第73話 サバイバル戦1
遊都が何かを言っている。あなたも私をせめるの? サバイバル戦1ハンド目が始まる。騎士団がバフを掛け合い。精神状態をテキサスホールデムに最適化していく。遊都やステラにも揺さぶりの強力なバフがかけられたり、もの凄く微量な違和感を感じるほどのバフが飛んできたりするが、私には一切バフを掛けていない。私は感情をコントロールできる。その情報を知っているのだろう。
「何よ。遊都もそんな眼で私を見ないでよっ」
「落ち着け。冷静になるんだ。勝てば大丈夫だから」
「私は悪くない……正しいと思ったことをやってきたから……間違ってない……これは誤解よ」
「誤解だろうと事実は事実。関係ない。お前は国家的犯罪者だ」
シャーロットが淡々と私に告げる。
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「サバイバル戦VS王家御都番 開始」
【開始時席順】
BTN …… シャーロット
SB …… アナスタシア
BB …… 遊都
UTG …… バロン
MP1(ミッドポジションワン) …… 巴
MP2 (ミッドポジションツー)…… ザック
HJ …… ステラ
CO …… ヘインツ
【ブラインド】
15/30 3分刻みでブラインドレベル上昇
【開始時アンティ】
なし(ブラインドレベル5から開始)
【開始時チップ】
1500
【開始時刻】
11:32
【勝利条件】
ラスト4人になった時点でゲーム終了。
4人中3人が生き残りで無罪放免。
【変則ルール】
チーム戦。例外的にチームの為のスキル使用可。
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テキサスホールデムが始まるハンドが配られバロンがカードに触れそうになる。あれがプレミアムハンドだったりしたら。その時遊都の声がした。
「乱数支配」
遊都があれほど隠したがっている切り札を躊躇なく切っている。
「虚栄の陽炎」
「人民統制」
私の意識がバロンに向かう。バロンが最低限のブラインド額30を払いリンプインしてくる。そのハンドに無性に参加したくなった。気がついたら私もコールしていた。
「あっしと遊都さんのどっちが強いんでしょ」
カードが揺らめいて見える。
あれ? 私のハンドこんなによかったっけ? なんでこんないいカードでコールしてるんだろ? まあいいか。私のハンドが陽炎みたいに揺らめいて見える。今の私の気持ちみたいだ。困っている人を助けたかっただけだった。ゴブリンに畑の収穫物を荒らされたって怒っていたアンダーツリーの宿屋のおじさんに、非力な人皆は怪物を怖がっていると聞いた。私より幼い女の子がゴブリンに連れさらわれ犯されたという隣村の話を聞いた時は一緒に憤った。それでもギルドは動かないらしい。なら、私もなんとかしてゴブリンを倒していけるようにしたかったけど、それがこの国では駄目らしい。何よそれ。怪物退治がこの国では軽んじられている。報酬は安いし、命をかけているのに、皆テキサスホールデムばかりだ。色んな人と話した。色んな人を手伝った。それでも帰る手段は全くわからない。不安を抱えているところに遊都はこっちで彼女なんか作ってデレデレしている。もう帰る気は遊都にはないのだろうか。私がはち切れんばかりの不安を怒りに変えて空に放出した。それがこんなことになるなんて。私が悪いんだろうか。私が間違っているのだろうか。もうスキルは使いたくない。こんなものに振り回されたくない。……でも勝ちたい。遊都と話したくない。誰とも話したくない。私は迷惑なの? 中学の時も一人だけ真面目にやってよく迷惑そうに馬鹿にされたっけな。ステラの魔力を感じた。頭がスッと冷静になる。爽やかな魔力だ。めくって眺めている私のカードの上にもう一枚カードがあるかのように見えた気がした。分からない。分からない。なんで私はこうしているのだろう。
ザックが降り、ステラがコール、ヘインツ、シャーロット、アナスタシアが降りる。
「あなた方のおおよそのスキルはあてがついていますが、お姉様の邪魔はさせません」
アナスタシアがテーブルの中央に向け両手を前に出している。
フロップのカードがめくられる。手札のカードはものすごく良いカードに見える。これは本物? 誘うようにカードが揺らめいた気がした。これは本当はいいものではないのだろう。私みたいだ。親指でこするようにカードをなぞる。何かが割れた音がした。
「レジストされましたもう手札には届かないかと」
「そうか……火耐性の指輪か」
シャーロットが私の右の親指を見る。
「だが我々は勝たねばならん。完璧にな」
「勿論存じております。それにあっしらにはアナスタシア様がいる」
「人民統制」
そのスキルに触発されたかのように周囲が異様な歓声に包まれた。




