第38話 ラウンズ戦3ハイレート
「土属性ですか?」
「いえ、違いますけど」
「そうですか……」
受付嬢は外の曇天を確かめながら、心あらずに答えた。
「今土属性の方には緊急ミッションが出て待機状態ですので、失礼しました。ではラウンズ戦の参加登録でしたね。レートは再確認させて頂きますが25ライルでお間違いないでしょうか」
「はい、そうです。参加は俺だけでなく」
「私も私もです」
「では2Fフロアにてお待ちください」
「あれ外ではないのか」
「高レートは屋内となっております。とは申しましても3Fはトーナメントなどの催しに使われるので実質屋内というより2Fがですね」
2Fフロアに上がる途中の階段にクリスタルを成型されたような窓があった、近づくとクリスタルの色んな場所に自分の顔が浮かぶ。なんとかクリスタルの一欠片から広場を見ると空を眺めて何か言っている集団が見えた。あれがおそらく土属性の冒険者なのかもしれない。
2Fは思ったより明るかった。クリスタルを嵌め殺しした窓がふんだんにあり、天井に通気口
のようなものまである。通気口のそばにある柱の陰からフードをかぶった路地裏で出会った博愛少女が出てきた。じとっと見つめられたので、見つめ返す。数秒が経過した後に少女は首をかしげ後ろを見た。いやいやいや。あなたを見ているから。さらりと少女はフードを取った。きらめくような青髪のショートカット。異世界ならではの美少女がそこにいた。しばらく見つめ合っているとコンパクトにまとめた肘で手を振ってくる。なんとなく返して手を振る。さらに驚いた表情を見せた。きょどった仕草が小動物みたいで可愛い。なんだこれほんわかする。
「どこを見ている。テキサスホールデムをするである」
「悪い悪いデアロ。見たことある人がいるなと思ってさ。さあ、するか」
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「ラウンズ戦 バイイン25ライル 開始」
【テーブル】3
【開始時席順】
BTN …… 遊都
SB …… デアロ
BB ……
UTG ……
【ブラインド】
25/50 6ハンド刻みでブラインドレベル上昇
【開始時アンティ】
なし
【開始時チップ】
1250
【開始時刻】
10:25
【賞金】
優勝 67.5ライル
2位 30ライル
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UTGがオールインするところから始まった。手札はA7。ドミネイトされてるか。
「フォールド」
「フォールドである」
BBがオールインをコールする。BBがA5をめくる。UTGがKQをめくった。
フロップはどちらもヒットせず。ターンでQが落ち、そのままUTGがチップをもぎ取った。
【2ハンド目】
【ブラインドレベル1:25/50】
BTN(UTG) …… デアロ (1225)
SB …… (2525)
BB …… 遊都 (1250)
ハンドはKT悪くない。
「コールである」
デアロが入ってくるSBは降りた。
「レイズ125」
「コールである」
フロップはQ86
「ふむ……」
デアロが思案する。何を悩むことがあるのだろう。
デアロの手が自分に向いた。
「颯爽たる初志の風」
こ、これは。
無骨なテーブルから花が咲き乱れる。
あたり一面から清涼な風が吹き抜けた。
俺は気づいたらお花畑の中に立っていた。
向こうに巴がいる。
「遊都~こっちこっち~」
巴が手招きしている。
「あはは待てよ~」
俺は巴と二人で追いかけっこしていた。
「遊都~」
「巴~」
巴に追いつきもたれて転んだ。空が青い。
大の字で寝転ぶ。
正座で俺の傍らにいた巴が、花輪を作っていた。
頭にかぶせようとして。
「のせてくれるよね?」
可愛らしい笑顔で。
「能力逆転、オールイン」
どこかで男の声がした。
花畑が一面業火でつつまれて、木がサハギンの燃えている頭のオブジェになる。花輪が火で燃えており、巴の含み笑顔が引きつってぴくぴくしている。
「のせてくれるよね?」
「ひいいっ、のせますのせます。コール」
あっ。
::¥巴視点:::::::::::::::::::
「ラウンズ戦 バイイン25ライル 開始」
【テーブル】16
【開始時席順】
BTN …… ルタ
SB ……
BB ……
UTG …… 巴
【ブラインド】
25/50 6ハンド刻みでブラインドレベル上昇
【開始時アンティ】
なし
【開始時チップ】
1250
【開始時刻】
10:25
【賞金】
優勝 67.5ライル
2位 30ライル
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眼に隈を浮かべた薄気味悪い少年がいた。
「お姉ちゃん初めまして、だよね。ぼくはルタ・モラベガ。ぼく双子だったんだ。だからあいつが今でもぼくを監視しているんだ。……ずっといる。ずっといるんだ。お姉ちゃんにも見えないかなあ。今ぼくの右肩の後ろにいるんだけど」
唐突な自分語りアンド危ない人キター。
「そ、そうよかったわね弟さんで」
「いや、あいつはぼくを恨んでいるんだ。ぼくは代わらない。代わらないぞ」
ぶつぶつ呟き始めたルタに引いていたが、自分がアクションを起こさないと始まらないことに気がついた。
「レイズ150よ」
ハンドはA9。幸先いいわね。
伏せていたルタがいきなり大きな声を張り上げた。
「二対一体の双子剣!!」
ルタの両肩の上に剣が二振り顕現した。
互いにいがみ合うようにぶつかりあったあと、こちらに標的を合わせたようにぴたっと中空で静止する。
「レイズ300だよ、お姉ちゃん。もう結果は見えている」
見えているんだよぉとフェードアウトする声量が怖い。
SBとBBは何かに諦めるように降りた。
「コールよ」
フロップがめくられる。
K2A
Aがヒットした。これはいける。入ってきて。
「ベット337」
「コールだよ」
K2A5
勝っているよね。迷いのないコールに引っかかったけど、ここは攻めるところ。
「オールインよ」
「コールだよ、お姉ちゃん」
私のA9のカードがめくれる。
ルタのカードは……え? 2と8??
リバーのカードがゆっくりとめくられる。
K2A58
ルタは浮いている二つの剣と一緒に笑うと言った。
「ぼくの勝ちだね、お姉ちゃん」




