第19話 テキサスホールデム(チュートリアル戦)※ポジション図有
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【開始時席順】
BTN (ボタン) ……モンド
SB (スモールブラインド) ……アレク
BB (ビッグブラインド) ……フランカ
UTG (アンダーザガン) ……遊都
UTG+1(アンダーザガン+1) ……イリア
MP1(ミッドポジションワン) ……ガーネット
MP2 (ミッドポジションツー) ……巴
HJ (ハイジャック) ……スイ
CO (カットオフ) ……グレイソン
【ブラインド】
10/20 10分刻みでブラインドレベル上昇
【開始時アンティ】
3
【開始時チップ】
1500
【開始時刻】
11:00
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「チュートリアル戦inアンダーツリー 開始」
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右手の構えたところに2枚のカードが裏向きで配られる。そうだカードの持ち方は……。
まわりを見渡し。胸の前に構える。ハンドは両方がクラブのT7。グレイソンとイリアだけカードはテーブルに伏せたままちらりとめくって確認する。
アンダーザガン……銃を向けられているような危険な位置ハンドはT7の両方がクラブのスーテッドか……この後に8人行動するんだ、入る理由はないが……本番の為に弱く見せておいた方がいいのか??
「……コール」
イリアがノータイムでフォールド。
ガーネットがアレクを一瞥し、何かを諦めたかのようにフォールドを宣言した。
巴はあたふたと「コール」と宣言した。
バッティングか……巴が何で入ってきたか正直読めん。というか仲間が入っている時に……でもインプラインオッズが高ければ……いやしかし…………チーム戦って難くない?
「コール」とスイ。
「ん。コールだ」とあくびをしながらグレイソン。
「フォール……ド」
モンドが言い終わるやいなや叩きつけるようにアレクが叫ぶ。
「おっさんパーティが参加か。かかってこいよっどうせ俺には勝てないだろうがな。オール、インッ!!」
どかっと1497のチップを前に出す。
フランカが降りる。
「タイムバンクは60秒」
イリアが待ち時間を告げる。
(開幕オールイン……こいつは道化か道化を装った何かなのか。見たい正直見たいが)
「フォールド」
カードを伏せて前に出す。
「フォールド」
巴が同じように伏せてカードを前に差し出した。
「フォールドですぅ」
スイも降りる。
グレイソンは……無表情でフォールドをしていた。
「くっくっく。ゴブリンキング戦でもちんたらやってた思っていたが、テキサスホールデムでも愚図でのろまだな、俺のこんな手に退くなんてよお。冒険者やめちまった方がいいんじゃねーか?」
手のひらから2と3の手札がこぼれ落ちる。かっはっはとアレクが馬鹿にした笑みを浮かべる。
「なによ勝ててたじゃない」
ほらと色違いの9とJを見せびらかす。
巴……見せびらかすのはルールじゃないんだぞ。
「これで俺がチップリーダーだなっ」
鼻をこすってアレクが自慢げに言った。
【3ハンド目 ブラインドレベル1:10/20】
「レイズ300っ」
ガーネットが開始早々しかける。
巴がそれに乗る。
「コール」
スイとグレイソンはフォールド。
モンドも「コール」と応じる。
間髪入れずにアレクは攻める。
「オールイン」
こいつハイパーアグレか??
高笑いするアレクに対し、無感動にフランカがコールする。
「ふーんそんなにいい手入ってんのか??」
「いえ、1ライルにもならない勝負したくないだけです。私は敵を育てる趣味はありませんので」
「まあいいけどよ」
さて、ここでいうフランカの言も一理ある。手の内は見せたくない。本番ではないからだ。だから適当に大きな勝負に適当なハンドで乗って適当に負ける。極力情報を与えないという考えだ。逆に情報を集めるということもできる。今からハンドレンジを誤認させるとかな。ただ、ここは初心者だらけだ。運の要素も幾分大きい。何より、巴に慣れてもらう必要もある。少しでも多くのハンドを。そして優勝賞金のかかった本番で入賞にくらいついてもらうのだ。「だからここは……」
「フォールド」
「チキンめ」
「なんとでもいえ」
イリアもフォールド、ガーネットもフォールド……当然巴もフォ……
「私もオールインよっっ!」
「おまっこれ練習だって、慣れてない人の為の練習だって!」
「何よ勝ちにいくのがそんなに悪いっての??」
「いやまあ勝つ確率あるし、どんな手なのかもわからないけどさ」
モンドは降りたか。
トントン
「スリープレイヤーズ!!」
参加者は――現在チップリーダーアレク、フランカ、巴
「AQだ」ダイヤのAとクラブのQだ。
アレクが片手で持っていたカードを表にする。
「98よ」ハートの9とクラブの8
ひらひら手を振りながらやる気なさそうにフランカがカードを表に返した。
「Qと10」スペードのQとクラブの10
口をへの字にして巴が公開する。
コミュニティカードがめくられていく
スペードの3 クラブのQ ダイヤの5 ダイヤのJ ダイヤのT
――ショウダウン
巴が満面の笑みを浮かべている。
リバーのカードがめくられるまで死んだような顔してたのに。
「私のハンドはQと10よっ! ツーペアね。まあアレクには勝ったかしら」
ふふんとアレクを見下ろす巴。
アレクは苦々しそうだ。
「次は負けねえ」
ぎりりと悔しそうな表情で巴を見返すアレク。
どうでもいいけど……おまえら負けてるからな。
「勝った…………勝ってしまった……こんなところで運をっ……」
勝ってるフランカが一番へこんでるし、何だこれ。
「あー終わっちゃった」
「優勝賞金かかってるんだぞ」
「そう? でもこの勝負にはかかってないわ」
けろりとした巴の表情を見て……俺は駄目だと悟った。
理屈ではない……理屈ではないがテキサスホールデムは勝ちを放棄した瞬間から負けていくゲームなんだ。 運とか流れとかは確かにある……あるんだが、優勝は本当に勝ちたいものにしか訪れない。……訪れないんだ。
チュートリアル戦inアンダーツリー 9位 徳川 巴
【6ハンド目 ブラインドレベル1:10/20】
残りわずかなチップのアレクとモンドをガーネットが飛ばした。
遊都もっと参加しなさいよーと味方からの野次が飛ぶ。
参加できないハンドなんだよっ。
チュートリアル戦inアンダーツリー 8位 アレク
チュートリアル戦inアンダーツリー 7位 モンド
【12ハンド目 ブラインドレベル2:15/30】
BTN …… イリア(約1300)
SB …… ガーネット(約3300)
BB …… スイ(約650)
UTG …… グレイソン(約2000)
HJ …… フランカ(約4850)
CO …… 遊都(約1400)
一番弱いスイを狙ってしかけるっ。
が、俺が参加するラウンドだけおかしい。参加率があがるのだ。
具体的にはグレイソンとイリアが必ずといっていいほど入ってくる。
なぜだ? なぜ狙われている? この場では初心者《フィッシュ》プレイはしていないはずだが。
「こおぉる」眼だけを炯々と光らせグレイソンが入ってくる。
視線を向けるとそらすように酒をつぎやがる。
フランカはフォールド。
ハンドはAJ仕掛けれるハンドだな。
「150」チップを差し出しレイズする。
イリアが間髪入れずにコール。
ガーネットはフォールド。良かった狙ってるのはBBのスイだ。
トントン
「フォープレイヤーズ!!」
プリフロップがめくられる。
クラブの6 ダイヤの4 そしてスペードのJ
スイ……こいつはコーリングステーションだ。
ゴブリン討伐の時もそうだが、こいつは自分の意思がない。戦闘では放られ敵陣の中に着地していた。敵を翻弄してはいたが、逆にそこに敵を倒す意思はない。かけられたチップにとりあえず参加し続けるタイプの初心者だ。逃がす手はない。追っかけでコールしているグレイソンとイリアもそうかと聞かれれば似ているようで違う。グレイソンとイリアはまるでこちらを試すようなベットをしてくるし、なんなら長引かせるという意思を感じるぐらいチップをかき集めたりもしている。テキサスホールデムは逃げてばかりでは何も得られないのだ。そしてもう残り少ないチップ。こうなるととる行動は当然1つだ。
チェックで回ってきた権利をタダで回してやる必要もない。
「オールインだ」
イリアはフォールド。
スイはうなり声をあげて散々迷って……コールした。
グレイソンは……フォールドだろ?? 様子見したいもんな??
鋭利な眼と眼が合う。
このおっさん酔ってねえな。
「くっくっく……フォールドだ」
トントン
「ヘッズアップ!!」
手元の手札を広げる。AJだ。
びくっとスイが消えそうな声でA6を宣言する。
ターンはクラブのQ リバーはスペードの8 あとは絡まないコミュニティカードだ。
大体わかったな。あとは俺がいなくなったらどうなるのか。そろそろ抜けるか。
チュートリアル戦inアンダーツリー 6位 スイ
「……才能あるぜ……お前」
73色揃いでフラッシュをたたき出したフランカに向けてグレイソンが言った。
「まあそれが続けば王都でも金には困らないだろうな」
「やめてください……大事なのは次なんですから」
ますますクソ手でチップをかき集めたフランカが2位で。
最後の1ハンド。フラッシュをフルハウスでグレイソンがねじ伏せてゲームが終わった。
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「チュートリアル戦inアンダーツリー 終了」
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チュートリアル戦 9位 徳川 巴
チュートリアル戦 8位 アレク
チュートリアル戦 7位 モンド
チュートリアル戦 6位 スイ
チュートリアル戦 5位 伏見 遊都
チュートリアル戦 4位 イリア
チュートリアル戦 3位 ガーネット・アトランダム
チュートリアル戦 2位 フランカ
チュートリアル戦 優勝 グレイソン・コート
「……テキサスホールデムには慣れたのか?」
ギルドの片隅で食事をとる。
安いががっつりした香草焼きでにんにくっぽいものを好んで巴はよく食べる。
「あなたも食べときなさいよ、力でるわよ」
巴はほいほいと俺の盛られた食事ににんにくっぽいものを積み重ねていく。
まあ食べるけど。1日は臭いつくんだよなこれ。
「正直よく分からないわ。よく分からないものになんでこんな大金がかかってるのかもよく飲み込めていない。さっきのゲームだって一瞬で終わってしまったわ、アレクには勝ってたはずなのにチップは全部取られるし、私のハンドはQ10で弱くなかったはずなのにそれより弱いフランカの89に負けてるってことでしょう? 何が強くて何が弱いかもわからない。ちょっと勝てる気がしないわね……ゴブリンの方がマシよ」
巴は肉にフォークをつきたて口に運ぶ。
もぐもぐと不機嫌そうに咀嚼している。
「今からわずかな時間で初心者にスターティングハンドの強さを教え込むってのもな。俺は次の勝負優勝に絡むぞ」
「え? 遊都も弱いんじゃ??」
「途中までは様子見。メンツのプレイングスタイルを確認していた。あとは自分の情報を渡さないように適当に負けたからあの順位だ。狙うべき初心者は分かった。それさえ把握すれば序盤で負けることはない。あのメンバーで狙うべきはスイ、イリア、アレクだ」
キョトンとした様子で巴の表情が止まる。食事の手は止まってないが。
「俺は経験者だ……テキサスホールデムは結構やりこんだ」
まあこの世界ですることになるとは思わなかったけどな。
「ふーんじゃあスイ、イリア、アレクを狙えばいいのね。参加したらコールすればいいんでしょ?」
「テキサスホールデムにはこんな言葉がある……見渡してカモがいなければ、自分がカモだとな。勝てるイメージあるのか?」
「……ないわよ。負けそう」
「忍耐力が試されるが初心者でもできるプレイングスタイルが一つある」
「私でもできるプレイングスタイル」
飲み込むように巴が口にする。
「そうだ……この戦法はニット…………いやロックという。まあ意地でも動かないって感じかな。日本人には合ってるみたいな話を聞いたことがあるが、馬鹿にされてるのかなんだか。まあ簡単だし初心者が慣れていく手始めにはうってつけだ」
「勝てるんなら当然のるわよ……負けっぱなしは面白くないもんね」
「最初に配られる2枚には当然優劣があるんだが、中でもとびきり強い手札には名前がつけられている。プレミアムハンドってな。AAとKKそしてAKになる。この3つは特別視される……それに今回はQQもいれよう。この4種類の組み合わせ以外はプレイするな。岩のごとくひっそりとフォールドし続けるんだ。そしてこのハンドが来たら……」
「……オールイン」
「そうだ。強い手札持ってることは悟られるなよ。強い手札は弱くみせる。弱い手札は強く見せるだ。あと強いて言えば……」
「強いて言えば??」
「アレクがのっかってくるか迷っているならとびっきりの挑発をかましてやれ」
俺は笑いかけながら巴に言った。
「なにそれ? 私の得意分野じゃない??」
巴も楽しそうに相づちを打った。
沈んでた空気も晴れていい感じにテキサスホールデムできそうだ。
――下級冒険者Dランク認定戦が始まる。




