第47話 回想EPISODE.4~擬似4~
「俺はもう無理だ……」
勝負を投げだそうとした
暗い室内が明るく照らされる。
天を仰ぐと巴の炎が優しく瞬いていた。
「あなたは戦わないの?」
前衛で戦い続ける巴の影が見えた。
「俺は戦っている!」
「皆生きてるだけで何かしら戦っているものよ」
「でも、時には逃げることも大事なんだ」
サハギンの一撃を巴の影がかわす。
「逃げ続けるなんて、そんなの嫌じゃない?」
巴の影がサハギンとすれ違い際サハギンに一太刀入れる。
「振り抜くのが大事なのよ。恐怖感とか不安とか後悔とか……全て置いてその先に答えがあるわ」
「答えか……答えがあるのか」
何もない俺にも何かあるのか。
「私は前に進む」
まごついていたサハギンの集団に巴の影が向かう。
俺は前に出る巴の姿を見ているだけだった。
巴は……進むだろう。例え何もなかったとしても。
俺には何もない。守りたいものも。しなければいけないことも。人には大事なものがあるだろう。家族。恋人。夢。野心。何もない俺みたいな空っぽな人間はどう進んでいけばいいのか。何かが繋がった気がした。
「そうか……何もなくても進んでいいのか……そうか進んでいいのか」
気がついたら俺は泣いていた。
「大丈夫か?」
「それでいいのか」
手で涙をぬぐう。
「俺は……生きていていいのか」
鼻筋に垂れてきた水滴をはらう。
セルゲイの優しい眼が俺を見る。
「俺は……もう大丈夫だ」
「そうか」
それでも溢れ出る涙をぬぐった。
「やろうセルゲイ! テキサスホールデムを」
手札を親指と人差し指を使ってめくった。
Aが見える。
あの日、止まった時間が再び動き出した気がした。




