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第34話 ダンジョン入場券-win up to an entry-

 それから巴は主戦場を5ライル、俺は10ライルに移していた。10ライルバイインからはライルの賞金ではなくダンジョン入場券が賞品のものもあって、何度か参加したが、参加者の質が違っていた。ダンジョン入場券を求めるのは、スキル持ちが多く勝率は著しく落ちたのだ。それで賞金がでるラウンズ戦を中心にやってはいたが、疲れが出てきた。巴も勝率が落ちてきたこともあって、資金洗浄はここまでか。二人の手持ちはこんな感じだった。


【遊都】

(4日前所持ライル)

4433ライル【期限間近】

(現在所持ライル)

→1770ライル【期限間近】

→3419ライル


【巴】

(4日前所持ライル)

4457.8ライル【期限間近】

(現在所持ライル)

→3120ライル【期限間近】

→1344ライル


「すごいな巴も増やしたのか」

「まあね」

 ぐったりしつつも巴は片手でVサインした。

「じゃあならすぞ送金(トランスファー)」



【遊都】

(交換後)

→2445ライル【期限間近】

→2744ライル


【巴】

(交換後)

→2445ライル【期限間近】

→2019ライル


「ようやく半分。残り1日じゃもう無理ー」

「そうだなそれで提案なんだがダンジョン入場券に変えるのはどうだ?」

 手元にあった1枚のダンジョン入場券を巴に渡す。ダンジョン入場券には- win up to an entry -と書かれていた。現地語と馴染まないそれは文字というより装飾の意味で書かれているのかもしれない。

「ダンジョン入場券? ライルの方がいいんじゃないの?」

「ダンジョン入場券もギルドで買えるから、減価期限間近のやつを消化できる。10ライルのトーナメントの賞品にもあるんだが……」

「勝てないもんねー」

「仕方ないだろ? スキルが何一つないんだ。それで25ライル直接払えば買うことができる。割高だけど」

「ふーんまあいいんじゃない? 期限とかがあったらもう嫌だけど」

「期限はないし、ギアスの大穴ってダンジョン以外はどこのダンジョンでも使えるらしい」

「ダンジョン……ダンジョン」

「ダンジョンでこう……敵を倒したりしてなんかしてたらスキルが身について、高レートのテキサスホールデムでも勝率が上がるかもしれない。高レートで勝てるようならターバインのCランクトーナメントもいけるだろう」

「たしか……王都の次に大きい都市の名前がギアスでそこに入る為にCランクが必要なんだっけ?」

「そう。市民になるつもりがなければな」

「ここより大きい都市ね。いいわ。ダンジョン入場券に換えましょう。買ってきて。買う量はまかせるわ。送金(トランスファー)。私はちょっとぶらぶらしてくる」


じゃあまた後で、巴と別れてダンジョン入場券を買いに受付に向かった。


「Cランクが遠い」


 さすがに疲れたな……しばらくテキサスホールデムはいい……脳死したい……パチンコ打ちたい。

 ダンジョン入場券を100枚購入して合計で101枚になった。テンションが落ちていると、向こうから凄いハイテンションな巴が駆けてきた。


「ねえ見てみて! これ! 退治クエスト!! ターバイン来て初めて見たわ!!」

「うおっ、めっちゃ珍しいな」


 ターバインのギルドで多いクエストは雑用とか日払い労働みたいなのばっかりだった。ファンタジーなのにこれはちょっとおかしくないか。巴が取ってきたクエストはダンジョンの重要施設にはびこるスライム討伐だった


「なんで誰もとらないんだ? 報酬もいいのに」


 見出しに初心者クエスト! 安心安全! 高収入! 限定1パーティと書かれている。よく見るとクエストにはダンジョン入場券はいらないらしい。


「ダンジョン見に行くついでにクエストやるか」

「うん!」


巴が勢いよくうなずいた。





「うん……漏れそう」


 あんだけがっつり系食べるから。

 初めてダンジョンに来たのにいきなり緊急事態になった。俺たちはクエスト依頼の職員に案内されてターバインからほど近い、ダンジョンにやってきていた。


「来て早々すみませんがトイレありませんか」

「もちろんありますよ。ではトイレにご案内しましょうか」


 案内の最中に職員が今回のクエストについて話す。重要施設でのスライム活用を思い立ったのは真城つばさ様です。


 巴の顔が青い。


「この先になります。この先にあるものとあと18カ所トイレはありますね。これまでダンジョンのトイレというのは不衛生で病床の発生源となっておりました。これをこのままではいけないと奮起されたのが真城つばさ様です。ダンジョンのトイレ事情が一変しました。衛生観念という概念をもたらした真城つばさ様の功績は未来永劫伝えられるでしょう」


 職員がもったいぶって手で指し示す。


「これが真城つばさ様がご考案された」


 巴が全力でトイレに駆け込んだ。


「厠(かわや)でございます」

「きゃああああ」

「どうした巴っ」

「来んな! 変態!」

「臭いのよ!! このトイレ! なんで?? ねえなんで??」


――ダンジョンはボットン。


 外で待っている俺に職員さんが話しかける。


「では重要施設のスライム退治お願いしますね。そんなに必死な表情でトイレに来たがるなんて。なんて熱心な冒険者さんなのかしら。またお願いしますね。これ残り18カ所の重要施設厠の位置の地図です。では、私は窓口業務に戻ります。終わりましたらご報告よろしくお願い致しますね」

「トイレか……スライム退治。臭いだろうな。まあいいや、燃やすの巴だし」


 くさいくさい連呼している巴にどう伝えればショックが少ないだろうか。

 涙目の巴が厠から出てきた。


「なあ巴……重要施設……ここらしいぞ」


 がくんと音が聞こえた気がした。

 腰から折れた巴はただただ絶望するのだった。


 あと18カ所あるのは黙っておこう。


 ……初めてのダンジョン。


 今日の俺たちの冒険はここまでだ。


「なんで水洗じゃないのよー!」

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