第15話 ゴブリンを1000体撃破せよ
「連打演出かこれは?」
連打してまあ、皆長押しするだろうけど、画面が数字で埋まっていき合計数は結局のところよくわかんない、あれだ。そんな視界におさまる不自然な数値の多さに俺は辟易する。ところどころ数字が重なって見える為見ない方が良さそうだ。
ブリーフィングでは、囲まれないようにするのが常道なのだろうが、幸いゴブリンは1方向から漏れ出すように溢れており後方に注意を割く必要はない。陣形は魚鱗。森林や河川があるこの地形では無難な運用だ、だそうだ。
二等辺三角形の先端をゴブリンの集団に向けるような陣形で、底辺の中心には大将を据えるという。
先頭の一角にはゴブリンをよく撃破しているという理由で、俺たちとアレクパーティが並べられている。
まあ、一部が奮起しそうな配置だ。頼むから撃破数とか競わないでくださいよ。
「残念ながらアンダーツリーには絶対的エースなんて贅沢なものはありません。なので大将はギルドから希望があったイリアちゃんに担ってもらいます。いざとなったら戦況をリセットしてもらいましょう。まあ本人の資質によるものでそれがいつになるかはわかりませんが、いいですか皆さんピンチになったらイリアちゃんになすりつけてください。イリアちゃん丈夫なんです。それで多分なんとかなります」とはフランカさんの言だ。なんていうかいい加減である。最初は恐怖を感じていたゴブリンもスキルを使えばなんてことなく、今はもうただのゴブリンだ。独白もいい加減になる程度のものである。
――戦端。
林の影から興奮したゴブリンの一部が騒いでいるが、突出する様子はない。
このまま小康状態なのか? とはいかないのが冒険者というものだろう。やつらは短気。
しびれを切らしたアレクがぞんざいにスイを放り投げる。
「スイ、行ってこい」
「ひィィィやぁぁああっっっ」
「アレクまだ勇猛たる闘志の炎かけてないわ」
「ああん? あのスキルあるから死にゃあしないだろう」
悲鳴とともに戦場の踊り場に着地したスイは半ば諦め悲哀感を伴った叫び声をあげると、ゴブリンの小集団に突っ込むと腕の爪を振り回すとゴブリンに擦り傷を作りながらまた別の集団に突っ込んでいく。一見無謀に見えるが翻弄していると言ってもいい速度で跳ね回るスイはどんどん敵を作って引き連れてこっちに戻ってくる。林の中にはさっきまで陰に隠れていたわずかばかりの慎重さを失った、怒りの形相のゴブリンがなだれるようにして向かってきていた。
「感謝するんだな。林からだしてやったぞ」
「あんたいっつもあんな無茶ばっかしてるわけ?」
「無茶? なんのことだ?」
「何ってスイの扱いよっ! あんたいつか酷い目に遭うわよ」
「ふんっ、俺の奴隷に指示するなよ、あれは俺のだ」
力業なスイの翻弄でゴブリンの集団がやってくる。
「遊都、五月雨にお願い。まずは削って切り込む。あとなんかむかつくこと言って」
「はいはいもう削ってますよ~~最近太った??」
さっきから林をはみ出たゴブリンに向かって射出をし、矢を山なりに飛ばしている。
弓なりに飛ばしているのは威力が落ちる無駄な軌道で、自然落下の速度ぐらいしかのダメージを与えれないところだが……俺にはスキルがある。
「乱数支配」
スキルも断続的に使う。
ゴブリン17 2/199
毎度おなじみ平倭なボタンを押す。押す。押す。
すると時々部位に大きくぶれる時がある。
ゴブリン17 右手 15/35
――確定して部位破壊をする。
そしてとどめを巴がするのが最近の専らな作戦だ。
乱数支配というけど数字だけの操作ではなくどうも結果を左右している気もするが、ない頭をいくらひねってみてもよく分からない。まあこういうもんだろうということで便利だから使っている。そしてもう一つボタンを押している時にどうみても世界が止まっているんだが時間停止でもないみたいだし、どちらかと言えば意識だけ抜け出しているような幽体離脱のような感触なのだが何なのだろうな? このスキル。まあ、幽体離脱もしたことないからわからないんですけど。そしてユニークとそれに付随するようなアクティブスキルは感覚要素が強すぎて巴に相談してもなんの解決にもならなかった。俺も感情のガス欠感がとか言われても理解できなかった。
こりゃあ打てばあたるか。
山なりに打っていたのを水平軌道に横に斉射し始める。
4射ずつ打っている。なぜか5射目は消えるのだ。
この距離ならスキルはいいというか面倒い。強敵というわけでもないし、適当に弱らせればいいだろうと 黙々と回転数を上げていく。
巴は歩く少年誌だ。最近斬撃を飛ばすようになった。正確には剣線に沿った炎を飛ばすらしいが、まあ多分少年誌に生まれ損なったのだろう。
「いまいちね」
飛んでいった炎に巻き上げられるゴブリン3体を見て巴が呟く。
「俺の心のこもった口撃が効かないとは」
「口先だけでしょう。分かるもの私は痩せていて美しいって聞こえるわ」
「」
「何か言った??」
「いえ何も」
「とは言えこのままでは撃破数あいつらに負けるわね」
横目でアレクパーティを見ると、なるほど確かに効率が違う。
スイがトレインして引っ張ってきた集団にスイとのすれ違いざまアレクが凶悪な大剣の横薙ぎの一撃で集団の胴という胴を真っ二つにしている。アレクが切り損なったり、くたばりそこなったゴブリンにガーネットが空中に待機させていた6つの火球を順次ぶつけてとどめを刺している。なんというかバランスがいいな。ガーネットが指示を出してまたスイが走り出している。へー、戦闘ではアレクが指示しないんだな、前衛だからかな。アレクもガーネットの指示を聞いて暴れているので意外な一面を見た気がした。
林の奥からゴブリンリーダー数体が出てきだした。ゴブリンの上位種だ。
ゴブリンリーダー 1/399
マックス機だ。この国の警察はどうなってる。規制はやくしろ。
「来たわね大物よ」
巴が斬撃を飛ばし牽制するが、ものともせず前進してくる。
ゴブリンを子鬼という表現も納得するぐらい、ゴブリンリーダーは鬼そのものだった。
身長はおれより高く180cmくらいか。もう身の危険しか感じないレベルだ。
「なんか本当にむかつくこと言ってよ。立ちすくみそう。何言っても許すからさ」
「そんなこと思いつかない……って」
巴の桜の着物が眼に入る。そういえば、巴はすごい大事にしてたな、その着物。
「……アレクがさ、巴の着物すごい馬鹿にしてたんだよね。気持ち悪い格好とか似合わないとか」
「ほう」
巴にバフがかかる。剣身に炎が迸り、うねり、仄暗く燃えていく。
「遊都わかってるわね」
「ああ、援護だろまかせろ」
「ええ、あとでアレク殺すわよ」
「いや嘘なんだが」
「嘘でも殺す」
「本当にあったま来たぁ」
壊れた人形のようにふらふらと大男のようなゴブリンリーダーの進行方向に塞ぎ出る。
剣術もクソも知らない巴は細身の鉄剣を大上段に構えると炎を立ち上らせ振り下ろした。
残心――崩れ落ちるゴブリンリーダーを見て巴はほっとしたように肩の力を抜く。
すごいじゃないかと駆け寄った俺をぐりんと見て、笑ってない眼で話しかけた。
「遊都もついでに殺す」




