第49話 Cランク認定戦セミファイナルB2
ぐだぐだだった。戦術もクソもなかった。
それでも楽しかった。
何も考えずに、テキサスホールデムのことだけ考えて俺は遊んだんだ。
【5ハンド目 開始時点 ブラインドレベル1:25/50】
BTN(最初) …… 遊都 (2850)
SB …… セルゲイ (1175)
BB …… ステラ (975)
手札はハートのT7色揃いか。
「レイズ150!」
「コールだ」とセルゲイ。
「コール」
<フロップ>
スペードの8 ハートの5 クラブのT
「チェックだ」
「チェック」
「ベット225!」
「降りだ。フォールド」
「コール」
<ターン>
ハートのQ
Qを引いてない可能性の方が、高いだろっ!
「ベット450!」
「オールイン」
「コール」
ステラがか細い手でカードをめくる。
6Qスペードの色揃い《スーテッド》。
俺もカードをショウダウンする。
T7ハートの色揃い《スーテッド》
勝率25%ぐらいか。
リバーがめくられる。
<リバー>
クラブの9
「これだよ、これなんだよ」
確率と運と実力がせめぎ合う。
これもまたテキサスホールデムだ。
「グッドゲーム」
ステラが驚き、はにかみながら言った。
「ありがと」
【6ハンド目 開始時点 ブラインドレベル1:25/50】
BTN(最初) …… セルゲイ(1025)
SB …… ステラ (2100)
BB …… 遊都 (1875)
「んん? 気のせいか。レイズ175だ」
「コール」
「コール!」
ハンドはスペードの2とクラブのJ
良くないが、セルゲイのペースにのせられるのも面白くない。何より今はフロップが見たかった。
〈フロップ〉
スペードの6 ダイヤの7 ダイヤのK
これはさすがについて行けない。
「チェック」
俺がステラに続いてチェックすると、セルゲイが大きな声でウェイターを呼んでいた。
「ウェイター! プリーズ!! ああそうだ水だ」
壊れそうなものを置く時のようにセルゲイはゆっくりとドリンクホルダーに入れると何か空気が凝縮したような感じがした。セルゲイのごつごつした手にちっちゃく長めなストローがいつの間にか生成されていた。水にストローを入れると手を使わず屈んで飲んだ。
「ふんっ」
セルゲイから圧力のようなものが発せられる。
しっとりとした空気がさらっとしたものに変わった。
「乱暴な人は嫌い」
セルゲイの口角があがる。
「んんっ? どうした? 押し負けてるぞ。プレストぉぉぉ」
「ここまでね」
空気が晴れた。
民族の刺繍が縫われたフードをとったステラの青髪がそよぐ。ミステリアスな眼が露わになった。
「オールインだ」
「がさつ」
「持ってるのは色揃いだろう? 勝負するのか?」
「しないわ」
伏せたカードを2枚前に出し、ステラはフォールドした。
「フォールド」
「私も水をもらえますか? あなたもどう? ええと」
ステラが頭上の表示を見る。
「遊都だ。俺も水をもらうよ」
ウェイターから受け取ったタンブラーの様な陶器に水が入っていた。ぬるい。
ステラの右手に視線が吸い付けられた。閉じた手から氷がぽちゃんぽちゃんと落下する。
「遊都もいる? 交換して」
「ありがとうステラ」と渡したコップにまたステラが氷を入れる。
「あーすまんがステラ、俺にも頼めるか? ストローと交換だ」
「ストロー?」
ステラが興味深げにしげしげと受け取った。
「ほらよ」
セルゲイが俺にもストローを渡してくる。
「なんか。いいなあ」
まったりと弛緩した空間が醸成される。
「ぶらいんどあっぷ。ぶらいんどあっぷ」
ボタンゴーレムが告げた。
和やかにゲームは進む。




