第22話 下級冒険者Dランク認定戦(3)
¥巴視点
「負けちゃった」
バーカウンターにいたグレイソンの隣に巴は腰を下ろした。
グレイソンは苦手だが嫌いという程ではない。
「グッドゲーム!」
ふわふわしていた巴をグレイソンはそう言って歓迎した。
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ヨーヴン認定戦 3位入賞 徳川 巴
賞金2000ライル
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遊都:クラブのQ クラブK
ガーネット:ダイヤのA ハートの9
〈フロップ〉
クラブの9 クラブのT ダイヤの6
ガーネットがフロップでハーフポッドをベットして遊都がそれにレイズして応える。
ガーネットが鑑定してすぐゲームを降りた。
「なんでガーネットは降りたの? ワンペアできてたでしょ?」
「あ? 遊都がT持ってる可能性があったからだろうな。遊都はオールインになってもよかった。フラッシュを引ける可能性もあるし、現時点で出てる一番強えカードTよりも強いQかKを引いてヒットする可能性もあるからな。だからオールインしてもいいぜって言う意思表示でレイズのあの額を賭けたんだろう。それをガーネットは嫌った……ってとこか」
「ふーん。ちょっと面白いじゃんテキサスホールデム」
遊都が最強のカードAAを引く。
遊都はAAをフォールドした。
「なんでAA降りたの?」
遊都は降りたカードAAをちらりと見せて。
それを見たガーネットはぶち切れている。
「……俺にも分からん」
酒を一口含みグレイソンは続けて言う。
「だが、アンダーツリーに来て良かったぜ。ここはまだテキサスホールデムだ」
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¥ガーネット・アトランダム視点
私ガーネットアトランダムは国家間の行商を生業とする商家に長女として生まれた。初め鑑定のスキルが宿っていると分かった時両親は落胆したものだった。物の効力を測定できるなんて知識があれば誰にだってできるものだったし、何より鑑定を使った時膨大に押し寄せてくる情報量で酷い頭痛がし、使えないいわゆる外れスキルと思われたからだ。私は努力した。情報量の少ない状況環境を整え、スキルに慣れ、魔力や精神力も鍛えた。あらゆるデータを観測できるようになった私は将来を約束されたようなものだった。家業が順調に進むにつれ、どうして私の家が未だに行商などをしているかに気づいた。王都が横槍を入れていたのだ。権力に同調する司法、行政、立法全てが敵だった。ありとあらゆる手段で貴重な武具などの私財は削がれ、手元に残るのはわずかな財産。私はこの王都に叛逆を決意する。王都はテキサスホールデムを中心に動いていると言ってもいい。伝説級の武具、ダンジョン使用権、当覇賞すべてはテキサスホールデムで勝利するものに与えられる。テキサスホールデムはスキルの使用が可能だ。この情報は都落ちした冒険者から大枚はたいて吐かせた情報だ。その冒険者は絶対に自分が口を割ったと話すなとひたすら念を押していた。その冒険者は誘蛾灯に惹かれる虫のごとく情報料を持って再び王都へ消えていった。情報は秘してなお価値が上がる。これはその類いのものだ。私にはテキサスホールデムでも通じる鑑定がある。だがそれだけでは勝ち上がれないだろうという直感もあって、私は燻っていた。
そんな私に転機が訪れた。アレクに出会ったのだ。テキサスホールデムで使用できるスキルは冒険者のスキルなんかよりもさらに希少だ。これで将来化けそうなアレクに投資した。まだアレクには何も有効なスキルがない。けれどもそれを補ってなお経験値100倍は魅力を感じた。アレクのスキルは今後どんどん増えるだろう。もしも使えるスキルがあるなら、王都に行く伝があるなら、アレクは農村から一人巣立ち、私の手元には収まらなかっただろう。まずは鑑定でアレクの性格を把握した。ぎらついた男性が怖くて……得た結論はスイを奴隷としてあてがうことだった。アレクがスイに夢中である限り私に害はない。スイという奴隷を買う資金など本来農村の少年は持ち得ない。そう、私が立て替えたのだ。アレクの将来と引き換えに。そんなつまらないことでつまずいてられないのだ。私の野望は行商人では収まらない。いつしか私は賭博狂いと揶揄される王都に行くことを決意していた。――確率を制するものは世界を制す。私はそれを体現するのだ。
全てを話す必要はない――最後に勝つのは私だから。テキサスホールデムをやるものならば、誰だってスキルの使用には口を閉ざすのだ。鑑定の真価を知るのは私だけでいい。
「ねえ、貴方。私たちのパーティに来ない?」
冒険者としては3流だけど、テキサスホールデムの方は及第点ね。ミスがない。さっきのAAフォールドは理解できないが、あれで乱されたのも確かだ。恐らくミスを誘う為の布石だったのだろう。私とは違う信念を持ってプレイしている。欲しい。遊都が欲しい。
「なっ、ふざけんなっ! なんでそんなやつがいるんだ」
アレクが場外から叫ぶ。
部外者の準致命的言及だとグレイソンに指摘され、イリアからは進行の阻害をしたということで次で冒険者資格の剥奪を宣言され、アレクは沈黙する。
ゲームが進む。進む中で私の中で疑問が膨らんでいく。
なぜ?? やはり押し切れない。確率的に正しいプレイをしているはずなのに。
その答えをこの男は持っているはずだった。
「あなた経験者ね……それもかなりやりこんでいる」
「だったらどうする?」
「どうもしないわ。私のものにならないならば、全力を持って叩き潰す」
遊都がフロップでチェックしたのを見て、ターンでレイズしたらリレイズが飛んできた。
ターンで落ちたのはブランクのはず。
「なっなぜそこでチェック??」
遊都は沈黙を保っている。
「ありえない……ありえないわ」
この男のプレイひとつひとつに心をかき乱される。
ハーフポッドレイズを仕掛けてきたので降りた。
場には8KA。
遊都はハンドの4のポケットペアを私に見せつけてくる。
私が歯が立たない?? まだ王都に入ってすらいないのに??
「認めないわ……そんなの認めない」
冷静なその顔を引っぺがしてあげるわ。
「勇猛たる闘志の炎」




