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神様になったので妹たちを勇者にして世界最強にします  作者: ほっぺ


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船出①




分厚いファイルが閉じられた。

メルクスについての情報は得られなかった。

だが、3人の結束はより強いものとなる。



今度こそ、負けない。



その想いを強く抱き、ギルドマスターとの対話は終わった。

申し訳なさそうに頭を下げるマスター。



「これくらいの情報しか無くてすまない」

「後は魔道具の流通も抑えられれば良いのだが…」




「そんなの簡単よ!汚染されたモンスターを片っ端からやっつければ良いじゃない!」


「ええ!?私達の体力が持たないわぁ」


「…でも、一理ある」



鼻高々で張り切る澄香。

発せられた言葉に慌てふためく環。

納得した様子の留奈。


マスターは澄香の発言を聞くと、顔が明るくなり期待に満ちた眼差しを向ける。



「助かるよ!今は調査隊しか動かなくてね…」

「討伐に向かえる冒険者が居ないんだ」



「決まりねっ!さぁ、依頼を受けるわよ!」


「澄香ちゃん!もう少しゆっくりしてからでも…」


「急がないとダメよ!あたし達が動かないと、誰かが死ぬかもしれないのっ!」



急かされるように、言葉を発する。

言い切った澄香の表情は、悲しみで溢れていた。

言葉の重みを受ける環。

考えを巡らせると、眉を寄せて小さく頷いた。




「そうよね。もうこれ以上、命が無くなる事は許されないわ」

「休もうだなんて、言ってられないわねぇ」



「…疲れたら、わたしが癒してあげるから」



トン、と自分の胸を叩き自慢気に笑みを漂わせる留奈。

環は2人の気持ちに目頭が熱くなった。

落ち着かせるように一息入れると、優しい笑顔で留奈の頭を撫でる。



「大丈夫よ?お姉ちゃんは疲れ知らずなんだから」



そう言いながら、環はギルドマスターに目を配る。

視線を受け取ったマスターは静かに立ち上がり、そのまま部屋を後にした。



「私達もカウンターへ戻りましょうか?」


「そーねっ!どんな敵だって倒してやるわ!」


「…頑張るぞー」



ガチャッと音を立て、客室の扉は閉じられた。

3人は足早にカウンターへと向かう。

受付嬢が意気揚々と待ち構えていた。



「お帰りなさい!依頼は沢山、預かっておりますよ!」


「黒いモンスターの討伐依頼はある?」




澄香はピンポイントで依頼を要請した。

だが、その発言に受付嬢の顔は青ざめていく。

何度も顔を見合わせるが、澄香の目はまっすぐ受付嬢を見つめたままだった。




「ええと、何件かありますが…」

「ほ、本当に大丈夫ですか?」



「あいつに届く事は何でもするって決めたの」

「それに、皆も居るから大丈夫っ!」



2人に視線を遣ると、顔を崩して笑う澄香。

その笑顔に受付嬢は安心が胸いっぱいに広がった。

そして、2枚の紙をカウンターへと置いた。



「現時点で、黒いモンスターの依頼は2件来てますね」

「一つは漁村からの依頼。二つ目は違う街からの依頼です」


「ここからですと、漁村の方が近いですが如何なされますか?」



受付嬢からの問い掛けに、3人は顔を見合わせる。

一瞬の間の後、大きく頷き澄香が言った。




「近い方にするわ!今ある命を助けないと!」



「それでしたら、ギルドからは船を用意させて頂きますね!」

「せめてものお役に立てて下さい!」



そう言うや否や、物凄い速さで筆が走る。

何かを書く受付嬢。

書き終えると、3人に依頼書と共に手渡した。




「お待たせしました!依頼書と、乗船書になります!」



「ありがとうございます。確かに引き受けましたわ」


「じゃ、行ってくるわねっ!」


「任せてー」


2枚の紙を受け取る環。

深々とお辞儀をすると、3人は早足でギルドから出ていった。

その後ろ姿を見て、両手を組む受付嬢。



「神のご加護が、ありますように…」



強く強く、祈った。








―――オルド 船着場





「わぁー!水が綺麗ねっ!」


「川を下っていくのかしら?」


「…海、じゃないんだ」



しょぼんと肩を落として残念そうに呟く留奈。

そんな留奈の手を引きながら、環は依頼書を係員に見せて回る。



「すみません、こちらに行きたいのですが…どちらに乗れば?」


「ああ、それならあの船だね」



係員は食い入るように見つめていたが、不意にボロボロの船へ指が向いた。

やる気がなさそうに立っている男が1人。




「ありがとうございます!」


「……あそこに向かうのは大変だからね。気を付けな」



他の作業に取り掛かりながらも、ポツリと怖い言葉を残す係員。

不安が過るが、平静を装う環。

船員が準備を始めたため、急足で船着場へと走って行く3人。



「すみません!まだ間に合いますか!?」



「うわっと!あ、ああ。これから出発するところさ」

「…君達だけになるけれど、大丈夫かい?」



「え?何か問題でもあるの?」



澄香は小首を傾げ、不思議そうに問い掛ける。

その問いを聞くと、船員は途端に心配そうな顔つきになった。



「これから行く場所は、サグーロ」

「辺境の地なんだが、行くのがまぁ…過酷なんだよなぁ」



重々しいため息と共に吐き捨てる船員。

一つの単語により、一層不安が募る3人。

顔色がどんどんと悪くなる。



「川に落ちたりとかしないわよねっ!?」


「も、もし落ちたらどうしましょう…」


「…ふっふっふ、心配無用」



自信に満ちた表情で語るのは留奈だった。

腰に手を当てて、ドヤ顔で2人を見つめる。



「何か方法があるのねっ!」


「さすが留奈ちゃん!」


「……きっと、何とかしてくれる、よね?」



そう言いながら、留奈は俺に話かけるように呟いた。

やっぱり、留奈にはもうバレてるんだな…。

それに応えるべく、俺は小さく頷いて見せた。



「何よ!留奈がどうにかするのかと思ったら…」


「まぁまぁ、船長さんに託しましょう?」


「…ん、楽しみ」





「そろそろ出発しますが、大丈夫ですかい?」




準備を終え、3人が来るのを待っている船員。

同調するように会釈をすると、不安定な船へと腰を下ろした。

ギシッと、木が擦れる嫌な音が鳴り響く。



「ひいいっ…!」


「澄香ちゃん…静かに」


「…フーちゃん、任せた」




小声で会話をする3人。

留奈はお願いするように呟くと、俺をローブの奥ににしまい込む。



俺は静かに、スリープ機能を作動し狭間へと向かった。






バッと視界が真っ白に染まる。

狭間へと戻ってきたようだ。


その横には満足そうに口角を上げて俺を見ている妖精。



「何か、あったのか?」



「ぷぷーっ!いやぁ、ハデスのおもろい顔が見れてなぁ」

「思い出し笑いしとったんじゃ!」



腹を抱えて心底楽しそうに笑い声を上げるゼウス。

理解が及ばない俺。

小首を傾げながら、コマンド画面を開いた。



「お?また妹ちゃんに何かするんか?」



ゼウスは興味深そうに俺の肩に乗り話し掛ける。



「まぁ、そんな感じだな」



俺はここに来るまでに考えていたチートを入力していく。

大丈夫。

これは、世界を狂わすチートじゃない。

そう言い聞かせながら。



『航路安定』



「これがチートじゃと?普通の文言ではないか」



「ふっ!俺がちゃんと考えたチートだぜ?」



俺は自信満々に言い放った。

しかしゼウスは顎に手をあてふと無言になる。

静寂から、言葉が走る。



「これは、操舵者が下手でも大丈夫なのか?」


「えっ!?」

「多分、何とかなる…はず」



「安定って、何処からを言うんじゃろなぁ」



「3人が一緒に居れば安全に…!」



「…お主の決断で、また世界が変わるかもしれぬのじゃぞ?」

「不確定な要素は排除せねばな?」



重くのしかかるゼウスの台詞。

また勢い任せて作ってしまった。

だが、妹の旅を少しでも安全にする。

それが俺の役目なんだ。



…コマンドを入力する手が、無意識に震える。



揺れる指先。

生唾を飲む音。

ゼウスしか居ない空間に静けさが広がった。



「ハァ…お主は神じゃ。堂々とせいっ!」



呆れたようなため息。

ゼウスは鼓舞するような発言をした瞬間、俺の手目掛けて蹴りを入れた。



「痛っ!って、あ…」



その衝撃で、コマンドが入力されてしまう。

画面が切り替わって行く…。



ピピッ



『入力に成功しました』




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