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壊れ始めた何か

オリオンと怪物の衝突は、ただのものではなかった――

「ドオオオオオム!!!」

足元の地面が爆ぜ、壁がひび割れ、暴れ狂うマナの衝撃がホール全体に広がった。

怪物は歪んだ叫びを上げた。複数の口が同時に吠え、その巨大な腕がオリオンを押し潰そうと振り下ろされる。

だが――

オリオンは再び消えた。

次の瞬間、背後に現れる。

一撃――

「バアアアム!!」

肉が弾け飛ぶ。だが、崩れない。

戻る。

即座に再生した。

オリオンは目を細めた。

「……やはりな」

一方その頃――

ミラはかろうじて耐えていた。

彼女の障壁に亀裂が走る。

「くっ……こいつ、圧が異常すぎる……!」

目の前の怪物が複数の口を開き、体内にマナを集め始める。

危険な光。

ミラは瞬時に察した。

「まずい……!」

横へ跳ぶ――

「ボオオオオム!!!」

マナの爆発が地面を叩き、ホールの一部を吹き飛ばした。

荒く息をつく。

そして手を掲げた。

その瞳が鋭くなる。

「……遊びは終わりよ」

周囲のマナが集束していく。

純粋で、研ぎ澄まされた力。

怪物のそれとは違う。

「拘束魔法――」

小さな魔法陣が怪物の周囲に展開される。

魂鎖ソウルチェイン!」

「ギィィィィン――!!」

マナの鎖が飛び出し、怪物の体を縛り上げた。

怪物が咆哮する。

暴れる。

だが――

止まった。

ミラは強く手を握りしめる。

「オリオン!!今よ!!」

オリオンはもう一体の怪物の前に立っていた。

ただ見ている。

だが――

見ているのはそれだけではない。

その奥。

自分の内側。

再び響く声。

さっきよりも強く。

はっきりと。

『使え……』

『奪え……』

『殺せ……』

オリオンは拳を握りしめた。

「……黙れ」

だが痛みが走る。

目の奥。

胸の奥。

何かが、外へ出ようとしている。

怪物を見る。

そして静かに言った。

「……一度だけだ」

ゆっくりと手を上げる。

その瞬間――

空間が歪む。

「パキ……パキ……パキ……」

まるで世界そのものが耐えきれないかのように。

紫の瞳が変わる。

より深く。

より冷たく。

「死の債務デス・デット……」

低く、重い声。

その瞬間――

“何か”が現れた。

完全には見えない。

だが、確かに存在する。

糸。

オリオンの体から伸び、

怪物へと絡みつく。

怪物が凍りつく。

全ての口が止まる。

無数の目が震える。

まるで――

自分より上位の存在に触れたかのように。

オリオンは一歩踏み出す。

ゆっくりと。

「……お前の借りは、今ここで返済される」

手を伸ばす――

「パキィィィン!!!」

鋭い音。

そして世界が――

歪んだ。

爆発ではない。

“切り取られた”。

怪物の存在の一部が――

消えた。

悲鳴が上がる。

そして途切れる。

体が崩れていく。

引き裂かれるのではない。

存在そのものが――引き剥がされていく。

オリオンは立ったまま。

だが――

体が震え始める。

痛み。

一気に襲いかかる。

「ぐっ……!」

片膝をつく。

胸を押さえる。

声が叫ぶ。

『もっと……』

『終わっていない……』

『寄こせ……』

「……黙れぇぇぇ!!」

初めての絶叫。

そして――

怪物は消えた。

完全に。

反対側――

ミラはそれを見ていた。

一瞬だけ。

「……オリオン?」

だが止まれない。

怪物が鎖を引きちぎりかけている。

咆哮し、突進してくる。

ミラは歯を食いしばる。

「……させない!」

両手を掲げる。

マナが燃え上がる。

だがそれは暴力ではない。

精密な力。

制御された破壊。

「殲滅魔法――」

巨大な魔法陣が展開される。

複雑に重なり合う構造。

星崩壊スター・コラプス!!」

光が炸裂した。

「ウオオオオオオム!!!」

収束されたマナの光線が怪物の体を貫く。

下から上へ。

完全に。

止まる。

硬直。

そして――

「パキ……」

崩壊。

怪物は砕け散り、マナの残滓となって消えた。

静寂が戻る。

だが――

もう同じではない。

ミラは荒く息をつきながら、

すぐにオリオンの方を見る。

「オリオン!」

駆け寄る。

彼は膝をついていた。

呼吸が乱れている。

胸を強く押さえている。

銀の髪が目元を隠す。

だが体は――

震えていた。

「……何をしたの?」

答えはない。

ただ――

小さく呟いた。

「……代償だ」

ミラはさらに近づく。

不安が滲む。

「オリオン……」

だが彼は手を上げた。

制止する。

ゆっくりと立ち上がる。

苦しそうに。

その目は――

もう完全に同じではなかった。

より深く。

より冷たく。

そして何か重いものを宿している。

怪物の残骸を見る。

そして静かに言った。

「終わりだ」

だが――

その内側では。

まだ何も終わっていなかった。

あとがき

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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次の更新も楽しみにしていてください。

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