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巨大蟻

「へぇ~!あなた東国の出身なのね!道理で不思議な武器を…それ、カタナって言うんだっけ?」

「そうだ、こっちの小さい方は脇差という。お前は…その杖を見るに魔法を使うのか?」

「うん!私は魔法使い!西方魔法協会の初級ライセンスもあるよ!!」

ほう、と顎を撫でる。そもそも魔法とは、体内や空間などに充満する魔力を扱い、超常現象を起こす行為を指す。帝国や王奥では杖をもって呪文を唱える西方魔法派と、教会の掲げる女神アスタに祈りを捧げることで奇跡を行使する神聖魔法の2派閥が主流だが、俺の故郷の護符に文字を書き込む護符魔法、神聖魔法とはまた異なる、東方の数多の神々に祈りを捧げる八百万式魔法など、国や地域によって流派は多く存在する…らしい。旅商人からはそう教わったが、何せ魔力など宿ったためしのない俺だ。よくわかってない。

が、

「なるほど、魔法使いか………エルマ、少し相談がある」

「奇遇ね、私も…!」

お互いに顔を見合わせて唾を呑む。

「「パーティを組まない?/組まないか?」」


──翌日

「なるほど、パーティ申請ということですね。いいと思います。魔法使いと剣士で前衛後衛のバランスは確かですし、意気投合しているならばまずは試してみるのも手だと思います。…では、早速潜ってみますか?ダンジョンに」

昨夜は夜中まで飲み明かしてから、俺は床に、エルマをベッドに寝かせて互いに爆睡、翌日起きてからこうして2人並んでギルドにパーティの登録に来て…手続きは驚くほどすぐに終わった。それに少し呆気にとられていると、俺とエルマに木札が手渡された

「これは冒険者ギルド発行のダンジョン入場証です。ランクもこれで管理されていますので、無くさないようにしてください。」

頷いて、懐にしまう。10、と書かれた数字がランクなのだろう、それを受け取ってから、エルダについていく。


「…この街の成り立ちに関して、ご存知とは思われますが、一応説明をさせていただきます。この街はそもそも、小さな農村でした。しかしある日地面の一部が崩落、確認したところ地下に大型ダンジョンの形成が確認されました。そこを攻略するために作られた街がここ、アルビアです。」

木製の酒場の壁に造られた扉を潜ると、石畳で整備された洞窟が広がる。不気味な雰囲気に横でエルマが身を竦ませたのに気がついたか、エルダさんがくす、と笑った。

「ちなみに、ここは普通に通路なのでご安心ください」

「なっ……!!!!」

顔を真っ赤にしてエルマが蹲る。それに軽く肩をすくめてから、背中をポン、と軽く叩いてエルダについて進む。

そうして進んでいくと、開けた空間に出た

「これが…入り口か」

「ご名答です。そこの扉から向こうがダンジョンになります。お連れ様は…」

「い、いけるわよ…!!余裕で!!」

「なら行くか、付いてこい」

ギィ、と重い扉を開けて迷宮内に踏み込む。一見街と変わらない石畳に思えるが、少しだけ質感が違う床を踏みしめながら、腰の刀に手を載せた

「…早速いるな、群れだ。気をつけろ」

「うん…!わかった!」

腰の刀に手をかけたまま、中腰でにじり寄るように進んでいくと、曲がり角からぬ、と大きな触覚が顔を出した

「うおっ、巨大蟻か!」

「ジャイアントアント!!しかも3匹!!」

先頭から現れた、虎ほどの大きさの蟻に引き続いて、似たような個体が2匹、合わせて3匹現れる。

先頭の蟻が威嚇するように牙を広げた瞬間、俺はサッとエルマの方に首を向けた

「足止めはする!!倒せるか!!」

「余裕!!強酸を吐いてくるから気をつけて!!」

「任された!」

返答と同時に駆け出し、走りつつ鞘から引き抜いた刀をそのまま振るう。

先頭のジャイアントアントが何やら吐こうとしているのを見咎めては、そこをまず潰すべく刀を振り下ろす。刀が頭部の甲殻に弾かれて体表を滑る勢いをそのままに2匹目のジャイアントアントを横合いから弾き飛ばす。その後ろから飛びかかってきた3匹目には、咄嗟に刀から離した左手で手甲を使った拳を叩き込んでから後ろに跳んで距離を取る。

「硬い上に重いな…!!」

柄を握る手の痺れを感じながら背後をちら、と確認する。よし、エルマは冷静に何やら呟いている。あれが呪文なのだろう。視線を前に戻すと、蟻が顎を開いて何かを吐き出した。間一髪で回避すると、着弾した石畳が白い煙を上げて溶けていた

「チッ…!」

あんな濃度の強酸、まともに浴びれば間違いなく死ぬ。故にそれを避けて懐に飛び込むようにしながら、刀を素早く引いて鞘に戻す。鞘ごと腰を軽く捻りながら姿勢を低くし、反発して戻る勢いをそのまま載せた渾身の居合を放つ。

「ッおらぁ!!」

先頭の蟻の胴を掬い上げるように弾き飛ばした一撃に、ようやく蟻がたじろいだ。そして、後ろから声が飛んだ


「準備よし!!下がって!!!」

促されるままに後ろに跳ぶ。エルマの背中が視界に入ったところで、石畳の通路が、ジャイアントアントごと炎に包まれた

「おぉ…、これが魔法か」

「火力の割にタメが必要なのが難点だけどね…というか!リュウジさん、めちゃくちゃ強くないですか!?ジャイアントアントを刀でカチ上げるとか、聞いたことないですよ!」

「流石にあれは大技だ。居合は実戦で滅多に使えるものじゃあない」

刀を観察しようと詰め寄ってるエルマを手で制しながら、先の技を思い返す。

初撃で当てるならまだしも、実戦中に納刀の隙を晒す必要のある居合は危険度が高く、滅多に利用されないのだ。もちろん、居合ならではの高威力は強力だが、隙が多すぎる、というのが故郷での見解だ。

つまりまぁ、エルマも自分も、高火力だが隙の多い大技があるらしい。炎以外を出せるのかは不明だが、遠距離の大技は自分にはない分、ありがたい。

そうして話していると、地面に転がった焼け落ちたジャイアントアントの死体から小さな虹色の石が零れた

「お?あれは…」

「あれは魔石ですよ!!魔力を内包していて、魔道具の材料になったりする宝石です!!魔物が体内に貯めた魔力が形を持った、というとわかりやすいですかね。

このサイズなら…12銅貨くらいで売れると思います!」

「なるほど、金になるのか。ならこれを拾って一旦帰ろう。慣れない迷宮内で紛失したら大変だ。慣れないうちは一度戦ったら帰って休憩くらいで丁度いい。2人しかいないしな」

「まぁ、そうですよねぇ…あと2人くらい仲間が欲しいところです」

「それも含めて、帰ったらエルダに聞いてみるか」

「そうですね!さ、魔石とその他焦げた死体を担いでっと…」

そうこうして、魔石とジャイアントアント一匹をエルマ、他2匹を俺が背負って帰路に着く。ちなみに、魔石は兎も角死体は黒焦げだったこともあって値段は格安での買取となった。次からはなるべく俺が仕留められるように頑張ろう。


リュウジ&エルマコンビ、初の戦闘です。

次回は二人のパーティーに新メンバー×2…!?

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