第37話 水鏡(別名転移)の迷宮1
サハギンが現れた横道の先に小部屋があって宝箱が置いてあった。
「やった宝箱! それでどうする? 開ける? 開けちゃう??」
目が血走っている巴がテンション上げて言う。宝箱に喜んでいるようだが、俺たちが入ってきた通路に絶えず視線を送っている。こんな狭いところで闘いたくはない。
宝箱がきた。ここからが真骨頂。
水鏡の迷宮の別名――転移の迷宮だ。
「転移? 高難度じゃないの? ばらばらになってダンジョンではぐれたくないわよ」
ダンジョンに向かう道中、巴に確認したら案の定、補足を読んでいなかった。
「ったく、本当に転移のダンジョンだったらどうすんだよ」
「転移のダンジョンじゃないの?」
「え? 転移のダンジョンだよ。転移のダンジョンなんだけど冒険者が転移するのではなく、宝箱の中身が転移するんだ。宝箱を開けて取らずに宴会していたパーティが中身が消えていることに気づいて乱闘パーティになったり、さっきまで薬草だったのが、純金製の鎧になっていたり。入っていなかった空の宝箱が瞬きすると財宝になっていたり、よく分からないことが多いらしい」
「お宝が入っていたらすぐに回収した方がいいみたいね」
「それなんだが……スキルを試してもいいか?」
宝箱に近づいたら宝箱が間抜けな音を鳴らして開いた。
「あ、開いた」
「巴、宝箱の中身が分かるクリスタルがあるか?」
「待ってね……うーんなさそう」
「そこの真上のクリスタルが上手く映しているけど中身までは見えないな、もう少し近づくか」
「うーん、でも空っぽか入ってても小さいものだね」
また少し近づいたところで宝箱が閉じた。
「なあ巴……」
「いいよ……使ってみて、入っている可能性少なさそうだし」
「乱数支配」
時間が制止し、世界が隔絶する。
時間は約90秒……そんなにいらないんだけどな、これ以上どんどん伸びていったら使い勝手が悪くなるな。さて、どのくらい押すか。1回押してみる。変化はない。神眼……本当に見たいものを見通し、不安定な事象を固めるだったっけか? 何も見通せないんだけど、せめて宝箱の中身ぐらいは見通そうよ、頑張ろうよ。ここでは宝箱に何らかの数値もでない。宝箱を変えたいと願う。念じる。祈る。でも変わらない。チートでいいんだがなあ。
見慣れたボタンを押しているとパチンコができないフラストレーションが溜まってイライラしてきた。
気がついたら俺は連打していた。
「あ、何回押したか数えていない」
「押したのね?」
「うん押した、たっぷり押した」
「どういった仕組みなのかしら。私には何もしているように見えないんだけどね、まあいいわ開けにいきましょう、もう小部屋だわ」
小部屋に入った宝箱はもう勝手に閉じたり開いたりしなかった。空っぽそうにみえて落胆しかけたところに、底の方に宝石が10個ぐらい転がっていた。
「入ってた! 入ってた!」
戦闘よりも素早い動きで巴が宝箱からすくい取った。
宝石を取った宝箱がひとりでに閉まる。
また開けて何も入っていないことを確認して、
巴とハイタッチした。
さあ、軍資金のあてはついた。
Cランク目指してあとは駆け上がるだけだ。
宝石を大事にしまった巴と目が合う。
「レートをあげるぞ」




