いや、俺のかい……。え、どゆこと?(鶴ヶ島視点)
――チョコレイト・ディスコ チョコレイト・ディスコ
チョコレイト・ディスコ チョコレイト・ディスコ……――
薄暗い部屋に鳴り響く俺の大好きな曲、チョコレイト・ディスコ。
大好きであっても、目覚ましで聴くとイラッとする。
(う、うるせぇ……)
鶴ヶ島はウトウトしながら、そんな事を思っていた。
「おい〜、俺の好きな曲目覚ましにすんなよ……」
声を少し張って、苦言をていする。
(あれ、なんか喉痛い。酒焼けか……?)
身体に違和感を感じる。
少し間があってからみずほ台の声がする。
「俺じゃね〜っすよ。歌を目覚ましにするってダサいなぁ……zzZ……」
どうやらみずほ台ではないらしい。となると鶴瀬なのだろう。
「お〜〜い鶴瀬言われてんぞ、目覚まし止めて〜。あと喉痛いから水くれ〜〜」
そう言って鶴瀬のリアクションを待つが、何も動く気配はない。
(なんか、おかしい……?)
鶴瀬のお母さん力だったらすぐに目覚まし止めてくれて、そのままハーブティーなんか出されてもおかしくないと少し寝ぼけた頭で鶴ヶ島は考える。
――チョコレイト・ディスコ チョコレイト・ディスコ
チョコレイト・ディスコ チョコレイト・ディスコ……――
止められるまでリピートされるチョコレイト・ディスコのイントロ。
(ん……? なんか俺の耳元から聞こえてないか?)
「鶴瀬さんはぁ、二次元キャラの脳みそ溶けそうな声の目覚ましでしょ〜よ……。わ〜すいませんイジり過ぎましたぁ……zzZ……」
みずほ台は俺以上に寝ぼけているらしいし、このままじゃ埒が明かない。
音がする方に手を伸ばすと、なんだか懐かしい手触り。
(これ、スライド式のガラケーじゃん……どういう事?)
とりあえず、何かボタンを押して目覚ましを止める。
それから画面を顔に近づけると、200✕年と待ち受け画面の日付に書かれている。
そして見覚えのあるスライドケータイ。
「いや、俺のかい……。え、どゆこと?」
ポツリと小さくツッコミを入れながらも少しずつ頭が回り始める。
一旦起き上がろうと布団をどかすと、気持ち少し寒くて、空気がやたらと乾燥している。
(鶴瀬お母さんのハーブティーと、電気はどこだ……)
カーテンの隙間から差し込む日差しに気づき、そこに向かう途中に何か踏んで転びそうになる。
「おわ、」
しかし転ばなかった。普段なら重い身体を支えきれずに転んでいると思うのだが、どうやら何かを踏みつけながらも体勢をしっかり保っている。
「いでぇ!! 鶴ヶ島さん太りすぎですよぉ……zzZ……」
みずほ台の腕を踏んづけたらしい。
イラッとしてもっと踏んづけてやろうと思ったが、それよりも違和感のほうが気になり、とりあえずみずほ台を跨いで、カーテンを開ける。
するとまだ薄暗いが今いる部屋の全貌が目視できる。目視はできたが、まったく意味が分からなかった。
「う〜ん?」
昨日飲んでいた鶴瀬の部屋ではないことだけは分かる。見るからに古い畳の部屋。
玄関と思われる場所に電気のスイッチらしいものがあるのに気づき、次はみずほ台の背中を踏んづけて、スイッチに向かって進んだ。
「痛いって! ごめんなさい鶴瀬さん勘弁してよぉ……zZ……」
相変わらず目覚めない、みずほ台。
鶴瀬は俺の半分くらいの体重しかない、高校生から体型の変わらない不思議なヤツだ。
「鶴瀬がこんな重いわけないだろ〜……」
そう言いながら電気をつけるが、結局ここがどこか分からない。ただ見覚えはあるような気がする。
「眩しいよぉ……。鶴ヶ島さんかんにんして〜〜……」
部屋の奥からみずほ台の間抜けな声が聞こえるが、そんなことより状況が分からなすぎてどうでも良い。
「……ん?」
顎に指を当てると、いつもプニプニできる顎肉がつまめない。そして周囲を見渡すと、玄関に備え付けられた姿見の鏡に超絶スマートになった自分が映る。
「え”! ちょっと、めちゃくちゃスマートになってるんだけど!?」
驚いて思わず大きな声を出してしまう。すると部屋の奥からまたしてもみずほ台の声。
「現実見てくださいよ〜、あなた0、1トン超えでしょ〜〜……」
(とりあえずみずほ台、起きるまで踏んづけまくるか)
どうせ夢なら、面倒な事は考えずみずほ台をイジメることに決めた鶴ヶ島だった。




