表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/33

血に染まる影のギルド

セスは腕を組み、ふっと鼻で笑った。


「そうだな。」


口元に皮肉っぽい笑みを浮かべる。


「さて、事情を聞かせてもらおうか。」


ニーナへ視線を向けた。


「まあ……俺を治療してくれた礼に、少しは優しくしてやる。」


ニーナは冷たい目で彼を見つめた。


「黙ってください、この変態。」


セスの顔がぴくりと引きつる。


「だから俺は変態じゃないって言ってるだろ!」


しかし、ニーナは完全に無視した。


そのままオリオンへ向き直る。


「私の名前はニーナです。」


「各王国を旅しながら、人々を治療している治癒魔導士です。」


「病人や貧しい人たち、助けを必要としている人たちを治療しています。」


オリオンは静かに尋ねた。


「……なぜ、そこまでする?」


ニーナは少し寂しそうに微笑む。


「両親も同じことをしていました。」


視線を落とした。


「二人とも医師で、村から村へ渡り歩き、人々を救っていました。」


少し間を置く。


「でも……」


笑顔が静かに消えた。


「数年前、病気で亡くなりました。」


再び顔を上げる。


「だから私は、二人の歩んできた道を受け継いだんです。」


その場に静寂が流れる。


ミラが優しく尋ねた。


「じゃあ……今は一人なの?」


ニーナは穏やかに微笑んだ。


「もう慣れました。」


ミラはオリオンと顔を見合わせる。


そして、ぱっと笑顔になった。


「それなら、私たちの組織に入らない?」


ニーナは目を丸くした。


「組織……?」


オリオンは小さくため息をつく。


「ミラ……何を言い出すんだ。」


するとセスが勢いよく手を振った。


「いやいやいや! 絶対反対だ!」


ニーナは鋭い視線を向ける。


「あなたの意見なんて聞いていません、変態。」


「だから変態じゃない!」


セスは即座に反論した。


ミラは苦笑しながら言う。


「私たちも陰で困っている人たちを助けているの。」


「あなたみたいな治癒魔導士がいてくれたら、本当に助かるわ。」


ニーナはしばらく黙って考え込んだ。


そして静かに口を開く。


「すぐに返事はできません。」


少し微笑む。


「でも……」


「まずはあなたたちと一緒に行って、その組織がどんな場所なのか、自分の目で確かめてみます。」


ミラの表情が一気に明るくなった。


「本当!?」


ニーナは小さく頷く。


「ええ。」


「やったー!」


ミラは嬉しそうに飛び跳ねた。



オリオンはゆっくりと立ち上がる。


黒い外套を羽織り直し、一同を見渡した。


「……任務は終わった。」


「本部へ戻るぞ。」


そう言って歩き出す。


しかし数歩進んだところで足を止めた。


静かに振り返り、


ミロの亡骸へ歩み寄る。


無言のまま手をかざすと、


紫色のマナが掌から溢れ出した。


やがて、


ミロの魂は静かに引き抜かれ、


オリオンの内なる世界へ吸い込まれていく。


彼は何事もなかったかのように背を向け、再び歩き出した。


その時――


頭の中に声が響く。


『オリオン……お前だけは絶対に許さない……』


オリオンは一瞬だけ目を閉じた。


そして冷たく呟く。


「……黙れ。」


その声は闇の奥へと沈み、やがて消えていった。



――同じ頃。


影のギルド本部。


山奥に隠された巨大な洞窟。


夜の静寂が辺りを包んでいた。


モルガンは執務室で報告書に目を通していた。


すると――


コンコン。


扉がノックされる。


「入れ。」


一人のギルド員が慌ただしく部屋へ飛び込んできた。


その顔には興奮が浮かんでいる。


「モルガン様!」


モルガンは顔を上げた。


「どうした?」


男は息を整えながら答えた。


「見つけました。」


モルガンは眉をひそめる。


「誰をだ?」


男は力強く言った。


「オリオンの兄――セロンです!」


その瞬間、


モルガンは勢いよく立ち上がった。


「どこにいる!」


男はすぐに答える。


「数年前、フィアルマハール王からソラリス王国の国王へ献上されたそうです。」


「そして現在も、ソラリス王国にいるとの情報を掴みました。」


モルガンは険しい表情になる。


「……なぜ生かされている?」


そして、自ら答えを口にした。


「オリオンとセロンは王族の血を引く者。」


「ヴァレリウス家――」


「フィアルマハール王国を治めていた王家だ。」


「玉座を簒奪したソーンが反乱を起こすまではな。」


その表情に笑みが浮かぶ。


「これは素晴らしい知らせだ。」


「オリオンもきっと喜ぶだろう。」


しかし――


その瞬間だった。


モルガンの表情が凍りつく。


報告に来た男も同時に息を呑んだ。


凄まじい殺気が洞窟全体を包み込んだのだ。


重く、


息苦しく、


全身を押し潰すような威圧感。


モルガンはゆっくりと扉へ視線を向ける。


「……この気配は。」


二人は急いで部屋を飛び出した。


そして大広間へたどり着いた瞬間――


目の前の光景に息を失う。


影のギルドの構成員たちは、


一人残らず血だまりの中に倒れていた。


床一面が鮮血に染まり、


生き残っている者は誰一人いない。


その中心に――


一人の男が静かに立っていた。


両手を背中に組み、


穏やかな笑みを浮かべながらモルガンを見つめる。


そして静かに口を開いた。


「久しぶりだな、モルガン。」


モルガンの体が震える。


目を大きく見開き、


かすれた声を漏らした。


「……まさか。」


「お、お前は……!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ