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第二話 隣の席の距離

この作品はカクヨムにも投稿しています。

 *1話の髪の話題少し訂正しました。


 翌朝。

 昨日より少しだけ慣れた通学路を歩きながら、俺は大きく息を吐いた。


 ――高校二日目。


 一日過ごしただけなのに、少しだけ肩の力が抜けている気がする。

 教室の扉を開けると、まだ半分ほどしか席は埋まっていなかった。


「おはよう、綾部くん!」


 明るい声に顔を上げる。


「あ……お、おはよう」


 席に着くと、一ノ瀬さんが笑顔で手を振っていた。

 昨日と同じ笑顔。

 これが罪な女というやつか、


「ちゃんと来れたんだね」

「いや、それ普通じゃない?」

「あはは、確かに!」


 楽しそうに笑う一ノ瀬さん。

 こんな何気ない会話なのに、心臓は相変わらず落ち着かなかった。


 ◇


 一時間目。


「隣同士でプリントを配ってくれ」


 先生の一言で、俺は前の列から渡されたプリントを受け取る。


「はい」

「ありがとう」


 プリントを渡そうとした瞬間、指先が少しだけ触れた。


「あ、ご、ごめん!」

「え? 全然気にしてないよ?」


 笑って返される。

 気にしているのは俺だけだったらしい。

 ――落ち着け、俺。

 こんなの事故だ。

 そう自分に言い聞かせながら席に着いた。


 ◇


 休み時間。


 蓮のおかげで何人かと話すことができ、休み時間ぼっちからの脱却は成功した。


「綾部の隣の一ノ瀬さん、めっちゃ可愛くね?」

「分かる。モデルみたい」

「しかも話しやすいよな」


 茶髪でイケメン──東条 朔哉(とうじょう さくや)と既にクラスのムードメーカーになりつつある黒髪の短髪──佐々木 翼(ささき つばさ)の2人に挟まれながら俺も苦笑する。


「俺みたいな陰キャにも話しかけてくれるしな」

「いやお前、俺みたいなって……」


 ……やっぱりそうだよな。

 昨日だって、教室に入ってきた瞬間からみんな見てたし。

 俺なんかとは住む世界が違う。


 ◇


 授業中。


「綾部くん?」

「え?」


 気づけば、一ノ瀬さんがこちらを見ていた。


「ぼーっとしてたけど、大丈夫?」

「あ、うん。ちょっと考え事してただけ」

「そっか!」


 それだけ言って笑う。

 その笑顔を見るだけで、さっきまで考えていたことが少しだけどうでもよくなった。


 ◇


 放課後。


 蓮は早速サッカー部の練習に参加するらしく、俺は一人で帰路についていた。

 今日仲良くなった人達に部活動見学に行かないかと誘われたが俺はもう良いかなと思っていたので断っておいた。

 蓮抜きで話せる自信もないしな。

 すると校門の近くに目立つ集団がいた。

 一ノ瀬さん率いる?クラスの陽キャ達だ。

 あれ?なんか全員こっち見て……


「綾部くん!こっちこっちー!」


 なっ……

 周囲からの視線が痛い。

 何でお前みたいな陰キャがとか思われてる絶対。

 無視するのも悪いと思い、一ノ瀬さん達の方へかけよる


「えっと、どうしたの?」


 っ。

 声が裏返ってしまった。

 絶対俺今顔赤い等と考えていると、


「あっ、あははは!もう無理、げんかい、あんた面白いね。私は水瀬 渚(みなせ なぎさ)。一応ナツの親友やってまぁーす」

「一応ってなんだ一応ってぇ!」


 そんな2人の会話が沈黙を破った。

 助かった、生殺しになる所だった。


「綾部くん?だったよね。まだあんまり名前覚えてないから曖昧で。私たちのことわかる?」

 金髪ロングの美少女──星野まひろと、黒髪の長い髪を一つに結んでいる美少女──桜井 紬(さくらい つむぎ)が声をかけてくる。

 いやこの学校どんだけ美少女多いんだよ。

 しかも4人とも同じクラスって。


「分かるよ。星野さんと桜井さんだよね」


 俺でなくても知ってるだろう。この4人は良くも悪くも目立ちすぎるから。


「それで、何か用事があったんじゃないの?」

「それはね。私たちが帰ろうとした時に夏希ちゃんが綾部くんのことを見つけて1人は寂しいだろうから呼んでいい?って」

「待って、それなんか他の人に言われると恥ずかしいんですけど!?」


 星野さんから理由を聞いていると一ノ瀬さんからの横やりが入る。

 水瀬さんとのじゃれあいがいつ終わったのか気づかなかった……。


「てことだから、綾部くん。私たちと一緒に帰らない?」

「えと、お願いします」

「なんで敬語?」

「あはは。確かにね」

「きっとナツが可愛すぎて見惚れてたんだよ」

「もうー。ナギはすぐそんなこと言うー」


 桜井さんが突っ込み、それにみんなが笑い出す。


「実際のところはどうなんだーい?綾部くん」

「まぁ可愛いなとは思ってたけど」

「へっ?」


 桜井さんが聞いてきたので、素直に答えると一ノ瀬さんが驚いたのか少し顔が赤い。

 ん?待てよ、俺今何を言った?


 ──ボッ。


 どんどん思い返して顔が熱くなっていくのが分かる。


「まっ、間違えた、今のなし!」

「じゃあ綾部くんは私のこと可愛いって思ってないってこと?」

「え?いやちがっ、えと、……可愛いと思います」


 ま、負けた。

 でも無理だろ!あんな上目遣いで聞いてこられたら!どんな男子だったら可愛くないなんて言えるんだよ。


「ん。そっか、ありがと」

「あれ、ナツ照れてんの?あれあれぇ」


 いったいなんなんだいその反応は。

 ずるいでしょ!?

 世の男子の殆どが惚れてしまいそうだ。


「なんか、綾部くんってさ」

「うん。これは天然たらしだね」


 誰がだ誰が。心の中でそう思うのだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。よかったらフォローや評価お願い致します。今後の励みになります。カクヨムの方が先に進んでいるのでそちらも是非お願いします。

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