表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

死の最初の宗教

街はすでに崩壊した戦場と化していた。


地面はひび割れ、建物は崩れ落ち、空気は焼き尽くされたマナの残滓で満ちている。


彼の前に立つ女は、まだ笑っていた。


だが、その笑みには最初のような余裕はない。


「あなた……ただ者じゃないわね」


声がわずかに低くなる。


オリオンは答えない。


銀色の髪が風に揺れ、紫の瞳はただ彼女だけを捉えている。


その内側で――


何かが動いていた。


囁き。


遠い声。


まるで何かが胸の奥で目を覚まそうとしているかのように。


「殺せ……」


「逃がすな……」


「我らの代わりに……」


歯を食いしばる。


ゆっくりと腕を上げる。


周囲のマナが変質し始めた。


それはもう、ただの力ではない。


まるで現実そのものが軋み始めたかのようだった。


「パキ…」


透明なガラスが割れるような音。


女の目が細くなる。


「このマナ……何なの?」


次の瞬間――


オリオンが動いた。


「ドォン!!」


二人の衝突。


大地が砕けるほどの衝撃。


女はすぐに笑みを浮かべた。


「速い……でも、未完成ね!」


手を振る。


「魔術複製――風刃!」


無数の風の刃がオリオンへと襲いかかる。


だが――


その瞬間。


彼の視界の中で、世界が静止したように見えた。


奇妙なものが見える。


透明な線。


それは“負債”のように絡みついていた。


彼が殺してきた者たちの上に。


そして自分の内側にも。


だが今回は違う。


より深く。


より重く。


まるで何かが限界を迎えようとしている。


「死の債務……」


心の中で呟く。


次の瞬間――


風の刃が消えた。


弾かれたのではない。


現実そのものが、わずかに軌道をずらした。


女の目が見開かれる。


「何をしたの……!?」


オリオンはゆっくりと顔を上げる。


その瞳には、もはや冷たさだけではない。


古い何か。


深い何か。


危険な何かが宿っていた。


「お前……喋りすぎだ」


消えた。


「ドォン!!」


一撃。


胸部への直撃。


だが女は後退しながらも笑う。


「いいわ……それよ、それ!」


手をかざす。


地面が裂ける。


無数のマナの棘が彼を貫こうと伸びる。


しかしオリオンは避けない。


ただ手を上げる。


「死の債務……」


低い声。


その瞬間――


棘が止まった。


まるで“忘れた”かのように。


そして崩れ落ちる。


女が初めて一歩後退する。


「……ありえない」


オリオンは静かに息を吐いた。


内側の囁きが強くなる。


「くれ……」


「我らを使え……」


「今だ……」


目を細める。


そして静かに言った。


「黙れ」


だが身体は、完全には従わない。


再び動いた。


人間の速度ではない。


女が障壁を展開する。


「影の障壁!」


だが――


「パキ……」


ひび割れる。


そして砕ける。


一撃が防御を貫いた。


静寂。


一歩。


女は自身の腹部を見下ろす。


血。


小さな笑み。


「ようやく……あなたの価値が分かったわ」


顔を上げる。


しかしその時、オリオンはすでに背後にいた。


低い声。


「お前の債務は……終わりだ」


そして――


手を伸ばす。


空気が“割れる”のではない。


まるで“存在そのものが書き換えられる”ように崩壊する。


女の身体が硬直する。


目が見開かれる。


「これは……魔法じゃない……」


「これは……裁き……?」


ゆっくりと崩れていく。


燃えるのではない。


消えるのでもない。


存在が“引き抜かれていく”。


「あなたは……誰……?」


オリオンは答えない。


ただ消えていく手を見ている。


そして言った。


「債務者だ」


最後の瞬間――


彼女は完全に消えた。


――――――


静寂が戻る。


だが空気は元に戻らない。


歪み、囁き、軋み続けている。


オリオンは膝をついた。


胸に手を当てる。


囁きが強くなる。


「一つ増えた……」


「一つ増えた……」


目を細める。


「……まだだ」


しかし声は完全には抑えきれていない。


ゆっくりと立ち上がる。


紫の瞳は、もはや以前とは違っていた。


より深く。


より冷たく。


そして――


何もなかったかのように歩き出す。


「戦闘終了だ」

あとがき

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

この物語を楽しんでいただけましたら、ぜひブックマーク登録や**評価(☆☆☆☆☆)**で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

次の更新も楽しみにしていてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ