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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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覚醒①





巨大が月明かりに照らされる。


正体は、イカのようなモンスターだった。

大量の黒い触手がうねうねと気味悪く動き、2人を威嚇する。


余りの大きさに、見上げる事しか出来ない。

殺意溢れたオーラを感じ、膝が小刻みに笑い始めた。



「倒したのは…足、だけってこと!?」


「凄まじい殺気よ!澄香ちゃん、気を付けて!」



「くっ…これじゃ、足が多過ぎて消耗戦になるわ!」



2人は相手の様子を窺っていたが、突然大波が立つ。

大きく揺れる船の目の前に、黒い足が伸びてきた。


そのまま、一気に足が振り下ろされる。




「はぁっ!」




盾を大きく振り回し、足を弾き飛ばす環。

その圧で、モンスターは体勢を崩して動けなくなってしまう。

振動で激しく波立つ海。


環はその隙に必死に漕ぎ出し、本体から距離を取る。


逐一、留奈の確認は怠らない。



(まだ…痣は顔までいっていない。大丈夫)



「どうすればあいつにダメージを…!」


「ねえ、澄香ちゃん。氷の魔法って、使える?」


「えっ?」


「凍った後に足を叩き壊せば、ダメージを入れられるかもしれないわ」



オールを両手に持ち、額から汗を滲ませて問う環。

船は不安定に揺れ動いたままだ。

覚束ない足のまま、澄香は辺りの魔力を探り始める。



「…出来るか分からないけど、呼んでみる!」



「フー!あんたも来なさい!」



言い叫び、俺を呼ぶ澄香。

慌てて頭の上に乗ると、澄香は杖を力強く握りしめた。

指先が真っ白く、変わる程。


目を瞑った瞬間、辺りの空気感が変わる。

ヒヤリ、と冷たい風が澄香に集まり出した。

氷の魔力が反応を示す。



だが、敵も待ってはくれない。



魔法を発動させまいと、水面下から最速の足が伸びる。

下からの気配に寸前で気付いた環。

自分が落ちそうになるのも無視し、オールを大きく動かして船を旋回させる。



「邪魔はさせないわ!」



「…まだ、まだ行ける。もっとよ!」



澄香が纏った巨大な氷の波動。

俺を媒介にして、杖先に水色の淡い光が吸い寄せられ光球になっていく。



しかし――




「澄香ちゃああん!」




一瞬の間。


環の絶叫が響き渡る。

船を捉えた足は、澄香と俺を同時に一掃した。




「ぐっ、う…!あたしだって…やるんだからぁっ!」



勢い良く吹き飛ばされる俺。

直撃を貰い、口から血反吐を吐く澄香。


離れ離れになった瞬間、澄香の力は制御出来ずに暴走し始める。


澄香の髪や肌が瞬く間に凍り付き、体から激しい魔力の波動を撒き散らす。


両手が氷に覆われても、澄香は諦めなかった。

消えゆく意識の中、モンスター目掛けて光球を撃ち込んだ。



俺達がそれぞれ岩に叩きつけられた瞬間、海面に触れた光の玉は瞬間的に氷となり、爆発的に海へ広がっていく。

それは、モンスターの体にも及んでった。



(どうして、何度も同じ事ばかり繰り返すの…?)

(私の力なんて、そんなものなの…?)



凍っていく海を、茫然と見つめる環。

船にはもう、1人しか残っていない。

倒れゆく2人を見つめ、自分の無力さに膝から崩れ落ちてしまう。



「お姉、ちゃん」


か細い声が、遠くから聞こえる。

涙を溜めた瞳が、姿を捉えた。


黒い痣が現れ始めた澄香と目が合う。

澄香は歯を出して、笑顔を浮かべこう告げた。



「あたし達を、守って…!」



その言葉と同じくして、意識を手放した澄香は凍った海に倒れ込んだ。

俺も意識はあるが、羽根が折れて身動きが取れない。



(肝心な時に…!もっと役に立てただろ!)



悔しさで自分自身に苛立つ俺。

しかし、遠くに見える環は何かを決意した表情で、大きく頷いた。



「…皆のためにも、やってみせるわ!」



辺り一面凍土となった海。

氷漬けにされたモンスター目掛けて、息を切らす程速く走り出していく環。

まずは目の前の、飛び出て凍った足に盾を振り下ろす。



甲高い音を立てて、足が砕け散った。



(まだ足はある…!早く動かないと!)



次は、本体近くの大きな触手目掛けて駆け出す。


目の前まで近寄ると、盾の縁を使い素早く切り刻んでいく。

大量の足は、もう数本へと数を変えていた。




(このまま壊し続ければ、いけるわ!)



そのまま足を踏み出し、本体へと飛び掛かる環。



しかし、目の前を何かが通り過ぎる。



「きゃあっ!?」



黒い足が、動いている。



氷が、溶け始めた。




地鳴りのように、目の前にいるモンスターが小刻みに震え出す。

まだ凍っている足場に着地すると、素早く盾を構え直す

環。

その場で全力の衝撃波を撃ち放つ。




(お願い!届いて…)




弾かれる音と共に、氷がボロボロと海面に沈んでいく。

モンスターは、自分の足を犠牲にしてまで体を守っている。

負けじともう一度衝撃波を放つが、同じように足が砕け散るだけだった。



本体に傷一つ付けられなかった…。



(どうすればいいの…?何をしても届かない…)



その事実。

目の前の巨大な敵。

足は削る事が出来たが、強い殺気が環の心を蝕んでいく。



環を見下ろす鋭い視線。

生きている足が、海から顔を出しゆらりを動き出す。



次の獲物を探すように。




「また、終わり…なの?」

「嫌、嫌よ…誰も守れないまま終わるなんて…」



「私が、守らなきゃ…!!」




その言葉を遮るように、物凄い速さで足は澄香へと一直線に伸びていく。


判断が遅れた環。

咄嗟に澄香に向かって走り出す。



「ぐううっ!」


間一髪でシールドを展開出来た環だが、今までとは違う一撃の重さに思わず歯を食いしばる。


金色のシールドは、一瞬でヒビが入る。


追い討ちを掛けるように、次の足が環に攻撃を仕掛けた。



「…あぁっ!」



シールドはいとも容易く破壊され、盾ごと弾き飛ばされる環。

岩の壁に打ちつけられ、内臓が震え上がる。

息が、出来なくなった。




(私のシールドが…壊された!?)




自分の手から離れていく盾をただ、見つめる。

衝撃で地面に倒れ込む環。




モンスターは、眼を地走らせて環を捉え続ける。

攻撃を待つように触手は嫌らしく動き回る。




(怖い…動いたら、殺される…!)




それでも環は、立ちあがろうとするが…。




力が、入らない。

盾も無い自分は、何も出来ないと知っている。

何度も立とうとするが、膝が笑って動こうとしない。




不意に環は、2人の妹を見つめた。



倒れたままの澄香。

呪いが進行している留奈。




「私が守るって、言ったのに…」

「ごめん、なさい…」




顔を両手で覆い、涙を流す環。

だが、直ぐに涙を拭うと震える手で落ちている盾を握り直す。



…足は動かない。




(それでも…立たなきゃ、私が…!!)





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