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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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謎②




海岸まで辿り着いた3人。

明らかに顔色が悪い留奈。足元も覚束ない。

今にも倒れそうな様相に、環は不安気に声を掛けた。



「留奈ちゃん?無理、してない?」


「してない、よ」



汗を滲ませて、作る笑顔。

異常を察した環だったが、留奈の圧に負け追及する事は出来なかった。

船の前で、澄香が叫ぶ。




「これじゃないー?ボロボロのやつあるわよ!」



「そ、そうね!それじゃあ出発しましょうか」

「……お姉ちゃんに、嘘は吐かないでね…」



澄香の方は顔を向け同意するように言う環。

すぐに留奈の方へ視線を向けると、真剣な眼差しで告げた。

留奈は小さく、頷いて見せる。

そして環に手を引かれて船へと向かって行った。




「まだ夕方だし、夜まで船で待ちましょ!」



「ええ、そうね。お弁当食べてゆっくり出来そうねぇ」



「…そうだね」



体調を悟られまいと、1番で船に乗る留奈。

楽しそうに声を弾ませて夜を待つ澄香。

最後に乗り込む環。

緊張した面持ちで、環はオールを握り締めた。




「船は私が操舵してみるわ。安全運転でいくわね?」


「信じてるから!ゆっくりね!」


「……お願い」



「大丈夫。分からないけど、上手くいきそうな気がするの」



ふわりと包み込むような笑顔を2人に浮かべた後、船は動き出す。

ゆっくり、軋んだ音を立てながら。

オールが触れる水面は、一気に穏やかになっていく。



「わっ!凄い!揺れてない!」


「…うー」


「あれ?勝手に進んでる…?」



異様に静かな水面を漕ぎ進めて行く環。

港から大分離れた場所で、動きを止めた。

辺りを見渡し安全を確認する。


モンスターの気配は感じない。

ホッと一息吐くと、環も船に腰を下ろした。



「ちょっと遅いけど、ご飯にしましょう?」

「はい!召し上がれ♪」


「ありがとっ!お腹ぺこぺこだったのよねー!」


「…いただきます」



特製弁当を食べ進める。

澄香はあっと言う間に平らげたが、留奈は時々手を止め苦しそうな吐息を漏らす。



「留奈?お腹空いてないの?」


「ちょっと、疲れた」


「もうすぐ夜になるわ!スタミナ付けないと!」


「…頑張る」



気丈に振る舞う留奈の姿に胸を痛める環。

自分の弁当で、元気になっていると信じて祈るしかなかった。




遂に、夜がやって来る。


夕陽が海に沈み、暗闇が支配していく。

段々と漆黒に染まる海。



俺は不意に、海底から強烈な波動を感じた。




「ぎゃおーー!!」



「!?」



渾身の鳴き声が響き渡る。

声の大きさに、思わず体を震わせた3人。

全員が俺に視線を向ける。



俺は真っ先に、羽根で海底を指差した。




「なっ、何なの!?」


「魔力の波動…?」


「…たま姉、オール握って」


「ええ、船を動かすわ!掴まって!」



留奈が言うと同時に、環は大きくオールを漕ぎ船を動かす。

強引に動かすが、波は船を逃すように揺れている。




その時だった。




さっき船が居た場所に、黒い何かが飛び出してきた。

獲物を狙うように。

物凄いスピードで波を荒立てる。


激しい衝撃音と共に、辺り一面に水飛沫が舞った。



「きゃあぁっ!?」


「あれが、モンスター!?」


「…っ」



(違う…あれは、足だ!)



黒い足は、キョロキョロと辺りを見渡す。

3人が乗る船が、視界に入ったようだ。

音も聞こえない程の速さで、足が伸びていく。



「!!」

「させないっ!」



影に気付いた環が咄嗟にシールドを張り、攻撃を防いだ。

たが、塞いだ衝撃で船は大きく揺らいでいる。

立っているのがやっとだ。



「くっ!魔法が安定しない…!」


「隙は私が作るわ!澄香ちゃんは集中してて!」



「あ…」



誰も気付かなかった。



真後ろからもう一本の足が伸びている事に。



1番最初に気付いたのは、留奈だった。

咄嗟に、無言で、澄香を突き飛ばす。



「えっ…?」


「…ごめん。今のわたし、何も出来ない」



直接攻撃を受けた留奈は、目の前から忽然と姿を消した。

気がつくと、大きな着水音と共に水面に浮かんでいる留奈の姿。




「い、いやぁああーー!!」



「留奈ぁあ!!」




(留奈ちゃん…どうして、気付かなかったの!?私のバカっ!)

「…っ!また来るわ…攻撃をお願い!」



「…このぉ!雷を食らえっ!」



鬼気迫る表情で、澄香の魔力が乱れていく。

暴走した力は、激しい稲光を放ち足目掛けて鋭く撃ち込まれる。



しかし




「うぁぁっ!」



叫び声を上げたのは留奈だった。



「…ぁ、あたしの魔法、あいつに届かない!」

「海水が、雷を吸収しちゃう!」



光の速さで伝導された魔法は、水の中に居た留奈にダメージを与えてしまった。

その事実に動揺し、杖を持つ手がガタガタを小刻みに震え始める。



(あたしが、留奈を、傷付けた…?)



いつの間にか、黒い足は水中へと潜っているようだ。



「…すみ姉、大丈夫だから」

「わたし、生きてるよ」



船から数メートル離れた岩に、必死にしがみつきながら言葉を紡ぐ留奈。

その小さな手は、真っ黒く染まっていた。

ジワジワと、進行が進んでいる。



「留奈ちゃん…!やっぱり貴女…」



何かに気付いた環。

だが、敵の猛攻は止まらない。

今度は留奈に向かって足が伸びる。



(やらせねぇ!!)



俺は死ぬ気で、自身の羽根を動かす。

全速力で、留奈目掛けて突き進む。

黒い足よりも速く、と。

妹を守る為に速度を上げ続けた。



「…フー、ちゃん」



嘴で留奈のローブを掴む。

後は気合いを入れるだけだ。

勢い良く、開けた岩へと留奈を運んでいく。



「ありがと…やっぱり、頼りになるね」


そこには力無く笑う留奈。

俺の体を撫でる手は、冷たく黒い痣で侵食されている。

苦しそうに呼吸を繰り返す。


その姿を見てられず、俺は不意に目線を逸らしてしまった。


(やっぱり…解呪なんて、出来る訳ねぇよな)

(全部、留奈が引き受けただけなんだ)



違和感に気付かなかった自分に反吐が出る。

嘴が悔しさで音を立てて震えていた。



「姉さん達なら、やってくれるよね?」



留奈の言葉にハッと振り返ると、何度も何度も首を縦に振って頷く。

俺の行動に安心したのか、撫でていた手がゆっくりと地面へ落ちていく。


意識がない。

唇も青く変色し、呼吸が浅い。



(早くあいつを退治しないと、留奈が…!)



俺は大急ぎで、澄香達の元へと戻った。

帰還した俺を見た2人は、安心した顔を見せる。



「あんたが来たって事は、留奈は大丈夫なのね!?」


「そうよね?フーちゃん…?」



無言で、首を横に振る。

それだけで伝わる絶望の空気。

2人の表情が一気に強張っていく。

でも俺は、黒い足を指差して叫んだ。



「あいつを倒せば、留奈は助かるって、言いたいの?」

「なら、やる事は1つね」



「澄香、ちゃん?」



「お姉ちゃん!出来るだけあいつに近付いて!」

「風の魔法で切り刻んでやるわっ!」



「わ、分かったわ!今すぐ…」



澄香の言葉を聞き、慌ててオールを握り締める環。

だが、明らかに水の抵抗を感じる。

波の荒さが進行を妨げ、前に進めない。



「急に…なぜ?」

「くっ!でも、私がやらなきゃ!」



指が真っ白になるほど力を入れる。

大きく揺れる船は蛇行しながらもゆっくりと足の元へと近付いていくが…



水面下、高速で蠢く黒い足。



「危ないっ!」



今度は澄香が反応し、素早く火球を作り出す。

焼ける匂いと共に、足は攻撃の手を緩めた。



「お願い!もう少しだけで良いから近付いて!」


「ぐうう…!舵が、言う事をきかない!」



大量の汗を掻きながら、環はありったけの力で漕ぎ進める。

不安定な足場で、澄香は必死に魔力を集中させた。




「今だっ!風よ!切り刻めっ!」



無数の風の刃が黒い足に飛び掛かっていった。

弾くように足は暴れ狂う。

しかし、刃の量には耐えきれずボロボロと形が崩れてきた。



海底から、悲鳴のような魔力の波動を感じる。



その瞬間、黒い足は禍々しい光を放ち空へと消え去っていく。



「や、やったわ!」


「これで留奈ちゃんも…!」



遠くに横たわる留奈を視界に捉える環。

だが、黒い痣は進行を続け首筋にまで伸びているのが見えた。



「うそ、でしょ…?」



水面が不自然に膨れ上がり、轟音の波飛沫が聞こえる。

月の影すら飲み込む巨大な影と共に。




命のカウントダウンが始まった。





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