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裏七夕物語・第九章〜知らぬが仏の親子と、燃え続ける天界〜
◆ 裏七夕物語・第九章 ◆
〜知らぬが仏の親子と、燃え続ける天界〜
天界では、
織姫は夜の街で妖艶に笑い、
鵲たちは依存に溺れ、
天帝は怒りと後悔で心を壊し、
彦星は涙に暮れていた。
天の川のほとりには、
泣き崩れる青年と、
それを見守る牛たちの影。
星灯通りには、
織姫の後ろをふらふらとついて歩く鵲たち。
天帝は、
娘を止められなかった自分を責めながら、
ただ夜空を見上げていました。
――まさに修羅場。
しかし、
そのはるか下の世界では。
とある家のリビング。
小さな女の子が、
父と母のあいだで絵本を広げていました。
娘
「ねぇねぇ、七夕のお話読んで〜!」
父
「はいはい。織姫と彦星はね、
年に一度だけ会えるんだよ」
母
「天の川に橋がかかってね、
鵲さんたちが手伝ってくれるの」
娘
「わぁ〜!ロマンチック〜!」
父
「そうだろう?
二人はずっと仲良しなんだよ」
母
「うんうん。
天界でもきっと幸せに暮らしてるはずよ」
娘
「いいなぁ〜!
織姫さまと彦星さま、ずっと仲良しなんだね!」
父と母は微笑み、
娘は嬉しそうに絵本を抱きしめました。
娘
「ねぇパパ、今年もお願いごと書こうね!」
父
「そうだな。きっと天の国の二人も喜ぶよ」
――天界の修羅場など、
下界の誰も知る由もありません。




