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シドとシノの大冒険  作者: レイン
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懐かしきかこの二人旅

「シドはあれからどんな所に行ったの?」


「多分お前が思ってるほどはどこも行ってねえよ。基本集合地区の周りでブラブラしてただけだ。」


冒険者だなんだと言いつつ、思い返すと身近な所での冒険や依頼がほとんどだったと思い返す。よほど面白そうな依頼があればラズリードとかに行った時もあったが……実際の所行動範囲が広まったのは、あいつが来てからだったと思う。


「みんなで旅してた時は、色んな所に行ったよね。体の小さかった私達にとっては、もう世界中周ったんじゃないかって思うぐらい。でも……それよりこの世界はもっともっと広かった。」


「そうだな。行っても行ってもまだまだ知らない場所があるのは確かだ。上にも下にも横にもな。」


空に浮かぶ大陸だってあれば、どこまで続いてるのか分からないような洞窟……一生を費やしてもその全てを解明するには全然足らないんだろう。


「こんなに長い事お互いに冒険者やってるのに会えなかったのは、互いの行動範囲が違ったからかもしれねえな。」


「そうかもね……私、人の居ないような場所ばっかり行ってたから……」


「……けどもう、一人じゃねえ。お前には他に頼れる奴がいくらでも出来た。エイスの町にはお前の助けになってくれるようなお人好しが山ほど居る。」


そしてやがては、お人好しの総裁のような奴との対面も待っている。


「シドも、その一人だもんね。」


「俺は違う。俺は美人に優しいだけだ。」


「……ふふ、分かった。じゃあ私、美人だから助けてもらおうっと。」


冗談めかしに笑っている。ようやくこんな風に自然なやり取りが出来るまでになったのはシンプルに良い事だろうが……


「(まさか、思いがけずも二人旅になるなんて思いもしなかったな。)」


俺達は今、この広い大地を二人のみで闊歩している。動く雲、青い空の下で。


「(まさかたまたま他の奴ら全員予定が入ってるとは……)」


思い立ったが吉日の日が全員に該当するわけでも無く、急遽予定を合わせられたのは当事者の俺達二人だけだった。


……


「傷ついてる子の心を傷つけるような酷い真似したら、どうなるか分かってるわよね。」


……


と、ラミにわざわざ釘を刺される始末……そこまで言うならお前が一緒に付いて行ってやれよと思わないでも無い。


「(あの女ならちょっとした魔物ぐらいだったら倒せそうな気がするがな……)」


分からん。ああいう気の強そうな女の事はどうにも分からん。


「ゴーバスは何度か行った事あるの?」


「んー……まぁ、多少はな。」


フォニカを見つける事に全力を尽くしはするが、それと同時にオルテナ自身が少しでも気持ち的に元気になれるようにしてやろうとぐらいは思っている。こいつがしょげているのはどうにも、気になってしまい他の事が手につかなくなりそうだ。


「ゴーバスの地にはよく行くんだけど……これから行く首都のゴーバスには1回か2回ぐらいしか行った事無いんだ。」


「本当に珍しい人探しだな。普通人の多い所を探すもんだろうに。」


「一人で探さなくちゃって思ってたから……」


「一人で探すのは仮に良いとしても探し方がなってねえだろ。全くもうちょっと頭を使え頭を。」


「……(むかっ。)」


やば……怒っている。


「……さて、今日はいい天気だ。」


ええい、しーらない。


「……シドはいつもそうやって私の事バカにする……私、頭良く無いの気にしてるのに……」


「んな事気にしてどうすんだよ。つーか頭の良い悪いって何を以て決めるんだよ。」


「色んな事知ってるかどうかでしょ?ライラックは大人だったからかもしれないけどいろんな場所の事知ってたし、フォニカは色んな魔法の事知ってたし……私凄いなぁって思うのと同時に私ももう少し頭良かったらみんなの役に立てたのになぁって思うもん。」


「全然思わねえな。まぁ人は人だ。それに誰だって知らねえ事は知らねえだろ。知ってる事しか自分には分からねえんだ。知らねえ事を情けないと思う必要が無い。」


「シドはそうやって割り切れるから良いよね……幸せそう。」


……この野郎、人を悩みの無いお気楽者みたいに言いやがる……フォニカもそうだが、こいつら調子に乗るとすぐこれだ。本性を出しやがる。


「ジハードも頭良かったし……あの中で頭良くなかったの私とシドだけだもん……今でも結構気にしてる……」


「何シレっと俺をバカチームに加え入れてんだ!」


「ふーんだ。だって人をバカって言う人はバカだもーん。」


「こんの女……調子に乗りやがってからに……!」


「あ、魔物来た!ほらほらシド、戦闘だよ戦闘。」


「ブモォッ!!」


「鬱陶しい野郎が鬱陶しいタイミングで!!」


……別に難なく倒せる魔物ではあるが、頃合いとしては良い所だろう。少々の怒りを覚えつつも、こんな風にチャラけた話が出来るって事はそれだけ余裕が出て来たって事ではある。悪友だったとしても、一応過去の知り合いである俺が居る事でフォニカが居なくなってしまった悲しみと、それを一人で探し続けて来た過去を薄れさせる事に繋がっているんだと好意的に解釈したい。


「あちょーッ!!!」


「(……元気印が復活したんだ、ちょっとぐらいの暴言は大目に見てやるとするか……)」


溜まったフラストレーションは魔物にて発散。そんな道中を経て、俺達はやがて首都ゴーバスへと辿り着いたのだった。


……


「賑やかなんだね。」


「そうだな。首都って言うぐらいだしな。」


人工の多い国の一番大きな都市、それは人も多いだろう。


「フォニカ……ここに居る?」


「そこまでは言わないが……けど俺は一つ考えがある。」


「考え?」


「言ったろ?まずフォニカがちゃんと今もどっかでぽけーっと歩いてるのかを確かめるのが先って。その為に必要なのは何だ?」


「えー……?居場所も分からないのに……確かめる方法なんて……」


「アイテムだアイテム。そもそも人を探せるようなアイテムがあれば一気に距離は縮まるだろう。」


こいつ、冒険者の癖にアイテムに頼ろうって言う頭が無い。一人で探すって事を自分だけの力で探すって事とはき違えてしまったのだろう。使えるものを使い尽くすが一人で探すと言う事なのだ。


「ゴーバスには図書館がある。用途に応じたアイテム探しにはもってこいの場所だ。」


「それじゃあ図書館で探し物をするんだね。」


「そうだ。行くぞ、ついて来い。」


「うん、分かった。道案内お願いするね。」


……こうして道端を歩いていてフォニカと出くわす可能性も、0では無いだろう。


俺は一つの仮説を立てている。オルテナが世界中をくまなく探し回って、それでも見つけられなかった以上……人の居ないような場所……洞窟やら山やら、そんな場所にはそもそも居ないのではないかと。


オルテナが10年も一生懸命に探したのなら、手掛かりの一つも掴めないなんて考えられなかった。だとするなら考えられるのは、そもそも見当違いの場所を探していたからでは無いだろうか。


逆にそのおかげで人気の無い所は除外して考えるとなると……むしろ探すべきはこのような繁華街みたいな場所だったりするかもしれない。案外普通にどこかで暮らしているかもしれないとまで俺は思っている。それなら一番楽でいい。誰もが一番救われるハッピーエンドな終わり方だろう。


「図書館をご利用ですか?」


「ああ、前にも使った事がある。」


「少々確認いたします。」


前に聞いた時は入るのに手続きがどーたらこーたら言われたが、2回目だとそういったのもちょこっとの確認だけで良いらしい。


「お待たせいたしました。確認が完了しましたのでどうぞお入りください。」


「ありがとうございます。」


仕組みはよー分からんが、まぁいいや。今後もちょくちょく利用する事もあるだろう。それにこの図書館には……


「おーい、ちょっと良いか。」


「おや、確かシドさんでしたね。そちらの方は……いえ、まだお会いした事がありませんね。お知り合いの方ですか?」


ちょっと小柄な美人司書が居る。眼福。


「初めまして、私はオルテナといいます。今日はこの図書館を使わせていただきに。」


「オルテナさんですね……なるほど、分かりました。私は司書のパティです。探し物でしたら私が何かお役に立てるかもしれません。遠慮なくお申し付けください。」


「早速なんだが、人を見つけられるようなアイテムを探している。何か心当たりは無いか。」


「人探しのアイテム……」


早速尋ねたそのキーワードをもとに、パティはそのポーズを取る。


「少々お待ちください。」


恐らく頭の中からそれに合致するものを探し出しているのだろう。


「ねえシド、パティさん一体何を……」


「まぁ見てろ、まぁまぁビビるぞ。」


急かそうとするオルテナを待たせる。やがて……


「……お待たせしました。人探しが可能なアイテムについてですが……この5点の図書のこの辺りを探すと良いかも知れません。」


「え?え?」


スッと書かれたメモには、恐らくその図書の題名とそれがある場所、そして……何ページから何ページまでという事までが書かれていた。


「ページ数までかよ……前より凄いんじゃねえのか……?」


「人探しの為にここに訪ねてくる方は結構多いので、そのキーワードについては探し慣れているようなところです。ご参考になれば幸いです。」


人間の記憶力ってのは極めればこんな領域にまで達するのか。流石に俺には絶対無理な事だな……


「シド、今のって、どういう事……?」


「良いからこのメモの通りの本を探すぞ。そうすりゃ一発だ。」


イマイチ状況が飲み込めていないオルテナを納得させるべく、書かれた図書の場所へ行き、そのページを開く。本のタイトルは旅に役立つアイテム図鑑……


「……あっ……!」


そして目的のページには、ずばりこう題名が宛がわれていた。『探したいものがある時に役立つアイテム』と……


「パティさん……もしかしてこの図書館の本全部……?」


「記憶してるらしいぜ。だから知りたい事を尋ねれば一発で教えてくれる。」


「す、凄い……そんな事が出来るなんて……」


「……来る途中、頭の良い悪いなんて何で決まるのかって言ったが、流石にこれは頭が良いって言うべきなんだろうな……」


「頭が良いだけじゃ済まないよ……世界には、そんな人も居るんだね……」


パティの技術に改めて驚くが、ひとまず当初の目的である目的のアイテムを見つける事にする。


「(一番良いのは、フォニカがどこに居るのかが分かるアイテムだな……)」


「引っ付き磁石だって。両者がそれぞれを持ってればそれを持って歩く事でその人が居る方向が分かるって……」


「……元から持ってないとダメな奴だな……」


……残念、もし手に入れたらあいつにでも持たせておこうか。


「万里鏡……欲しいものや探してる人をその鏡に言うと、そのもの自身とその周囲の風景が映し出されるんだって。」


「悪くはなさそうだな。けど……見る限り結構デカいんじゃないかこのアイテム。」


とても簡単に持って帰れるような大きさには書かれていない。ひょっとすると家とかに置いておくようなアイテムじゃないだろうか。


「夜のサスペンス……身に着けていると驚くような出会いがある……かもって書いてある。」


「不確定過ぎる……」


イマイチ要領の得ない中途半端な効果のアイテムばかりだった。もっとちゃんとしたような奴も書いてはあるのだが、それらの入手難易度は極めて高い。


「(狙って探し出せるようなものじゃないな……)」


ちょっとばかし頭を悩ませる俺の目に、ようやく一つ飛び込んできた文字列があった。


「……これ良いかも知れねえぞ。」


「四方八棒……?」


効果は掻い摘むとこうだ。探し物を思い浮かべて棒を倒すと12.5%の確率でその探し物の方に倒れ、探し人を思い浮かべて棒を倒すと25%の確率でそっちの方へ倒れる。フォニカを確実に探すのには些か不確定ではあるが、俺はもう一つの付随効果の方に目をやっていた。


「(もしも探し物が見つからない場合、棒はどちらにも倒れず立ったままとなる……)」


もし……それがこの世に無かったら……棒は倒れない。つまりこれを使う理由としてはフォニカを探すというよりは……その生死を確認するという意味合いになる。


「……でも、これもレアアイテムだよ?」


「だがよく見て見ろ。他のアイテムと違って、このアイテムが手に入りやすいとされている場所が書かれている。」


木漏れ日の森。その場所にてこのアイテムの出現報告が相次いでいると……そう記されていた。


「これ、ゴーバスにある森だって……!」


「……行ってみる価値は、あるだろうな。」


その後俺達が木漏れ日の森の詳しい場所をパティに尋ね、調べた事は言うまでも無かった。


そして……明日の行き先がそこになる事もまた、至極当然の成り行きだった。

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