第74話 サバイバル戦2
【3ハンド目】
【ブラインドレベル1:15/30 アンティなし】
BTN …… 遊都 (1440)
SB …… バロン (1635)
BB …… 巴 (1470)
UTG …… ザック (1500)
MP1 …… ステラ (1470)
MP2 …… ヘインツ (1500)
HJ …… シャーロット (1500)
CO …… アナスタシア (1485)
6と5のクラブが来た。周囲にひんやりとした私の魔力を静かに纏わせる。獲物に私を隠すように気配を殺す。雪原の窪みに閉じこもるように。サバイバル戦で序盤チップが大量に動くことはめったにないらしい。それは最初からある1500のチップさえ守れれば勝てるから。強いハンドを持ってたとしても、相手の強いハンドにわざわざぶつける必要はない。時間が経てばどんなハンドでも参加しないといけない状況がきっと来る。その時に強いハンドをぶつける。このサバイバルという形式はそもそも運の要素が強い。……そう遊都はぼやいていた。ということは3ハンド目もまだまだ様子見。フラッシュを狙えるこのハンドはブラインドが安い今ならまだ参加できる。ブラインドレベルが極端に早い形式でないこともよかった。巴が精彩を欠いている。上の空だ。バロンのスキルを食らうがままになっている。こんな幻影、魔力をぶつければはらえるのに。
「ん」
違和感を覚え、私の魔力を伏せられたハンドにぶつけてみた。もう一度見返す。6のハートと5のスペードだ。
「どうかしたんですかい?」
「なんでもない」
フロップがめくられる。
【フロップ】
ハートの9 ハートのQ スペードの4
深追いはしない。私はもうフラッシュを追うだけの女ではない。私は遊都に育てられた。ちょっと恥ずかしい思い出を思い返した火照りを鎮めるために冷たい魔力を場に浸透させる。暑苦しいバロンの魔力を追い払う為に。フロップに変化はない。こんな調子で魔力が持つだろうか。魔力を途切れさせる。
【フロップ】
ハートの9 ハートのQ ハートの4
バロンがにやにやしていて、とても暑苦しい。
「王家御都番はうっとうしさもさすがに高レベル」
「もう負け惜しみですかい」
「そんなことは言ってない!」
「早く負けて楽になりましょうや」
「遊都、巴。私が場をずっと支配するのは無理。一瞬を見逃さないで」
ここからは魔力のせめぎ合いだ。勝ったり負けたりするだろう。魔力量の差がきつい。でもレベル差は水が火に強いおかげで吹き飛ばせる。流石王家御都番の噂は聞いていた。テキサスホールデムで法の執行をする公の部隊があると。普段は王家に属するディーラーみたいに法を遵守する組織だが、法を振りかざして自ら賭け事をすることがディーラーとの違い。強権は主に調停や断罪で使われたりする。断罪が民衆を煽ることから息抜きの為とも言われていて、強引で嫌われている。けど一方でルールを守ることでも有名。断罪の場で勝って無罪を勝ち取ったものも多いと聞く。これはチーム戦。仲間を助ける為にスキルを使用していい変則ルール。だから勝てば良い。
「なあこのサバイバル戦ちょっとそっちが人数多いんじゃないか。こっちは3人しかいないんだが」
遊都が良く聞く形式の不公平をぼやく。無駄。そのルールを強いるのが王家御都番。
「だから何だ? 勝ちの目を残してやるなんて優しいじゃないか」
シャーロットが眼を細くし、笑みをこぼした。
ヘインツまで全員がチェックした。ヘインツがレイズを宣言し、バロンと目配せをしてバロンが降りた。全員がフォールドした。さっきから存在を消そうとしてもバロン、シャーロット、アナスタシアの3人からは消えることもできない。でもザックとヘインツには効きそう。全身にまとわせるように周囲のエーテルを魔力に変換する。シャーロットが鋭利な眼でこっちを見る。
「もちろん我々は全て見えているぞ小娘」
はったりだ。少なくともザックとヘインツはこちらを探る動きはしていない。けど防戦一方。押されているように思う。ハンドも良くない。嫌な予感がする。何か決定打になる方法が欲しい。私では勝てない。動けない。遊都お願い。心配して遊都を見る。
「大丈夫だ。いつも通りやればきっと勝てる」
「そう。きっとそう」
いつも通りになるように祈りを込めて、巴を私の魔力で多めに包んだ。
【3ハンド目 終了時点 ブラインドレベル1:15/30】
BTN …… 遊都 (1440)
SB …… バロン (1635→1605)
BB …… 巴 (1470→1440)
UTG …… ザック (1500→1470)
MP1 …… ステラ (1470→1440)
MP2 …… ヘインツ (1500→1620)
HJ …… シャーロット(1500)
CO …… アナスタシア(1485)




