第14話 回想EPISODE.2
「ゴブリンの親玉かあ」
眠れない。月のない夜空と世界を照らす王都の魔法陣を見上げる。
夜は嫌いだ。一人に夜は広すぎる。
私は感情豊かな子供だった。
いつだっただろうか私は死を理解した時、おじいちゃんに甘えていた時、この幸せは永遠に長く続かないと気づいた時、私は泣いた。そしてその翳りを帯びた想像が現実になるたび、私は泣いた。私は1人が怖い。例えどんなやつだろうとも、家族の待っている先へと繋がるものに思えて、立ち去られるのが怖い。遊都に頼ってしまったのもきっとこれだ。遊都の先に地球が、日本が、家族があるように思えて、なんなら思わせぶりなことをしてでも繋ぎ止めたかった。私はきっと1人では耐えられない。
私には大事なものがある。
成人式の日、高速道路を通って車で送ってくれたおじいちゃん。そのおじいちゃんに向かって逆路線からはねたトラックが突っ込んできたのを後部座席で眺めていた。
また私の大事なものが壊されると思った瞬間。
悟ったのだ私は終わると。
感情は恐ろしいほど凪いで、私は無になった。
だから足元に現れた魔法陣も遠い夢の世界のようでなんの感情も芽生えなかった。
一張羅の私の大切な晴れ着を抱きしめて寝る。
大丈夫繋がりが思いがあればきっと生きていける。
「生きてるよね……おじいちゃん」
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夜は好きだ。夜に背景がなると熱い演出が来る。俺は物思いにふける方だった。それでもパチンコを打っている時だけは全てを忘れていられた。
俺は金にとりつかれていた。
金を稼がなくてはならない。
俺には何もないのだから。
この国は資本家のものだ。
人間は平等でもない。
力が欲しい。
政治家が間接的に何万もの国民を殺したとしても1人直接殺した人間の方が問答無用で悪いとされる。何が権力者を守っているか? そう金だ。大事なものを守るには金が要る。
俺がテキサスホールデムと出会ったのは必然と言える。1万円で億万長者になれる可能性があるものはほとんどないが、テキサスホールデムには可能性があった。可能性に賭けた。賭けて掴みかけて逃がしてしまった。
そして俺はテキサスホールデムの世界から逃げ出した。
逃げなければ、何者かになれていただろうか。
普通の人並みの人生を送れていただろうか。
いやあれは駄目だ。時間がかかりすぎる。
時間を浪費して無意味なものを積み上げてその先にいったい何があるのだろう。
積み上げていった世界大会。我武者羅にやって運をたぐり寄せた……はずだった。
AA手持ち
嫌な予感がした俺はプリフロップでチップを大きくかけず、
スロープレイをしかけていた。
自分を信じれば良かった、大きくチップをかけるべきだったのだ。
そうすれば違った未来があったかもしれない。
――ファイナリストを賭けた12人中暫定11位
嫌な予感がした自分を信じ切れなかった。
ターン。相手のオールインに対しての警鐘を無視した。
「プレストぉぉっ!」あいつの高笑いが脳内に響く。
今の自分はどうだ信じることができるか?
確固たる信念とか、経験もそうだ。何一つ頼れない。
俺には大事なものがない。
日本に帰って逃げるようにして現実を見ないようにしてパチンコに溺れる日が続いた。
パチンコをやらなければ頭がおかしくなる。
「パチンコは悪です」
巴の声が聞こえた気がした。
パチンコだけでない。ギャンブルというのは世間一般に評判が悪い。
ギャンブルをするのはそんなにいけないことなのだろうか。
そしてそれがギャンブルをしないことが正しいギャンブルであったとしてもなのだろうか。
まあもうどちらにせよすることはないのかもな。
明日俺は死ぬのかもしれない。まあそれすらもどうでもいいか。
もし、できるのならば……。




