第46話 回想EPISODE.3
「やった。パッケージの賞品だ」
これで妹の手術費もなんとかなるかもしれない。
ネットで高額のライブポーカーの挑戦権を得た俺は賞金を狙ってフィリピンのマニラに向かった。
その当時、俺の家族は坂道を転げ落ちるようにどうかなっていっていた。妹は難病を患っており、その手術費のため父親は借金を重ねて失踪。母親は生命保険を頼りに自殺。そして俺は狂ったように現実から目をそらすように大金を求めてテキサスホールデムの大会に出ていた。
「久しぶりだな……まさか異世界で見知った顔に出会うとは、世界は狭いものだな」
がははとセルゲイが笑う。
「俺はできれば会いたくなかったよ、ファイナルテーブルをかけた勝負を思い出す」
「ああ、あれか」
セルゲイが表情を消し、真面目な顔になる。
「あれは、仕方ない。誰だってそうなるもんだ。あれは印象に残っている」
「AAを持っていて、嫌な予感がしたけど俺はチップを大きくかけない、スロープレイをしてしまった。自分を信じれば良かったんだ、大きくチップをかけるべきだった。そうすれば勝っていたんだ」
セルゲイが眉を寄せた。
「何を言っているんだ? お前は」
「ターン。相手のオールインに対しての警鐘を俺は無視したっ。あの時俺が降りていれば……」
「だから何を言っているんだ?」
「お前は勝っただろう?」
――あの日マニラのカジノ
スマートフォンが鳴る。メールの着信音だ。
見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない見たくない。これを見たら俺は
テキサスホールデムの会場が静かだ。音が自分の心臓しかしない。
「お前はメールを見たんだ」
やめろ。やめろやめろやめろやめろ。
「妹が死んだ……?」
そのメールは妹が息を引き取った知らせだった。
「思い出したか?」
俺は何のために……一体何のために。
あの日の俺が力なく手放したAAが表にめくれる。
公開されたカードはそのままにゲームは進んだ。
「勝っていたのか」
気がついたら大会は終わっていた。
「タイムアウトだった。あのプレイのあとお前は離席扱いにされたんだ」
テキサスホールデムの大会が終わった会場でどれだけ俺は座っていただろう。
「もうどうでもいい……」
どうやって日本に戻ってきたかは覚えていない。
駅前のパチンコの楽しそうな音が響く。
「もうどうでもいいんだ……」
「ははっ」
「ははは」
「あははっははははっははっははははっは」
「プレストぉぉぉ」
セルゲイが叫ぶ。
「どうだ戻ってこれたか」
「そうだ……。地球に戻ったところで俺には何もない」
「俺には資格がない」
純粋に楽しんでいた頃のテキサスホールデムはもうとうにできないんだ。




