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シドとシノの大冒険  作者: レイン
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一歩を歩み出す私達

ジェイさんとエルさんの戦いを見て思った。きっと私が勢いよく名乗りを上げたとて、きっと太刀打ち出来ないまま為す術無く敗北していただろうと。


……私はまだまだ弱いと改めて実感した。


けれど決してそれだけのネガティブな感情しか生まれなかったなんて事無かった。


私に出来ない事をしてくれる人を信頼する事。少し辛くても信じる事。出来ないという目の前の事実から目を背けず、今ある力で壁を乗り越える事。


……皆さんの力あってこその私。それを、再認識する事が出来た。


それもこれも心強く頼もしい力と優しい心あっての事……私はいつもいつも周りに居る人達の協力あってこそだな……


「おおい!おおい!」


っと……離れていたから少しばかり忘れかけていた。パリィくんの事を。


「こっちの避難は済んだけど……終わったのか!?」


「お前も見てたんだろ?そこに横たわってる死体が3体ともう一人は飛んでっちまったよ。」


「そうだよな……他には敵も見当たらないみたいだし……お前達のおかげだよ。ありがとな。ちょっと話をしてくれるだけで良かったのにおいら達の為に戦ってくれてさ……」


「誰もお前らの為なんて言ってねえだろ。たまたまではあるが俺達にとっての敵だったから勢いでそうなっただけだ。」


……そう。その通り。思った事を包み隠さず言うならば今シド様が言った通り。


……私もまだ、気持ちにしっかり整理など出来ていない。良い魔物と悪い魔物なんて区分け出来る程賢くない。


「結果的だったとしてもいいよ。やっぱりガロミオだけじゃなくて、人間は良い奴もいっぱい居るんだよな。」


……


「……パリィくん、一つ、聞いてもいいでしょうか。」


「?」


……理想事を夢見るのは、止めたはずだ。


「……もしも……」


叶わぬ幻想にしがみついたとて、現実は残酷なのだと。


「……もしも……みんながみんな本気で頑張ったら……人と魔物……少しは分かり合えるような日が……来ると思いますか?」


「みんなが、みんな……」


……我ながら、なんてくだらない質問だろうと思う。


……それを真っ向から否定したのは……しようとしているのは他ならぬ私じゃないか。パリィくんにだって私自らその意志を伝えた。


……魔物は人類の敵。私にとっても……みんなにとっても……仇。


……あの子達の……仇。


なのに私は……そんな相手と未だ……分かり合えないかどうかを考えているというのか。


「……難しい……ってか……基本的には、無理だと思う……おいらにはやり方、思いつかない。この森の奴らだっておいらの言う事を聞いてくれてるって言うよりはガロミオを怒らせたら自分の身が危ないからってだけで……人間を信頼してるなんて事、これっぽっちも無いはずだから……それが、魔物ってものだから……」


「……そう……ですよね……」


……誰に言われるでも無く、私自身が分かっていた事じゃないか。それを今更第三者に確認などする必要は……


「でも……上手くは言えないけど……絶対、無理っては思わないんだ。すっごくすっごく難しいかもしれないけど……可能性って言う意味で言うなら0じゃないのかもしれない。嬢ちゃん達を見て、そう思った。」


「……私達を見て……?」


「有り得ないってのは、どんな状況でも無理って事だろ?でも思えばおいらとガロミオはなんだかんだ何十年か一緒に居る。お互い殺し合うとかそういう間柄じゃなくて、お互い仲良く……って程では無いけどさ。もしそれがガロミオとだけじゃなく……嬢ちゃん達ともそんな風に輪が広がって行ったなら……それは0じゃなくて、限りなく0に近いかもしれない1って事じゃないのかな。」


……0に近いけれど、それでも……0では無い。


「おいらにもこれから先の事は分からない。都合の良い話かもしれないけど、これから先の未来……おいらみたいに人間相手に興味を持つような奴が生まれてくるかもしれない。そうなったら……人と魔物の未来ってのも……少しは、変わるのかな。」


……今の私には、その未来予想図は見えない。


でも見えないからと言って、可能性が無いわけでは……無い……?


「随分とあれこれ考え過ぎてるようだが、お前に一つ一番簡単なやり方を教えてやろう。」


「シド様……」


簡単な、やり方とは……?


「この森の奴らがそのガロミオって奴が強すぎるのを恐れて歯向かう事が出来ねえってんならそれをこの世界中全てに広げてやればいい。」


「……と、言いますと……」


シド様が言っているそれは……まさかいたって単純明快な……


「この大陸に存在する奴全てが恐れおののくような圧倒的な力を持てばどの魔物も抵抗しなくなるって事だ。流石に奴らとて死ぬのが分かってるのに戦いを挑んできまい。どうだ簡単だろう。はっはっは。」


……確かに簡単だ。笑っちゃうほどに。


「力で押さえつけてしまうというやり方は人間の世界ではあまり褒められたものではありませんが……あるいはそういう方法も……あるのかもしれませんね。」


「けど魔物が全員震えあがるような力ってどんな力だよ。」


「う~ん……指先からビームを打つだけでどこに居ても倒せちゃうような力とか!?」


「それはケイじゃんか。」


「ええ?!じゃあもしかして私が人類の救世主なの!?」


驚いてる。ビームなんて凄い物を撃てるのは唯一無二の力と言える。あながち間違いでは無いのかもしれない。


「……ふふ、すみません皆さん。私が変な事を言ってしまったせいでお話がだいぶ脱線してしまいました。パリィくんもすみませんでした。今の事はあまり深く気にしないでください。」


「……いいっていいって。嬢ちゃんが魔物との付き合いを随分気にしてるってのは分かるしさ。」


……この子は、魔物だというのに随分と気を使ってくれるものだ。


……こうして話していると、ほんの僅かだけど凝り固まっていた自分自身の気持ちがようやく和らいでいるのを感じる。


「……パリィくん私……やっぱり魔物は嫌いです。この世界の魔物達は出来る事なら全て……滅ぼしたいって思ってます。事情は……言えませんが……」


「……」


面と向かってそう言われて、良い顔をする相手は居ないだろう。けれどこれは嘘偽りなき私の本音。


「でも……その……そんな酷い事を言っておいて何なんですけど、その……それでもパリィくんの事は……嫌いじゃありません。むしろ……可愛らしくてその……結構好きです。」


「……嬢ちゃん……」


……だからこそ、これも今の私の本音。


たとえいくら憎しみと怒りと言う気持ちで押し隠していたとしても、それでも私がこのような気持ちを抱いている事は事実。


「……これまで酷い事を言ったり冷たい態度を取ったりして……すみませんでした。」


……私はここまでの非礼を、詫びる。


誰の為とか体裁の為とかでは無く……私自身がそうしたかったというワガママだ。


ここまで私達に真摯に向き合ってくれたパリィくんへの……最低限の礼。


「そ、そんな……謝ったりする必要無いし……人間だったら魔物の事嫌いなんて当たり前だって……それを申し訳なく思う必要無いって。でも……可愛らしいってのはちょっとなぁ!おいらこれでも超長生きしてるし、可愛さよりもカッコよさや風格を評価して欲しいんだ!」


「カッコよさ……」


「風格……」


……


「……すみません。ちょっとその役目は私じゃない誰かにお願いしてください……」


「なにぃっ!」


ごめんパリィくん……私じゃパリィくんの求める良い部分を見出す事が出来ないよ……


「とりあえずその小ささじゃ風格もクソもねえよ。変な声してるし。」


「変な声ってなんだー!」


可笑しいって言うよりは、中性的を越えて少々高い声なので、まるで変声期前の男の子のような可愛らしい声と言う感じだ。加えて性格的にもわんぱく少年と言うのが一番しっくりくる。


「まぁでも、パリィみたいに話の分かる魔物が居るってのは私も分かったよ。良い経験だった。」


「うんうん。」


「かと言って魔物全体と仲よくしようとは思わねえがな。」


「それで良いんだってきっと。変に歩み寄ろうとするより、勝手にこういう風になってる方がおいらは好きさ。」


……損得勘定を気にして付き合うのは、真の付き合いじゃない……ただ一緒に居たいという気持ちがいつしか絆になっていく……かな。


「とりあえずテメエにはトドメを刺さないでおいてやるよ。つーわけでお役御免だ。とっとと家に変えれ。」


「酷ぇ!兄ちゃん人でなしだな!せっかくこのままの流れで出口まで案内してあげようと思ったのにさ……」


「案内が無いと出れない程そんなに入り組んでる?」


「うんにゃ?正直な所後はそっち方向に進んでいけば多少の早い遅いはあってもどっちみち出られるよ。」


「なんと。そうでしたか。」


「んじゃあなおの事要らねえな。あばよカエル。」


「こらそこー!おいらはギューネーだって!」


私的にはちょっと大きなカエルさんって感じだけど……それを言ったらまた怒らせちゃうか。


「……じゃあパリィくん色々ありがとうございました。これで一旦私達は自分達の町に帰ります。そしてその、お願い事をした事ですが……」


「ああ、分かってるって。ガロミオが帰って来たらちゃんと伝えとくよ。嬢ちゃん達が来たって事と……異世界人を狙ってるさっきの奴らみたいなのが居るって事……」


「後、私達はエイスの町に居るから気が向いたら来てって言っておいてよ?」


「分かってる分かってるって。まぁ実際行くかどうかはガロミオの機嫌次第だから絶対行かせるとは約束出来ないけどな。」


もし、ガロミオさんが来てくれたら、その時はしっかりと話をして……出来る事なら協力を仰ごう。今は一人でも多くの強い人の力が欲しい。


他力本願であっても……今私が尽くせる全力がそれならば……出し惜しみなどするべきでは無い。やり尽くせるベストを尽くす。


「(……今日、この瞬間、きっと何か未来に繋がる道が開けたはずだ。)」


私はそう、確信している。


奴らとの確執も……そして、私自身の確執についても。


……


「ねえ、シノは……魔物が嫌いなんだよね?」


「あふ……」


さっきまさにみんなの前でそう言ってしまったし……そう言う事だ。


「んなのシノじゃなくても当たり前だ。目の前に現れたら問答無用で斬るに限る。魔物なんて生きてても良い事無い。」


「やっぱり、シド様もそう思います……よね……」


……前の世界でシド様に口を酸っぱく何度も言われた。確かにそれは正しいと思う。だが同時に……それ以外の道を見ようとしている私自身に……迷いがあるのも事実だった。だからさっきそれを打ち明けてしまった。


「ただ、これだけは一つ言っておく。」


「?」


「無理だと決めつけて諦めたら、その物事は絶対に達成不可能になる。だが逆もまた言えるってな。」


「……それは、つまり……」


「諦めない限りは……可能性は0にはならない。ただそういう話だ。別に難しい事じゃないだろ?」


……諦めない限り、0に限りなく近い……だけど0では無い。それこそが可能性。


「(私が……諦めない限り……)」


「……色々、考えてみます。私なりに……」


「おう。そうしろ。」


……その言葉、この先必要になるかどうか分からないけれど……私の心の中に深く刻み込んでおくべきであると……何故かそう思った。


「もし困ったり抱え込んじゃいそうなら、私達に相談してね。シノの相談事なら私達何でも協力するから。」


「……ありがとうございます。タンザナイトちゃん……」


可愛らしいその暖かい言葉に返礼するように頭をなでなでしてあげた。


「えへへ。」


私と違って本当にかわいい。あふぅ。

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