる。


やわらかくて、


あたたかくて。


守られているような感覚。


(……似てる……)


完全には思い出せない。


けれど――


確かに、

どこかで感じたことのある距離だった。


「タリアちゃんが――」


「兄さん用の端末、作ってくれてたんですよね?」


エアリが頷く。


「ええ」


軽く操作を行う。


「タリアちゃん、聞こえる?」


『……はい、聞こえています』


タリアの声が返る。


「テツロウ氏の端末、準備できているか?」


『もちろんです』


『すぐに使える状態です』


エアリは小さく頷く。


「助かるわ」


「ログハウス、展開するわね」


『了解です。受け入れ準備をします』


次の瞬間――


景色が、静かに切り替わる。


街並みは、


ゆっくりと溶けるように消え――


代わりに、


木の香りが広がる。


郊外のログハウス。


和室の大広間。


広い畳の上に置かれた、


低いテーブル。


その上で、

テツロウはパソコンに向かっていた。


タリアが用意した、

テツロウ専用の小さな端末。


画面には、

スターライトの解析データ。


指先が、

静かにキーを叩く。


その周囲には――


エミ。


エアリ。


タリア。


巨大な彼女たちが、

少し距離を取りながら、

静かに見守っていた。

挿絵(By みてみん)


「……兄さん」


エミが、小さく声をかける。


「無理は、しないでくださいね」


テツロウは、


画面から目を離さずに、

小さく頷いた。


「……ああ」


その時――


ふと、


テツロウの指が止まった。


「……ん」


軽く目を細める。


画面を見続けていたせいか、

少しだけ視界が揺れる。


それに気づいたのは、


すぐ近くで見守っていたエミだった。


「兄さん……?」


やわらかな声。


「少し、休みましょう」


そう言って、

そっと手を伸ばしてくる。


テツロウが何か言う前に――


やさしく、持ち上げられた。


「……お、おい」


抗議する間もなく、

そのまま胸元へと引き寄せられる。

挿絵(By みてみん)

近い。


さっきよりも、


さらに近い。


視界が、

やわらかな布と、

淡い光に包まれる。


「……エミ」


思わず名前を呼ぶ。


「ちょっとだけですよ」


くすっと、

小さく笑う気配。


「無理してる顔、してましたから」


その声が、

すぐそばで響く。


距離は近い。


けれど――


不思議と、

嫌ではなかった。


「……顔、赤いです」


エミが、少しだけ楽しそうに言う。


「ほっとけ……」


小さく返す。


けれど、


声には力が入っていなかった。


そのまま、


ほんの少しだけ、


力が抜ける。


「……少しだけですからね」


エミの声が、


やさしく重なる。


その一言に、


テツロウは小さく頷いた。


今は――


少しだけ、このままでいい。


しばらくして――


穏やかな空気が、


和室の中を満たしていた。


カタ、カタと、


小さなキーの音だけが、

和室の中に響いている。


テツロウは、


画面に向かい続けていた。


その周囲には、

エミ、エアリ、タリア。


巨大な彼女たちが、

少し距離を取りながら、

やさしく見守っている。


誰も急かさない。


ただ、

静かにそこにいる。


その距離が、


どこか安心できるものだった。


(……不思議だな)


ふと、テツロウは思う。


昨日の出来事。


母の言葉。


そして――


今、この時間。


まだ分からないことは多い。


けれど――


確かに、


前へ進んでいる。


そんな感覚だけは、

はっきりとあった。


「……兄さん」


エミのやさしい声。


テツロウは、

小さく頷く。


「……ああ」


そのまま、

再び画面へと視線を戻す。


こうして今日も――


テツロウは、

不思議な宇宙のもとで。


巨大な妹たちに見守られながら、

静かな日々を過ごしているのだった。


■第六章 完

 第六章、ここまでお読みいただきありがとうございました。

 少しずつ明かされ始めた過去と、

 “宇宙のもと”の秘密が、これからどう繋がっていくのか――

 今後も見守っていただけると嬉しいです。


 もしよろしければ、

 感想なども聞かせていただけると励みになります。


 次回は、また少し寄り道となる外伝第二弾をお届けします。

 7月28日公開予定です。

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