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裏七夕物語・第十章〜子どもたちの願いと、壊れた女の冷笑〜

天界の夜。

星灯通りの奥にある、

薄暗いバー。

織姫はカウンター席に座り、

琥珀色の酒を揺らしながら、

店の隅に置かれた“天界用テレビ”をぼんやり眺めていました。

画面には、

下界の七夕特集が流れています。


アナウンサー

「今年も全国で七夕の短冊が飾られています!

子どもたちの願い事をご覧ください!」


映し出されるのは、

無邪気に短冊を結ぶ子どもたち。


子どもA

「おかねもちになれますように!」

子どもB

「やきゅうせんしゅになりたい!」

子どもC

「プリンがいっぱいたべられますように!」


織姫は、

その他愛もない願いに、

ほんの少しだけ目を細めました。


織姫

「……子どもって、いいわね。

願い事がまっすぐで」


そして画面が切り替わります。


リポーター

「では次の子に聞いてみましょう!」


小さな女の子が、

短冊をぎゅっと握りしめていました。


子どもD

「えっと……

“おりひめさまとひこぼしさまが

ずっとなかよしでいられますように”って書いたの!」

リポーター

「わぁ〜、君は優しいんだねぇ!」

子どもD

「だって、ふたりがずっと仲良しだといいなって……!」


織姫は――

その瞬間、ふっと鼻で笑いました。


織姫

「……仲良し、ね」


グラスを置き、

冷たい笑みを浮かべます。


織姫

「願うだけで夢が叶うほど、

現実は甘くないのよ」


酒をひと口。


織姫

「天界も……下界もね」


画面の中では、

女の子が嬉しそうに短冊を結んでいます。


子どもD

「おりひめさま、よろこんでくれるかな!」

リポーター

「きっと喜んでるよ〜!」


織姫は、

その言葉にまた小さく笑いました。


織姫

「……喜ばないわよ。

そんな願い、もう叶えられないもの」


店主の風の精が、

そっと目を伏せました。


店主

「……織姫様……」

織姫

「いいのよ。

こういう“綺麗な嘘”を見るのも、

たまには悪くないわ」


そして、織姫は、お酒を最後の一滴まで飲み干し、

空になったグラスを見つめ言いました。


「……物語の中だけで、仲良くしていればいいのよ」

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