1次試験開始の声
広い校内を歩いて校庭に出ると、受験者らしき人たちがすでに集まっていた。見たところ、試験監督はまだ来ていないようだ。
俺は駆け足で受験者たちのいる場所へ向かった。集合時間ギリギリで、なんとか間に合った。
一息つこうとしたそのとき、受験者の何人かが揉めているのが目に入った。
「お前、なんでここにいるんだ? お前みたいな身分の低い奴は、冒険者でもやってろよ」
高圧的な態度と口調で、相手を罵っている受験者がいた。身分が低い……? 何者なんだろう、と考えていると、相手の声がさらに強くなる。
「お前といると、俺たちの格が下がるんだよ!!」
暴力を振るいそうな気配がした。咄嗟に体が動いていた。
「暴力は止めろよ!」
彼は俺を睨みつけ、低い声で吐き捨てるように言った。
「なんだ、お前は。俺が誰だかわかんねぇのか」
「君が誰かは知らない。でも、誰であろうと他人に暴力を振るうのは、魔法警察を目指す者として良くない」
はっきりと言い切る。
彼はピキッと顔を引きつらせ、俺の胸ぐらを掴んできた。手を出そうとしたその瞬間——
「そこの二人、何をしている」
低く、しかし驚くほど落ち着いた声が響いた。振り返ると、試験官らしき男性が立っていた。
彼は俺を軽く突き飛ばすと、平然と言い訳した。
「これは挨拶の一環ですよ」
試験官の男性は、それを聞いて楽しそうに笑った。
「そうかそうか、それは変わった挨拶だなぁ!!」
俺はよれてしまった胸元の服を直し、静かに立ち上がる。
それを確認した試験官は、声の調子を変えて言った。
「よし、ではこれから一次試験を始める」
ついに、この時が来た。俺は気持ちを切り替えた。




