表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
8/8

最終回③:氷の皇帝は、夜になると独占欲を隠さない

盛大な結婚式と、夜遅くまで続いた披露宴がようやく幕を閉じた。


賑やかな喧騒から離れた、皇帝の私室。


パチパチと暖炉の火が爆ぜる静かな部屋で、私はドレスから着替え、薄手の柔らかい寝衣ネグリジェに身を包んでベッドの端に腰掛けていた。


「──お疲れ様、エレイン。疲れただろう」


背後からかけられた声と同時に、ふわりと大きな影が私を包み込む。


シルクの部屋着に着替えたガイウス様が、私の後ろからそっと抱きつくり、その逞しい腕を私の腰に回した。


「ガイウス様……っ」


「……もう『様』はいらないと、昼間も言ったはずだが?」


耳元で囁かれた低く甘い声に、背中がゾクゾクと震える。


昼間の凛々しい皇帝陛下の姿はどこへやら、今の彼は、まるでお気に入りの玩具を片時も離したくない子供のように、私に全身で甘えていた。


「あ……ガイウス、……その、本当に、私があなたの妻に、帝国の皇妃になったのですね」


「まだ実感が湧かないか? なら、何度でも分からせてあげよう」


ガイウスは私の肩口に顔を埋め、 絹糸のような私の髪に、そして白く細い首筋に、優しく、だけど深い独占欲を込めて何度も唇を押し当てていく。


「ウォーカー公爵家での君の扱いや、あの無能な王太子の寝言を聞いた時、私は世界を滅ぼしてやろうかと本気で思った」


「まあ……」


「だが、今こうして君が私の腕の中にいる。……エレイン、君をあの国から救い出したのは、帝国のためでも、聖女の力が欲しかったからでもない。私が、私個人が、君を自分のものにしたかったからだ」


出会ったあの雨の夜から、ずっと秘められていた彼の本音。


冷徹皇帝と恐れられる彼が、私一人のために、これほどまでに熱く、狂おしいほどの愛を注いでくれている。


「私も……あなたに拾われて、愛されて、本当に幸せです。ガイウス」


私が彼の腕の中で振り返り、その緋色の瞳をじっと見つめて微笑むと、ガイウスの呼吸が不意に止まった。


次の瞬間、彼の瞳に大人の男としての、危険で、だけど愛おしい「熱」が灯る。


「……エレイン、それは私を誘っていると受け取っていいのか?」


「えっ、あ、そういうわけでは──んっ」


言いかけるよりも早く、私の唇は、彼の熱い唇によって塞がれた。


昼間の大聖堂での誓いのキスとは違う、深く、 奪い去るような、情熱的な口づけ。


頭が真っ白になり、息が詰まりそうになる私を、ガイウスは優しくベッドへと押し倒す。


横たわる私の髪を愛おしそうに梳きながら、彼は私の額、頬、そしてもう一度唇に、 宝物を慈しむようにキスを重ねた。


「一生、君を離さない。明日からも、その次の人生も、君が呆れるくらいに愛し、甘やかし続けよう。……愛している、私の可愛い皇妃」


「私も、愛しています……ガイウス」


暖炉の柔らかな光が、お互いを求め合う二人の影を大きく壁に映し出す。


かつて凍える雨の中にすべてを捨てられた少女は、今、世界で一番熱い愛の巣の中で、 永遠の幸せを手に入れたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ