最終回②:世界一美しい皇妃の誕生、そして大聖堂に響く祝福の鐘
ガルディニア帝国のまばゆい大聖堂。
鏡の中に映る自分を見て、私は夢を見ているのではないかと、自分の頬を小さくつねった。
純白のシルクに、無数の最高級ダイヤモンドが散りばめられたウェディングドレス。
かつてボロボロだった私の髪は、帝国の宮廷美容師たちの手によって、まるで絹糸のように艶やかに編み込まれ、純白のヴェールがふわりとそれを覆っている。
「……エレイン。本当に、世界で一番美しい。あまりの眩しさに、目が眩みそうだ」
振り返ると、そこには純白の礼服に身を包んだ、私の愛する人がいた。
「氷の死神」と呼ばれたガルディニア帝国の皇帝、ガイウス・フォン・ガルディニア。
今日は、私たちの結婚式──そして、私の皇妃就任式の日だった。
「ありがとうございます、ガイウス様。……ふふ、でも、まだ少し緊張してしまいます」
「緊張することはない。君の隣には、常に私がいる。君を傷つけるものは何一つ、この国へは入れさせない」
ガイウス様は少し拗ねたように眉を下げると、私の腰を優しく引き寄せ、その額にそっと不意打ちのキスを落とした。
彼の大きな手が私の背中に回され、その温もりが伝わってくるだけで、不思議と緊張がスッと溶けていく。
やがて、荘厳なパイプオルガンの音が大聖堂に響き渡り、巨大な扉がゆっくりと開け放たれた。
「──っ!」
扉の向こうに広がっていたのは、地響きのような大歓声だった。
大聖堂を埋め尽くす貴族たち、そして街の広場に溢れんばかりに集まった帝国の国民たちが、色とりどりの花びらを降らせながら、心からの祝福を叫んでいる。
「聖女エレイン様! 万歳!」
「ガルディニア帝国の美しき皇妃陛下に、栄光あれ!」
誰も私を「身代わり」とも「偽物」とも呼ばない。
それどころか、私がこれまで陰でどれほど努力してきたかを知る帝国の国民たちは、まるで本物の女神を迎えるかのような熱狂で私を歓迎してくれた。
ここでは、私が私であるだけで、こんなにも多くの人に愛され、必要とされている。
不覚にも、視界がじんわりと涙で滲んだ。
聖壇の前で、ガイウス様が私の手をとり、真摯な眼差しで私を見つめた。
「エレイン。かつて君が流した涙の数よりも、何万倍もの幸せを、私は君に贈り続けると誓おう。私の命が尽きるその瞬間まで、君だけを愛し、君だけを甘やかし続ける」
「はい。私も、ガイウス様を一生お支えし、あなたの隣でずっと笑っていることを誓います」
鳴り響く祝福の鐘の音。
私たちは、割れんばかりの拍手の中で、深く、甘い、誓いのキスを交わした。
かつてすべてを奪われ、凍える雨の中に捨てられた少女は。
今、世界で一番優しい皇帝陛下の腕の中で、誰よりも幸せな皇妃となったのだ。
──けれど、この最高の日のお祭りは、まだここでは終わらない。




