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不思議な宇宙(そら)のもとで  作者: まほ。かんた。
不思議な夢と、その残像
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第六章 不思議な夢と、その残像⑥

 第六章・第六話です。

 朝の光の中、テツロウたちは青星家へ戻ることになります。


【登場人物】


・青星テツロウ

・青星エミ

・赤井エアリ

・青星リオ

・青星ミニ

・紫雲タリア

・銀水リウス

・銀水ピスカ

■第六章 第六話


朝のやわらかな陽光が、

部屋の中を静かに照らしていた。


その光の中で――


テツロウは、まだ少しぼんやりとしたまま、

横になっていた。


そのすぐ上から、

影が差す。


「……テツロウさん」


静かな声。

ゆっくりと、顔が近づいてくる。


黄色のフレームのメガネ越しに、

大きな瞳が、じっとこちらを見つめていた。


挿絵(By みてみん)


エアリだった。


(……近い……)


「……エアリちゃん……」


テツロウは、少しだけ顔を引こうとする。


「顔が……近い……」


けれど、エアリは気にした様子もなく、

そのまま観察を続ける。


「少し、じっとしていてください」


落ち着いた声。


その視線は、テツロウの顔――


正確には、目元に向けられていた。


「……メガネ……」


小さく呟く。


指先が、そっとフレームに触れる。


「……戻っていますね」


テツロウは、少しだけ瞬きをする。


「……え?」


「さっきまでのものではありません」


エアリは、静かに言う。


「普通の……黒のメガネです」


「……不思議ですね」


エアリは、もう一度だけ視線を落とす。


メガネ。


瞳の動き。


呼吸。


一つひとつ、確かめるように。


そして――


小さく、息をついた。


「……問題なさそうですね」


そのまま、テツロウを見つめたまま言う。


「転送装置を使っても」


「大丈夫だと思います」


その言葉に、

ピスカがやさしく微笑む。


「なら――」


ゆっくりと、周囲を見渡す。


「みんなで、

 テツロウちゃんが無事に帰ってこれるよう」


「見送りましょうよ」


その提案に、

エミがすぐに頷いた。


「ええ」


やわらかな声。


けれど、どこか決意を含んでいる。


自然と、全員の視線がひとつにまとまる。


そして――


一同は、青星家へ向かって歩き出した。


朝の空気は、澄んでいた。


やわらかな陽光が、


街並みを静かに照らしている。


その中を――


巨大な影が、ゆっくりと動いていく。

挿絵(By みてみん)


エミ。


タリア。


エアリ。


ミニ。


リオ。


そして――


少し後ろから、


静かに様子を見守るように歩くピスカ。


さらに、


その隣にはリウスの姿もあった。


それぞれが、


同じ方向を見据えながら、

ゆっくりと歩いている。


朝の光の中で、


その影はひとつに重なっていた。


その足元に広がる街は、

まるで模型のように小さく見える。


建物も。


道路も。


人の気配さえも――


すべてが遠い。


そして、

その巨大な影が、

地面へと大きく落ちていた。


(……また……)


テツロウの意識が、わずかに揺れる。


エミの胸元に抱かれたまま、

その光景を見つめる。


近くて、

やわらかくて、

あたたかい。


けれど――


視界の先に広がるのは、

現実とは思えない景色。


(……夢……?)


(……それとも……)


答えは出ない。


ただ、


その感覚だけが、残っている。


(……どっちなんだ……)


やがて――


青星家が見えてきた。


見慣れたはずの家。


けれど――


その姿は、今はあまりにも小さい。


巨大な影が、

静かにその周囲を取り囲む。


足音が止まる。


わずかな静寂。


そして――


リオとエアリが、一歩前へ出た。


「……いきますわ」


リオが、静かに言う。


エアリも、小さく頷いた。


二人は、ゆっくりと手を伸ばす。


青星家の屋根へ――


触れる。


指先が、そっと添えられる。


まるで、

壊れ物を扱うかのように。


慎重に。


ゆっくりと――


屋根が、持ち上がる。


きし、と。


小さな音が、かすかに響く。


だが、

壊れることはない。


そのまま、

屋根は静かに外されていく。


内部が――


露わになる。


そこには、

テツロウの部屋があった。


見慣れたはずの空間。


けれど、

今はまるで――


箱庭のように、小さく収まっている。


(……ここ……)


テツロウは、


エミの胸元から、

その光景を見下ろす。


現実でありながら、

どこか現実ではない感覚。


その境界は、


まだ、曖昧なままだった。


しばらく――


テツロウは、そのまま動けずにいた。


やがて、

ゆっくりと息を吐く。


(……戻るか)


小さく、そう呟く。


エミが、その言葉に気づいたように、

そっと掌を差し出す。


「兄さん……」


やさしく、包み込むように。


テツロウは、その掌の上へと移る。

挿絵(By みてみん)

あたたかく、

やわらかな感触。


そのまま――


エミはゆっくりと手を動かす。


青星家の屋根の外された部分から、

そっと中へ。


まるで、

壊れ物を扱うかのように。


テツロウは、

自分の部屋の床へと戻された。


見慣れたはずの空間。


けれど――


どこか現実感が薄い。


テツロウは、手の中の装置を見つめる。


「……これが」


「転送装置のリモコンか……」


指先に、わずかな緊張が走る。


ふと、顔を上げる。


そこには――


巨大な仲間たちの姿。


やさしく、

見守るような視線。


その光景は、


現実離れしていて――


それでも、確かにそこにあった。


「……みんな」


テツロウは、少し照れたように笑う。


「ありがとう」


短い言葉。


けれど、まっすぐだった。


そして――


リモコンのスイッチに、指をかける。


一瞬、ためらう。


けれど。


静かに、押した。


その瞬間――


白い光が、


ゆっくりと広がる。


足元から。


視界の端から。


すべてを包み込むように。


テツロウの姿が、

光の中へと溶けていく。


部屋も。


景色も。


すべてが、白に飲み込まれる。


やがて――


何もかもが消えた。


残ったのは、

ただ広がる空間。


白く、静かな広がり。


そして――


そこに立ち尽くす、彼女たちの姿。


ついさっきまであった景色は、

すべて消えている。


テツロウの姿も――


もう、どこにもなかった。


広大な空間の中で、

彼女たちは、ただ静かに佇んでいた。


しばらくの静寂のあと――


エミが、そっと口を開いた。


「……さあ」


小さく息をつく。


「この上の地下二階に――」


「兄さんが戻っているはずです」


その言葉に、


エアリが静かに頷く。


「ええ」


落ち着いた声。


「確認に行きましょう」


そして――


一同は、次の場所へと向かって動き出した。


次の瞬間――


テツロウは、

地下二階に立っていた。


青星家――


宇宙のもと、その前。


「……っ」


一瞬、息が詰まる。


現実の重みが、

一気に戻ってくる。


静かな空間。


装置の低い駆動音。


そして――


目の前にある、一枚の写真。


そこに写っているのは、


両親。


テツロウは、


ゆっくりと視線を落とす。


(……母さん……)


藍色の髪。


やわらかな微笑み。


メテル。


(……父さん……)


無精ひげをたくわえた、

どこか飄々とした男。


ギンガ。


朧げながら――


覚えている。


断片的に。


けれど、確かに。


あのぬくもり。


あの距離。


あの声。


(……さっきの……)


夢の中で見た光景が、

ふと、重なる。


現実なのか。


記憶なのか。


その境界は、


まだ、曖昧なままだった。


テツロウは、


しばらくその場に立ち尽くしていた。


その時――


「兄さん!」


明るい声が、部屋に響いた。


扉が開く。


そこにいたのは――


エミたちだった。


「お帰り、兄さん」


やわらかな笑顔。


「テツロウさん、お帰りなさい」


エアリが、落ち着いた声で続ける。


「お兄様、おかえりなさいませ」


リオも、少し安心したように微笑む。


ミニやピスカ、リウス、タリアも、


それぞれに表情をゆるめていた。


その場の空気が、

一気にやわらぐ。


テツロウは、少し戸惑いながらも、


その様子を見渡した。


(……戻ってきた……のか……)


はっきりしない感覚。


けれど、

この光景は――確かに現実だった。


「……みんな」


小さく、息をつく。


「ありがとう」


少し照れたように笑う。


「なんだか……記憶が曖昧なんだけど」


「看病……してもらってたのかな」


視線を巡らせる。


「面倒みてくれて……ありがとう」


改めて、そう言った。


その時――


ふと、視線が止まる。


タリア。


「……タリアちゃん」


少しだけ、首をかしげる。


「タリアちゃんのお母さんって……」


「ミナミ……?」


その言葉に、

タリアがきょとんとした表情を浮かべる。


「……テツロウ氏?」


一瞬、間が空く。


「よく……私の母の名前、知っていますね」


少し不思議そうに、


テツロウを見つめる。


「話しましたっけ……?」


その問いに、


テツロウは答えられなかった。


(……なんで……)


胸の奥に、

かすかな引っかかり。


さっきの夢。


あの光景。


あの声。


断片だけが、


ふっと浮かび上がる。


けれど――


うまく、繋がらない。


「……いや」


小さく、首を振る。


「気のせい……かも」


そう言いながらも、

その違和感だけは、

消えずに残っていた。


やがて――


テツロウが、ゆっくりと口を開いた。


「……ちょっと」


少しだけ、言葉を選ぶ。


「確認しておきたいことがあるんだ」


視線を巡らせる。


「みんなも……来てくれる?」


その一言に、


誰もがすぐに頷いた。


テツロウは踵を返す。


宇宙のもとがある部屋を出て、


エレベーターで地下三階へ


切り取り部屋。


扉の前で、わずかに足を止める。


(……ここだ……)


静かに、扉を開けた。


そこに広がっていたのは――


見慣れたはずの空間。


だが、


その一角に――


明らかに“異質なもの”があった。


台座。


その上に、

ひとつの光が、鎮座している。


青い光。


強く。


深く。


脈打つように、


空間を照らしていた。


テツロウの足が、止まる。


(……やっぱり……)


ゆっくりと、近づく。


一歩。


また一歩。


その光は、


近づくほどに、


存在感を増していく。


(……これ……)


あの時、見た光。


夢の中で――


確かに触れたもの。


テツロウは、ゆっくりと視線を落とす。


メガネ越しに、


その光を捉える。


視界に――


情報が浮かび上がる。


TYPE:α

ID:000009

STATUS:VALID


「……これは……」


息が、わずかに詰まる。


「……あの時の……」


その時――


テツロウの視線が、

ふと、台座の根元へと落ちる。


「……?」


何かがある。


スターライトの下、


台座のわずかな隙間に――


薄いものが、挟まれていた。


テツロウは、ゆっくりと手を伸ばす。


指先で、そっと引き出す。


「……紙……?」


薄くて、軽い。


けれど――


ただの紙とは、どこか違う。


手にした瞬間、

わずかな違和感が走る。


折りたたまれている。


丁寧に。


意図をもって。


(……いや……)


「……手紙……?」


小さく、呟く。


その場の空気が、


わずかに張りつめる。


テツロウは、

手にしたそれを見つめる。


ゆっくりと――


折り目に指をかける。


「……」


一度だけ、息をつく。


そして――


手紙を開いた。



■第六章 第七話へ続く



 夢と現実、その境界が少しずつ繋がり始めました。

 そして最後に現れた“手紙”が、これから何を語るのか――。


 もしよろしければ、感想なども聞かせていただけると励みになります。


 次回、第六章 第七話は7月24日公開予定です。

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