新たな仲間1
「…新しい仲間、ですか?」
「あぁ。できれば前衛と後衛2人づつ。回復ができる奴がいればそれに越したことはないが…」
「いますよ?回復術師」
「いるのか!?」
カウンターの前で思わず声を荒げる。というのも先程、エルダにメンバー募集の依頼をしに行く前、宿でエルマから『回復術師は希少だから、雇うのにすっごいお金がかかるんですって〜』なんて聞いたからである。
「エルダさん、それは本当か!」
「えぇ、そりゃあもう。…あぁ、エルマさんから何か聞きましたね?」
ちら、と後ろにいるエルマを見る。俺がエルダと交渉している間に、エルマは杖を新調すべく武器屋を見ているようだ。
「彼女の出身の帝国北方領は回復術が少ないんです。だからこっちでも、と思われたのでしょうね。ご安心ください、アルビアの冒険者には陽聖教会の信徒の方も多いですし、フリーランスの回復術者も多いんです。今だと…バンデムさんが丁度空いていますね。
実績も確か、ランク8の実力者です」
おぉ、と思わず息を漏らす。ランク8、それは俺とエルマより二つも上のランク、そんな腕利きがパーティに入ってくれるのはありがたい。エルマを呼びつけてその旨を伝えると、エルマも喜んでいた
「とりあえずバンデムさんとは後ほど顔合わせを行なってもらうとして、もう1人ですね。リュウジさんが攻撃型の前衛なので…防御に長けた方を探してみましょうか」
そう言って、エルダさんが手元の書類を捲り始める。それを眺めながら、酒場に集う冒険者たちの様子を軽く眺めた。
やはり大柄な男が多いが、女性もいないわけではなさそうだ。そんなところにも故郷との違いを感じて少ししんみりとする。
そして武器だ。周囲の冒険者の身につける武器の毛色が全く違うことに興味がある。
槍や弓、籠手のように地元でも見覚えのある武器から、両刃斧や槌、果ては棘のついた鉄球をぶら下げていたりと、異質な武器の者も多く見られる。と、観察しているとこちらに気がついたのかのすのすと近寄ってくる影が来た
「もしかしてパーティメンバーをお探しですか!!」
重装備の甲冑を着込んだ小柄な女、少しくすんだ金の髪を短く切り揃えた、無垢な雰囲気を持った少女が胸を張って声を出す。低い背丈だが、俺では着て戦うことは叶わないだろう重厚さを持つフルプレートアーマーを着て普通に動いていることから怪力なのだろう
そうアタリを付けていると、向こうは勝手に自己紹介を始めた
「私はケイシー・ハイリンヒ、戦士です!!武器はハンマーを使わせてもらってます!!」
がしゃん、と音を立ててお辞儀をされて、こちらもお辞儀で返す。
「侍のリュウジだ。そこで買い物をしているのがエルマ、魔法使いだ。
ランクは10、2人とも初心者だ。君は?」
「私のランクは今は9、お二人と一つしか違いません!!そこでなんですが、よければパーティを組みませんか!?」
「ふむ、エルマとも相談s「いいわね!!!!」」
相談して…と言いかけたところでエルマが口を挟む。いい杖を物色しながらもちゃっかり聞いていたらしく、こくこくと頷いている。
「…だ、そうだが、可能か?」
カウンターのエルダを振り向くと、ずっと一連の流れを眺めていたエルダが頷く。
「可能ですよ。ケイシーさんはランクも9ですし。…10ランクだけのパーティは危険なので推奨されないんですよ。ですがこの場合、ランク8のバンデムさんと9のケイシーさんが揃っているので、問題はありません。」
なるほど、初心者だけで組ませて死なせるより、経験豊富な先達を付けて死亡率を減らす魂胆だろう。またも合理的な仕組みに舌を巻きながら、エルダの案内に従ってスラスラと書類を記入していく。
「…はい、確認しました。では、バンデムさんをお連れしますので、少々お待ちしていてください」
エルダさんが立ち去るのを見送ってから3人で机に付く。
と、ケイシーから、陽気な声が上がった
「ところで、お二人はスキルはもう発現しましたか?」
「「スキル?」」
俺とエルマの声が重なる。スキルとは一体どういうことなのか、聞いたことのない単語に困惑している俺達に、ケイシーが説明をしてくれた。
曰く、迷宮の中には魔力が充満しており、活動すればするほど人間の体内にも魔力が蓄積される。それによって、魔法使いとは異なる異能の力が身につくのだとか。それは例えば、愛用の武器の強化であったり、特定の種の魔物に対する特効であったり、あるいはもっと超常の異能であったりするらしい、それに頷いていると、後ろから声がかかった
「ちなみに、迷宮に潜れば潜るほど異能は進化、変質するが、おおまかには迷宮内の行動や本人の性質が元になる場合が多い。例外はあるがな」
振り返ると、無精髭を生やした黒髪の痩せた男と、エルダが並んで立っていた
「バンデム・アルハンゲリだ。治癒のスキルがあるから回復術者をやってるが、本業は弓だ。」
椅子に腰を下ろす。背中に木製の弓を背負った軽装の男だが、何より腰に下げた小瓶の数々が目を引く。
「その小瓶は?」
「毒と解毒薬、あとは支援用の色々だ。弓に塗ったり体に塗ったりする。」
「へぇ!薬師でもあるんですか!凄いなぁ!」
そんなこんなでパーティメンバー同士の交流を終えて、ケイシーが提案を一つした
「今から迷宮に行きませんか?リュウジさんもエルマさんもそろそろスキルが目覚める頃でしょうし!」
「確かに、相場は2回目だな、ちょっくら潜るか」
そんなわけで迷宮に潜ってから数分、早速魔物が現れた
猪さながらの様子でありながら、まるで鉄鋼のような鎧を纏っている異様な姿に、エルマと2人で慄いていると、手慣れているのかバンデムとケイシーが素早く動いた
「鎧猪だ!!突進に気をつけろ、死ぬぞ!」
バンデムの叫びに呼応するようにして、興奮した様子の鎧猪が突進を始める。
砲弾のように突っ走る猪の進行方向に、ケイシーが躍り出た。
「どっせ……い!!!」
気合の入った掛け声と同時に、左手で握りしめた小型のラウンドシールドが巨大化する。
一瞬で人一人を被える大きさになった盾に突進が直撃し、轟音を立てて衝撃波が舞う…が、盾を突き出したケイシーは一歩も下がらない。
そして頭部を強打してふらついた猪の身体に、一瞬で矢が数本突き立った。
「とりあえず一体…っと」
「っ…!」
あまりの手際の良さに絶句する。
バンデムとケイシーとて互いに会うのは今日が初だろうに、連携の精度も安定性も昨日の自分たちとは天地ほどの差がある。
これが経験の差なのだろう、そして、彼らほどの手練れがまだレベル9と8なことも含めて恐ろしい。
「これが冒険者…」
「凄いね、正直舐めてた…」
エルマと囁き合ううちに、ケイシーが鎧猪を担いで迷宮の奥へ進み始めた
「ほら、お二人さん、早くしないと置いてくぜ。」
「は、はい!!」
「今行く」
バンデムに促されてついていくと、あっという間に一層の深部まで辿り着いてしまった。
道中に魔物がいないこともそうだが、何よりケイシーとバンデムが優秀すぎる。地図も覚えているようで、罠を避けてスイスイと進んでいき、一層から二層への階段にあっという間にたどり着いてしまったのであった。
ついにケイシーとバンデム、そしてエルマとリュウジ、4人パーティが揃いました!前衛2枚に後衛2枚。彼らは今後どうなるのか…あと、パーティ名はどうなるのか…それが決まるのは、この探索の後かもしれない…多分




