第61話 伏見遊都という男
「優勝は伏見遊都さんです」
タキシードを着たディーラーが新参者の優勝を告げる。
「ちっ面白くねえ……またあいつが優勝か」
「そういうなって、レジオル。どこにでもいるんだ、ああいうスキルの女神様に愛されたやつってのは」
レジオルはお金に困っていた。大会賞金の送金を受け取っている遊都を羨ましく思っていた。
「あんなに金を持っていて、悩みなんてないんだろうな」
「だろうな。聞くところによると女を2人侍らしているという噂だ。1人は快活な黒髪ロングの正統派美人。太陽のような気性に、存在感のあるバランスのいい胸。無駄のなく鍛えられたシュッとした体つきには思わず振り返っちまう。もう1人は振り返るどころか、存在も希薄なんだが可愛いって噂の青髪のフード娘だ。胸のボリュームがあるらしいが長く見ることはできない。何でもよく見ようとすると靄のように消えちまうらしい。ただあの男といちゃついているところなら2人揃って見れるぜ」
むかつくけどなと男が補足する。
「いけすかねえ。男はこれと決めた嫁一筋に生きるべきだ。俺みたいにな。しかし、嫁……嫁か」
「結婚した幸せもののくせに」
「新居のための借金があるんだよ。ギアスの土地高ぇんだよ。都市だから仕方ないけどな。おかげで引っ越し頼むのに商家ではなくギルドのクエストだよ、人きてくれないと自分1人で運ぶ羽目になっちまう」
「それはご愁傷様」
――レジオルの引っ越し当日。
そこにはテキサスホールデムで優勝していた男。伏見遊都がいた。印象に残らない見た目だが、その頭にははちまきをしていた。
「な、なんで? テキサスホールデムで金には困っていないはずだろう?」
「さあな、自分でもよく分からない。恐らくこのクエストの報酬が他のよりよかったからだろう」
「でもテキサスホールデムに比べたら端金だぞ」
「そう……そうなんだよな」
「なんでこんな肉体作業なんかを」
「普段の俺だと、午後の時間もテキサスホールデムをやっているか脳を休ませる為に休憩をしていたんだよな。体力作りか。不要ではないんだよなテキサスホールデム早くてトーナメントでは6時間かかる。最大規模だと3日なんてものもある……そう考えると引っ越し作業は悪くない気がしてきた」
「つまりテキサスホールデムの為か」
「そうだテキサスホールデムの為の体力作りだ」
「あんたプロなんだな」
伏見遊都は何故かほっとした様子をしていた。
「ほらもつぞそっち持ってくれ」
「わかった」
レジオルの引っ越し作業は苦労しながらもなんとか終わった。
「なんだ。そんなに悪い奴じゃねえじゃねえか」
「ん? なんか言ったか?」
「いや、なんでもねえ。今日は助かったよ。丁寧にやってもらってありがとう。思い出の品も傷一つなしだ」
「どう……いたしまして?」
伏見遊都は人に感謝されるという経験の少ない。むしろ怨嗟や罵倒をテキサスホールデムで聞き慣れていると言っても間違いではない。ぎこちなくクエスト達成のサインの入った伝票を受け取り帰ろうとしていた伏見遊都が「そうだ、これを聞いてないと怒られる」と振り返り、レジオルに言った。
「なあ、地球という別世界に帰る方法知っているか?」




