表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

裏七夕物語・第二章〜天の国で一番情けない男、その後〜

むかしむかし――

織姫に嫌われ、

牛たちに軽蔑され、

天界の住民からは白い目で見られるようになった彦星は、

天の国の片隅で、ひっそりと暮らしておりました。

かつては牛たちに慕われ、

織姫に愛され、

天帝にも期待されていた青年。

しかし今は――

誰も彼に声をかけません。

天界の道を歩けば、

ひそひそ声が背中に刺さります。


「ほら、あれが織姫さん泣かせた男よ」

「下界で遊び歩いてたって噂の」

「牛たちにも嫌われたらしいわよ」


彦星は耳をふさぎました。

けれど、噂は耳をふさげば消えるものではありません。

ある日のこと。

彦星は天界の片隅にある“星酒場”へ足を運びました。


店主

「……お前さん、また来たのか」

彦星

「……飲ませてくれよ。何でもいいからさ」


店主はため息をつきながら、

星の雫で作った酒を差し出しました。

彦星は一口飲むと、

すぐに二口、三口と続け、

やがて杯を乱暴に置きました。


彦星

「……なんで俺だけ、こんな目にあうんだよ」

店主

「自分でやったことだろうに」

彦星

「……うるさい」


酒は、

現実を忘れさせてくれる唯一の逃げ道でした。

酒場の奥には、

天界の住民たちがこっそり集まる“星賭場”がありました。

星の欠片(通貨)を賭け、

運命を試す遊び。

本来、天帝が禁じている遊びですが、

裏では密かに続いていたのです。


鵲A

「お、彦星じゃねぇか。落ちぶれたなぁ」

鵲B

「織姫に捨てられたって本当か?」

彦星

「……黙れよ」


鳥たちは笑いました。


鵲C

「じゃあ賭けてみろよ。

お前の“運”がまだ残ってるかどうか」


彦星は震える手で星の欠片を置きました。

最初は勝ちました。

次も勝ちました。

しかし――

勝つたびに、

織姫の顔が頭に浮かびました。


彦星

(……俺、何やってんだろ)


その迷いが出た瞬間、

運は一気に離れていきました。

気づけば、

手元の星の欠片はすべて消えていました。


鵲C

「ははっ、やっぱり“落ちた星”は違うなぁ」

彦星

「……っ……!」


酒と賭け事に逃げても、

心の穴は埋まりません。

夜、天の川のほとりで、

彦星はひとり座り込みました。


彦星

「……織姫……」


星々は何も答えません。

牛たちの声も聞こえません。

ただ、

天の川の流れる音だけが、

静かに響いていました。


彦星

「……俺、どうしてこうなったんだろうな」


答えは、

自分が一番よく知っていました。

そして、天界の噂はさらに広がります。


「彦星、また酒場で暴れてたらしいよ」

「賭場で全部すったって話よ」

「織姫さん、正しかったんだねぇ……」


噂は噂を呼び、

彦星の居場所は、

天界のどこにもなくなっていきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ