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悪魔の覚醒

場に一瞬の静寂が落ちた。


 だが、それはほんの刹那だった。


 ミロはゆっくりと右手を上げ、顎に当てる。

 まるで遊びを選ぶ子供のように。


「ふむ……じゃあ、誰から殺すかは俺が決めるとしよう」


 そして、三人を順に見渡した。


 その視線が止まったのは――セス。


「お前だ」


 声は静かだった。

 叫びもなく、迷いもない。

 ただ“確定”の一言。


 次の瞬間――


「っ――!?」


 オリオンですら反応できなかった。


 ミロの姿が消える。


 そして気づいた時には、セスの目の前にいた。


「いい相手を選んだな……半魔族」


 薄く笑う。


「名前は?」


 セスは即座に剣を振り上げ、全力で突き込む。


「俺の名前は――地獄に落ちろ!!」


 だがミロは動かない。


 ただ右手を出すだけ。


 ――ガシッ。


 素手で刃を掴んだ。


「……ティク」


 金属が悲鳴を上げる。


 次の瞬間――


「バキッ!!」


 剣は簡単に折れた。


「なっ――!?」


 セスの瞳が揺れる。


 その直後。


「ドォン!!」


 腹部に重い一撃。


 セスの身体は吹き飛び、地面を何度も転がった。


 ミロは何事もなかったかのように呟く。


「答えは不正解だ」


────────────────


 一方その頃――


 ミラはもう一体のミロの分身体と戦っていた。


 魔法を放つたびに大地が揺れる。

 しかし分身体は何度砕いても、数秒で元に戻る。


「……何なのよこれ!?」


 叫びながら後退する。


 オリオンもまた、別の分身体と交戦していた。


 致命打を与えている。

 確実に“殺している”。


 だが――


 立ち上がる。


 何度でも。


「……効かない」


 オリオンは低く呟いた。


「なら本体を倒すしかない」


 視線の先には、セスと戦うミロ。


────────────────


 ミロはセスの腹を掴み、そのまま持ち上げていた。


 力が容赦なく締め付ける。


「まだ諦めないか?」


 冷たい声。


「死ぬにはまだ早いぞ」


 その時だった。


 空気が変わる。


「……っ!?」


 ミロの表情がわずかに変わる。


 セスの身体から黒い魔力が噴き上がった。


 禍々しい、圧倒的な“異質”。


「これは……」


 ミロが一歩下がる。


「出てきたな……お前の中の“悪魔”が」


 セスはゆっくりと顔を上げた。


 瞳は真紅に染まり、口元には狂気にも似た笑み。


「降参?」


 小さく笑う。


「誰がそんなことを決めた?」


 声が変わる。

 深く、重く、獣のように。


「バカが……決めるのは俺だ」


 次の瞬間――


 セスの姿が消えた。


「ドォン!!」


 ミロの顔面に拳が叩き込まれる。


 衝撃で数十メートル吹き飛ぶ。


 セスは血を拭いながら立ち上がる。


 しかしその立ち姿は揺らがない。


 そして告げる。


「俺はセスだ」


「そして……戦いの終わりは俺が決める」

あとがき

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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