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第87話 ホームにて
――ピチャン。
水音がする。腕を動かす。手錠に阻まれそれ以上腕は落ちてこなかった。
あれから何日たっただろうか?
教祖と呼ばれた男はつまらないそうな眼で私の火耐性の指輪を弄びながら眺めている。
――何も考えられない。
飽きたのか指輪を教祖が小机の上に置いた。
「女にしてはもった方だったな」
――何も考えられない。考えたくない。
「何も言えないか……まあ当然か」
――ピチャン。
聞こえるのは水音だけになった。
もう何も見たくない聞きたくない。
何人かこちらに向かって走ってくる音がする。
もうどうでもいいのに。それでも耳は音を拾ってくる。
「なんだとっ!」
教祖が怒号を発す。
その声に全身が嫌悪感と拒否感が示す。
手錠と足かせが痛い。
「冒険者たちです。それに王家御都番が後方からなだれこんできます」
――どうでもいい。すべてがもうどうでもいい。
教祖が壁を錫杖でぶったたく。その勢いで私も何回か殴られる。
――もう、別にいい。眠い。
「ちっ」
反応しない私に教祖が舌打ちする。
「何故ここがわかった?」
私をいたぶった教祖がわめく。いい気味だ。
無関心な騒ぎを子守歌に
――またまどろみの中に堕ちていく。




