第26話 SU1「…………」
「やっぱり減っていたわね貯金」
「まさかどこも20%価値を減らした額でしか取引してくれないとは思わなかった。1週間切るとどこもそうなるらしい。全額騙されて持って行かれるよりマシだけど」
「今日も朝一から走り回ったけどそもそも店開いてないしな。価値が減るのは諦めるか」
「減っても大金だしな」
「そうねガーネットに感謝しないと」
巴が思い出し笑いをした。
ガーネットか。ガーネット。スキルの引き出しが多いやつだった。そういえば巴も同じ炎使いだったよな。
「まとえるんじゃないか? 巴の炎」
血迷った俺はそう結論を出した。
中央広場の噴水のほとりで勇猛たる闘志の炎を俺たちはやってみようとしていた。
「なんかこう気分が盛り上がって、高揚感に包まれてだな。あれは悪くなかった」
顎に手をかけふむふむと巴が同意する。
「確かに気分が盛り上がったら火力が増すわ……できるかも」
「よしやってくれ」
「俺の気分を盛り上げるような感じで」
「とりあえず私の気分が乗ってきたわ」
こんな感じよね。長剣の刃部分に炎をまとわせる。
うんうん。なんかいけそうだ。
「いくわよっ勇猛たる闘志の炎」
「おお、これこれ……? なんか焦げ臭くないか」
「あっ遊都髪……髪燃えてる」
「いや服だろ燃えてるのは」
「あわわっ弱火弱火」
「火をくべてどうするっ!止めてくれ」
「そんな芸当できたらやってるわよっ」
じわじわ服が燃え上着が消失した。
「これはまずいっ」
何かないかと周囲を見る。泉っ。飛び込むしかない。
はねる。水しぶき。煙とともに俺の一張羅は天に還った。
「やばいっ巴全裸だっ」
「憲兵っ! いないっ! よしっ!!」
「よしっじゃねえええ服だよ服っ。とりあえず股間だけでも隠さないと何かないか何かないか」
「広場だもん何もないわね! 人が居ない早朝なのが救いかしら。とりあえずこの辺でなんとか凌いで、代わりの服を探してくるわっ」
「頼んだぞ巴っ! お前だけが頼りだ! 俺を社会的に殺さないでくれっ」
サムズアップした巴があっという間に消えていく。一人だ。心細い。
とりあえずあそこの路地裏に行くか。
親切な人とかいないかな。
ひっそりとした路地裏。土埃に溢れた場所だが、建物の隙間から差し込む光のおかげで神秘的にすら思える。突き当たりにもごもごとした集団を見つけた。猫だ。猫に餌をやっている人とそれに囲まれている人だ。
「そこの博愛精神に溢れたお方……猫を一匹貸して下さりませんか」
猫に夢中だった少女が驚いたように顔をあげる。
「わしの股間を隠したくてのぉ……」
少女が俺を見て固まる。
……俺不審者じゃね??
空気も固まる。
いや、冷気を感じた。
風邪引く前かな??
「あれ体が動かない」
「息は吸わしてあげる……変な人」
「何やってんの?」
後ろから巴の声がかかる。
「いや体が動かなくてなんだか寒いんだ」
「凍ってるわよ遊都」
「えっ?? じゃあそこの博愛少女が」
「何言ってるの? 誰もいないじゃない」
俺の前に回った巴が言う。いや隣に居るんだが。
そのフードをかぶった少女は眼をまん丸に見開いて珍しい物を見るように俺を見つめている。
「…………」
小柄なフードに身を包んだ少女はクスリと笑うと巴の横をすり抜けて去って行った。
「不思議な人だ」
「やっぱりおかしくなってるわね。とりあえず解凍するわ。レンジでチンのイメージでいいのかしら?」
「いやお前殺意高過ぎない??」
両手をこちらに向け、悩む巴に身の危険を感じた俺は食い気味に言った。
「サーモンの炙りのイメージでお願いします」




